平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

JIN -仁- 最終話 現在を生きる

2009年12月21日 | 大河ドラマ・時代劇
★消えた写真。
 おそらく未来(中谷美紀)は存在しなくなってしまったんでしょうね。
 つらい仁(大沢たかお)。
 しかし救いはある。
 未来は形を変えて、何らかの形で存在しているのだ。
 水が雪や氷、水蒸気などに形を変えるように。
 万華鏡の内部は同じなのに動かすと見えるものが変わるように。

 勝(小日向文世)も同じようなことを言っていた。
 「龍馬がいなくなっても、龍馬に代わる人間が出て来る」
 この言葉を仁に当てはめれば
 「未来がいなくなっても、未来に代わる人間が出て来る」
 仁が気づいたように、ベッドで眠る未来は仁にこう言いたかったのかもしれません。
 「わたしにこだわるのはやめて、目の前の風景を見つめなさい。目の前には咲さんや野風さんがいるのだから」

 人は過去に囚われて生きている。
 仁は現代での生活と恋人の未来。
 咲(綾瀬はるか)は武家の娘。橘家の娘。
 野風(中谷美紀)は吉原の花魁。
 だが人生にはそれらを捨てて前に進まなくてはならない時がある。
 仁はそれを<解放>と言いましたが、過去に縛られて目の前の風景が色褪せて見えてきた時には、勇気をもって過去の囚われを捨てる必要があるのかもしれませんね。
 仁と咲、野風はまさに過去を捨てた。
 仁は未来を捨てて江戸で生きることを決めた。
 咲は橘家を捨てて仁友堂で医術の道を歩むことを決めた。
 野風は花魁を捨てて手習いの師匠になることを決めた。
 そして前に進むと新しい景色が見えてくる。
 野風が吉原の大門を出た時に見上げた空が違って見えたのは、象徴的なこと。

★この作品のもうひとつのモチーフは、因果応報とも言うべき人と人の関係でしょうね。
 仁がいたから咲は橘家を捨て、野風は花魁を捨てた。
 逆に仁がいなかったら咲は橘家の娘として嫁ぎ、野風は花魁として身請け生活をしていた。
 われわれはあまり意識していませんが、人との出会いはその後の人生に影響を及ぼし、時には別の道を歩ませることになるんですね。
 そして人間の歴史も。
 いろいろな人間が出会い、影響を及ぼし合う中で人間の歴史が作られていく。
 どんなちっぽけな人生でもバタフライ効果のように後の人間の歴史に大きな影響を及ぼすかもしれない。
 たとえば自分の産んだ子の何代目かの子孫が人類にとって偉大なことをなすとか。
 たとえば自分の言った何気ないひと言が他人に勇気を与え、その他人が数十年後かに偉大なことをなすとか。
 だから龍馬が言うように<人は現在を自分に正直に、誠実に生きていけばいい>のでしょう。

 最後に。
 肝心の謎の部分は先送りですが、続編を楽しみにして待ちます。
 天の意思とも言えるものがあって、それが仁を江戸に呼んだとしたら、その意図は単に<未来からの解放>だけではなさそうですしね。



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7 コメント

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現在を誠実に (なみち)
2009-12-21 12:03:02
いつも拝見しています。
相変わらずスルドイですね。

>人は現在を自分に正直に、誠実に生きていけばいい。

仁たちの生き方もみんなそうでした。
ラストにチラリと出たお稲荷さん売りの少年も、自分に誠実に生きてまわりの人に力を与えているんですよね。

勇気づけられました!
Unknown (326)
2009-12-21 12:43:32
未来は消えてないんじゃないですか?
ただ運命が変わり、医師ではなく予備校講師になったため、仁先生と知り合う機会がなくなり、写真が消滅したんだと思います。

でもそうすると、誰からペニシリンの作り方を聞いたのかという矛盾が生じますね。

その場合原作通りに男性の同級生から
聞いたことになってしまうとか?
仁の頭痛は、未来が変わったことによる
仁自身の記憶の改編の兆候ともとれるのでは?
未来の呪縛からの解放 (TEPO)
2009-12-21 18:03:59
満足です。「咲派の大勝利」という個人的な思いもありますが、構成の見事さに感服しました。

仁が現代に戻りタイムスリップの謎が明かされて終わると考えていて意表を突かれ、続編目当てで本当には終結していないではないか、と批判する人がいるかもしれません。しかしそれはもともと完結している話に無理矢理続編をつける場合に言える批判で、未だ進行中の原作を追い越して「タイムスリップの謎」に独自の解釈をつける無理を犯さなかった本作は賢明でした。未来が消えた今、原作-ネット公開の各巻冒頭数頁とWikiのネタバレ情報しか見ていませんが-第5巻末とほぼ同じ状況に奇麗に着地しています。逆に言えば、友永未来とは「江戸に生きるか、21世紀に生きるか」という葛藤を深刻化させ、扱った範囲内でドラマを成立させるために導入されたキャラだったわけです。

