平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

JIN-仁- 第1話~神は乗り越えられる試練しか与えない

2011年04月18日 | 大河ドラマ・時代劇
 震災以来、テレビドラマは無力なのだろうか、と考えていた。
 被災者の方に力を与えてくれるドラマ。そんな作品がほとんどない。
 でも、「JIN-仁-」は違っていた。力強いメッセージを伝えていた。

 たとえば、クライマックスの少年・喜市(伊澤柾樹)のせりふ。

★「生きていれば笑える日がきっと来る。神様は乗り越えられる試練しか与えない」

 望みを失い、死ぬことだけを考えていた栄(麻生祐未)に向けられたものだが、このせりふ、今苦しんでいるすべての人の心に染み込んでくる言葉であろう。

 仁(大沢たかお)もラストでこんなことを言った。

★「神の意思はわからないが、手をとめてしまったら何も変わらない」

 これも立ち上がろうとする人にとって、力を与えてくれる言葉だ。
 手をとめず、小さな一歩でもともかく前進しようとすること。
 そうすることによって世界は変わっていく。
 仁にとっては京都でペニシリンが足りず、たくさんの人を見送ることしか出来ず、自分の無力を感じていた時でしたからね、こう言って立ち上がった仁先生の言葉には説得力がある。

 そして、これがドラマの力である。
 「生きていれば笑える日がきっと来る。神様は乗り越えられる試練しか与えない」
 「神の意思はわからないが、手をとめてしまったら何も変わらない」
 これ単体で発せられたメッセージだったら、「何言ってるの? 私達の苦労なんて何も知らないくせに」と思われて、心に入って来ないかもしれない。
 しかし、ドラマという形で、喜市や仁の苦悩や困難との戦いを通して見れば、心に染み込んでくる。

★最後にこの二時間の放送で、仁にどれだけの困難が襲って来たかを列挙しておきます。

 <脚気との戦い><脚気の薬・道名津を作る奮闘><母・栄に道名津をいかに食べさせるか><母・栄は道名津が咲が作ったものであることに気づいていて食べようとしない><歴史を変えていいのかという悩み><乾燥ペニシリンを作る奮闘><船旅の困難><長州兵に捕らわれそうになる><火事の中での手術><山の様な患者の数><ペニシリンが足りない><新選組がやって来る><手術を拒否する西郷><腹を切ると聞いて気色ばむ薩摩兵><長州兵が西郷を殺しにやって来る>……。

 実にこれだけの困難を主人公・仁に課している。
 この密度!
 京都でのシーンでは盛り込み過ぎの感じもあるが、この密度を大河ドラマ「江」と比べてみるといい。
 「江」は何と内容がなく薄っぺらなことか。
 仁は苦しみ戦っているが、江はほとんど苦しんでいないし戦っていない。
 仁の戦い方を視聴者は予想できないが、江の戦い方は予想がつく。
 そして仁が必死に戦っているからこそ、周囲の人間が助けてくれる。
 ここにドラマが生まれる。
 ドラマのクォリティとはこれである。

※追記
 母・栄(麻生祐未)も立派。
 栄は咲(綾瀬はるか)に言う。
 「あなたはいくさの様な道を行くと決めたのでしょう。家に泥を塗ってもこの道を行くと決めたのならば勝ちなさい。橘の家のためにも道を開きなさい。母はここで見ております。くじけることを許しません。楽しみにしていますよ、咲」

 どうしても「江」と比べてしまうのですが、市が江に言ったせりふは「自分の信じた道を行きなさい」。
 今回、栄が咲に言ったのと同じ内容。
 でも、これだけせりふのクォリティが違う。

 お菓子の食べ方も。
 麻生祐未さん、本当に美味しそうに食べていた。



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6 コメント

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やはり素晴らしい (TEPO)
2011-04-18 11:38:07
>被災者の方に力を与えてくれるドラマ。

内容もさることながら、脚本はもとより撮影までもがおそらく震災前になされたものである、という事実に深い感動を覚えました。
私は原作20巻の結末まで読んでおります。ネタバレは慎みますが、物語の骨格は原作を忠実に追うのではないかと予想しています。しかし、原作を素材として新しい作品としての再創造もなされていると感じました。たとえば

>仁にとっては京都でペニシリンが足りず、たくさんの人を見送ることしか出来ず、自分の無力を感じていた
原作では、仁はある程度のペニシリン製造インフラまで伴って京阪入りをしているので、「蛤門の変」の被災民たちの治療にかなりの成果を上げています。しかし本作は敢えてペニシリンの底をつかせて、その結果仁を無力な状況に置いていますが、まさに現在の被災地の現実と共鳴しています。

前クール末から久坂玄瑞が龍馬に絡むことは原作にはありませんでしたが、瀕死の佐久間象山と仁との出逢い-これは原作にあり、それなりに味わいがあった-と「モンタージュ」でシンクロさせることにより、「死に行く者が生き残る者に伝えたメッセージの重さ」というモチーフに繋げたところも素晴らしかったと思います。

栄の説得は原作では仁でしたが、仁不在中に喜市が活躍したという設定、コウジさんがおっしゃるとおり内容的にも感動的でしたが、今後のストーリー展開の上でも原作以上に原作に即していて脚本の構成力を窺わせます。(この発言の意図はずっと先に納得していただければ、と思います)。

