ある日、八房(やつふさ)ハンズマンが言った。
「知的障害を持っている女性社員にこう訴えられました。
―朝6時に出勤するとき、公園で私につきまとう男の人がいる―
そこで今日から3日間、朝6時に張り込みすることにしました」
その社員の年齢はなんと50歳。私のびっくりした表情を見て彼は言った。
「ハンズマンは常にプラス志向、結果よりもプロセスを重視します。困っている人がいたらすぐに現場に駆けつける、それが私たちハンズマンの仕事です」
まさに走るハンズマンだ。彼らは常に寝食を忘れて、障害者がいきいきと働ける環境づくりに日夜全力疾走している。
詳細→http://www.epocaclub.com/epoca95/4hans.html
Q ハンズマンとは?
A 株式会社第一ビルサービスを筆頭とする企業集団みどりグループは、障害者の雇用創出という見地からハンズ事業部を設立、障害者がいきいきと働ける環境づくりを推進しています。その先兵の役割を果たしているのがハンズマンです(ハンズマンはニックネーム)。
Q みどりグループが現在雇用している障害者数は?
A 今年の6月時点で、身体障害者14人、知的障害者12人、精神障害者2人の28人です。身体障害者は自分で判断して働けますが、知的障害者や精神障害者は上司や同僚、さらにはハンズマンの専門的なサポートを必要とすることがままあります。
Q 知的障害者・精神障害者にはどんな特徴がありますか。
A 弊社のような一般企業で働いている障害者をみると、個人差はありますが、普通の文章が書けない、対人関係が難しい、コミュニケーションが取り難い、情緒不安定で感情的になるなどの特徴があります。ですから、これらの特徴を理解した上でどうすれば一緒にうまく働けるか、という発想に立つようにしています。
Q 採用の様子を教えてください。
A 採用職種は主に清掃業務です。清掃の仕事は知的障害者に大人気で、これまで100人もの応募があり21人採用しました。その後、いたずらが度を越してお茶に洗剤をいれたり、東京で作家になりたいと妄想が高じたり、どうしても職場に溶け込めなかったりして辞めた人もあり、現在は17人に落ち着いています。
Q 職場で働いている知的障害者にはどんな方がいらっしゃいますか。
A 清掃中にミスをすると、上司は当然叱ります。叱らないといけないんです。すると腹をたて一週間口をきかない、こんな社員もいます。叱られた経験が足りないのかも知れませんね。彼女は自分が悪いと思っているのに、どうしても腹の虫がおさまらない。でも一週間もしたら口をきくようになります。
Q 一週間もはぶてられたら上司はたいへんですね(笑)。
A 上司は、その間じっと見守っているんです。
Q なるほど・・・。
A ちょっと重い事例になりますが、こんなのがあります。重い自閉症の25歳の男性です。いつもうつむいて、一言一言話します。話す内容は単調で、複雑な会話はできません。これでは採用するのは難しいと思っていたところ、予想に反し現場からぜひ採用したいと言ってきました。彼のいいところは、指示されたことはきちんとこなすことです。メモもしっかりとります。一番いいところは清掃の仕事に喜びを感じていることですね。
Q いい話ですね。
A こんな人もいます。20代の可愛らしい女性なのに知的障害があります。一見して暗く不安そうな表情しているので、情緒不安定なことがわかります。その職場に行ったときには、必ず一時間くらい面談します。彼女は将来が不安だと訴えますが、私にはどうしてあげることもできません。できることは楽しい話をして、彼女の表情が少しでも明るくなるよう努力するだけです。
Q 清掃作業以外の仕事に障害者を雇用されていますか?
A 現場だけでなく本社にも知的障害者を採用するため、自閉症のKさん(20代の女性)を採用しました。彼女は文章を読めても理解力が足りません。それに弱視があります。彼女を採用する前、彼女にやれそうな仕事を集めました。切手貼り、ファイリング、封入作業、データ入力、書類整理、etc。採用してから、とまどいやトラブルもありましたが、次第に落ち着いてきました。
Q それは良かったですね。
A 彼女はありがとうと言われるのが好きです。とても几帳面に仕事をするので、「きれいにできているね。ありがとう」というと目を輝かしています。職場では、みんなから可愛がられいます。
Q これからの展望についてお話ください。
A 障害者を当たり前に囲む輪をもっともっと広げて、今の知的障害者の雇用数を今の倍くらいにしたいですね。
ちなみに、障害者法定雇用率は2.0%ですが、第一ビルサービスは4.7%です。これを10%にするのが目標です。
みどりグループを統括する杉川聡社長が常に言っています。
「今は苦労してもこれを乗り越えたら、障害者と健常者が協働できる職場ができる。そうしたらみどりグループはますます素晴らしい会社になるだろう」
ハンディキャップのある人も同じ仲間として、ともに生き生きと働ける職場環境を作っていきたいですね。
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