最終回は「未来(みき=みらい)の呪縛」から解放するために、仁と関わった江戸の人々全員総掛かりで-墓の下の洪庵先生まで動員して-仁の背中を押すという構図が見事でした。
最大の立役者は何と言っても龍馬。ジレンマの中で決断することに伴う重荷を一切引き受けるという友情。その龍馬が仁の事情一切を理解したのは、孤独になった仁の寂しさを唯一分かち合ってくれる洪庵先生の墓前での告白のためでした。そして龍馬にヒントを与えたのは勝先生。「あいつ(辰五郎の恋人)は壊せって言ったかもしんねえな」という辰五郎の言葉は側面援護。
もう一人活躍した佐分利祐輔の背後には山田純庵たち仲間達が支援していた。
縁談辞退を申し出た咲を見ていた恭太郎の表情は明らかに「咲、よくぞ決心した」と言っていました。その直後遅疑なくその場を収拾するための芝居に出たところも素晴らしかったと思います。あるいは過去の経緯に囚われずに初音のもとに登楼したカウンセリング効果があったかもしれません。
そして最後に野風。意識が回復するや、そこにいない筈の咲の姿を認め、振り返りもせず差し出した仁の手にガーゼを手渡す咲を見て「かないんせんな」と呟き、身を引いて去ってゆく。その彼女が「誰よりも幸せになるでありんす!」と叫ぶことが何よりも重要。仁と咲との二人だけでは「未来からの解放」につきまとう「後ろめたさ」を分かち合うことは出来ても心底からの救いにはなりません。野風の幸福こそが救いの完成であり、それでこそ未来は
>「わたしにこだわるのはやめて、目の前の風景を見つめなさい。目の前には咲さんや野風さんがいるのだから」
と言ってくれたのでしょうから。

またまた長文ですが最終回に免じて御容赦を。
野風のその後 (TEPO)
2009-12-21 21:33:58
長文の後に済みません。
続編では採用されない筈の原作情報なので敢えて書きますが、原作ではこの後しばらく咲と二人仲良く仁先生を手伝う時期があるようです。しかし、敵の罠で和宮毒殺未遂の濡れ衣を着せられた仁を救うための賄賂を工面するために、野風は改めて身請けされてフランス人貿易商の妻となるようです。
本作の野風は明らかに横浜と思しき場所で手習いの塾を始めていますので、原作を知っている人にはやはりフランス人貿易商との結婚が暗示されています。しかし自己犠牲としての結婚ではなしに「己の脚で」横浜に赴き「慕い慕われて」の幸せな結婚となるであろうところが違います。
野風は幸せになり、2のn乗(n=野風からの代数)分の1だけDNAの異なった(御家門の大殿→フランス人貿易商)未来が教壇(先祖にあやかりおそらくは予備校)に立っていたのでしょう。本作は原作と設定が異なる分だけ野風に対しても、未来に対しても優しくなっているように思います。
みんなが幸せに生きている (コウジ)
2009-12-22 11:56:24
なみちさん

コメントありがとうございます。
この作品を見るとみんながそれぞれ懸命に生きているという感じがしますね。
少年はお稲荷さんを売って、自分も幸せで他人も幸せにしているのでしょう。
敢えて天の意思みたいなことを言うと、天の意思って「自分を含めて、みんなが幸せになるために生きよ」みたいなことでしょうか。
それが形を変えて、様々な人の中にあるんでしょうね。
そんな感じがします。
なるほど、あのシーンは! (コウジ)
2009-12-22 12:01:45
326さん

ご指摘ありがとうございます。
なるほどラストの未来のあのシーンは予備校だったのですね。
気がつきませんでした。
言葉足らずでしたが、僕も未来は完全にこの世から消えたのではなく、別の形で存在していると思っていましたが、答えは描かれていたんですね。
だから手習い。
この作品、丁寧に作られているので1シーンでも見逃せませんね。

パート2 (コウジ)
2009-12-22 12:27:02
TEPOさん

いつもありがとうございます。
まずは「咲派の大勝利」ですね。
咲は仁の良き理解者ですしね。
のどに刃物を当てて仁の手術を守りましたし。
もし続編があるとすると、今度は咲と仁の恋愛関係が描かれていくのでしょうね。
そこへでEPOさんに教えていただいた原作どおりとすると
>和宮毒殺未遂の濡れ衣
を晴らすために野風が登場してくるという物語でしょうか。
早くパート2が見たいですね。
セットもCGも作ってしまったことですし、視聴率20%のソフトを新たに生み出すのは並大抵なことではないですから、TBSさんとしては大事にパート2もしくは映画なのでしょう。

それにしてもTEPOさんがおっしゃるとおり、この作家さん原作の処理がうまいですね。
原作では未来というキャラはいないそうですしね。
今回でうまく未来を退場させたということでしょうか。
僕も機会があれば原作を読んでみます。

あと僕も咲派ですが、別れのシーンの「幸せになる」と言った野風の笑顔はよかったですね。
懸命に手習いのビラを配る姿も。

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