第一部は原作20巻中第5巻までの内容なので、今回のクールで3倍の内容が展開されることになります。第一部終了後「続編」が云々されていた時期に「引き延ばし」という批判がありましたが、そうした声に対して制作側は「3倍の密度をもって完結」という形で答えたのだろうと思います。
こんばんわ (くう)
2011-04-18 19:40:27
>どうしても「江」と比べてしまうのですが

私もそう思ってました^^;
ちょうど、しょぼい合戦シーンを見た後でしたし。。。

幕末の動乱。熱気と悲しみ。
昨年の大河のことも思い起し、ああ、去年は良かったよね。。。とかも^^;

やはり、このドラマは素晴らしいです。
続編にしてこのクオリティ。
先が楽しみな1話目でした。

ところで、今さらですがブログをお引越しいたしました。
今後もよろしくお願いいたします。
期待どおり! (Nolly Chang)
2011-04-18 23:45:15
こんにちは。
ついにJIN始まりましたね!
とても感動しました。

自分の信じる道、というのがコウジさんのおっしゃるとおり、断然深くて険しい。
仁のすすむべき道は果たして正しい道なのか、進んだとしてその先に何が待つと言うのか、しかも決して平坦な道ではなく・・・
それでも進もうとする姿に心打たれます。

京都で西郷を救うさなかに、名もなき長州藩士が目の前で死に、急ごしらえの診療所に戻れば幼い命が絶えている。
命の重さもはかなさも、自分の無力さも味わった仁先生が、せめて江戸の栄さんだけは・・・と、完治していた栄さんの手をしっかりと握って泣くところで、私も泣きました。
栄さんの脚気からの回復をここにもってきた構成は素晴らしいですね。
さらに喜市ちゃんの言葉でたたみこまれてまた泣きました。
栄さんの「咲の味がしましたから(咲が作ったとすぐにわかった)」というセリフも、母子の情の深さの表れで泣きました。
これからも楽しみです!

それから……
震災の後、人の命も、さらに土地や風景さえも、一瞬にして消えてしまったという現実に打ちのめされていました。
やりたいことはやっておこう、会いたい人には会っておこう、今日という日を大切にしようと強く思いました。
コウジさんやTEPOさんも一度会いたい人たちです。なかなか叶わぬことですが、そのような気持ちをもったことだけはお伝えしたいと思いました。
(コメント欄を私物化しちゃってごめんなさい。また時々コメントを書き込ませてください。)
原作 (コウジ)
2011-04-19 11:52:46
TEPOさん

いつもありがとうございます。
始まりましたね、JIN。

原作を事前に読むべきか、読まざるべきか?
僕は敢えて後者ですかね。
何しろともかく波瀾万丈で、次に何が起こるかと思って見る方がエキサイティングですし、謎の部分もいろいろ考えてみたいですし。

喜一のせりふは、原作では仁先生が言っていたんですね。
でも、おっしゃるとおり、ここは喜一を使ったのが正解のような気がします。
喜一のバックボーンを考えれば、このせりふが喜一から出て来るのは必然だと思いますし、やはり栄には子供の言葉の方が届く。
もしかしたら、栄は喜一の言葉を咲の言葉と重ね合わせていたのかもしれませんね。
ともかく上手い脚本家のアレンジだと思います。

それから原作は、第1部の三倍あるんですか?
楽しみと同時にちょっと不安ですね。
TEPOさんのおっしゃるとおり、3倍の密度であれば問題ないのですが、ダイジェストになってしまうと非常に残念。
せっかくの豪華な料理ですので、じっくり味わいたいという感じもします。

比較 (コウジ)
2011-04-19 12:02:26
くうさん

いつもありがとうございます。

比較してはいけないと思うのですが、時間帯や同じ歴史物ということで、どうしても比較してしまいますよね。

「JIN」の咲や栄は、しっかり江戸時代の武家の女性として描かれている。
家に縛られ、しっかり苦悩し葛藤している。
しかし、「江」は完全に現代の女性。戦国時代の女性として、してはいけないことや葛藤があるはずなのにそれがない。

「江」のスタッフさんには、「JIN」を見て奮起してほしいのですが。

それからブログ、お引っ越しされたんですね。
くうさんの所は、テレビドラマの記事を書く時、最初に行く所なんです。
これからもよろしくお願いします。

お久しぶりです (コウジ)
2011-04-19 12:27:28
Nolly Changさん

お久しぶりです。

震災のことでは、僕も同じことを考えました。
過去のことにくよくよしたり、未来に不安になっても意味がない。現在を見つめてしっかり生きていこうと。
そして、今回の「JIN」でのせりふ。

「神は乗り越えられる試練しか与えない」

この言葉が心の中にあるだけでも、生きる力が違って来ますよね。
第1部を見た時は、それほどでもなかったのですが、震災を経て今回はすごく響きました。

あるいは、おっしゃるとおり、仁先生を始めとする登場人物たちは、皆生身の人間ですよね。
自分の無力を感じ、自分のしていることが正しいのか、常に迷っている。
そして、迷いながらも戦い、他人の何気ない言葉や行為に救われる。

せりふの「咲の味がしましたから」も、おっしゃるとおり上手いですよね。
僕は、咲の「私の所業はドタキャンなるものなのですね?」が気に入っています。
武家言葉と現代の言葉がミックスされて、いい味になっている。

それから機会があれば、ぜひお会いしたいですね。
会社を辞めてライター生活を始めて以来、人と関わることが少なくなり、完全に人見知り状態なのですが、ぜひ。

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