平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

軍師官兵衛 第31回「天下人への道」~これで天下の行方は決まりました

2014年08月04日 | 大河ドラマ・時代劇
 秀吉(竹中直人)VS勝家(近藤芳正)。
 その権力闘争の過程はこんなふうに語られる。

・秀吉~清洲会議で信長の孫の三法師を擁立。
・秀吉~信長の葬儀の喪主を、信長の四男で養子の秀勝に。
・秀吉~丹羽長秀、池田恒興、中川清秀を味方に。
・勝家~信長の妹・市を妻に。
・秀吉、勝家~足利義昭の奪い合い。

 この過程の描写はダイジェストに近い。
 もっと官兵衛(岡田准一)が軍師として暗躍するシーンを見たかった。

 賤ヶ岳の戦いは、官兵衛が地図に碁石を打ちながら勝家を追い込んでいく形の描写。
 これもダイジェスト感が否めない。
 北ノ庄落城などは、少し前の大河ドラマ『江~姫たちの戦国』で、しっかり見せられた分、物足りなく感じてしまう。

 そして、ラストはこの会話。
 官兵衛「これで天下の行方は決まりました」
 秀 吉「官兵衛、すべてお主の言うとおりになった。怖ろしい男よ。お主だけは敵にまわしたくないものよ」

 秀吉・勝家の権力闘争の他に描かれたのが、道糞こと荒木村重(田中哲司)。
 道糞は<天下の魔力>を官兵衛に語る。
 いはく、<権力をもった者は狂い始める。それは信長がそうであったし、秀吉も免れない>

 権力の中枢にいる官兵衛と、外にいる村重。
 どうやら外にいる村重の方が、物事の本質がよく見えているようだ。
 権力の真っ只中にいると、どうしても自分を客観的に見られなくなってしまう。
 人間、楽しいのは、目標に向かって坂をのぼっている時なんですよね。
 のぼりきってしまうと、あとは下るしかないから、朝鮮出兵とか、余計なことを考え始める。

 そして、地位とか権力とか名声とかプライドとか、世俗の余分なものを取り去った所にあるのは、村重の次のような人間観なのだろう。 
 
「飯を食わずにおればいずれ死ぬ。だが腹が減れば食ってしまう。
 喉が渇けば水を飲んでしまう。寒ければ衣を着込む。
 生きたいという欲が一向に衰えぬ」

 人は生きている間、さまざまなものを追い求めるが、
 それらはすべて虚しく、結局のところ、確かなのは<生きるという本能>。

 あるいは、この作品に則して、もうひとつつけ加えれば<家族>。
 官兵衛と光(中谷美紀)
 秀吉とおね(黒木瞳)
 善助(濱田岳)と道(福島リラ)
 小寺政職(片岡鶴太郎)とお紺(高岡早紀)
 今回の長政(松坂桃李)と糸(高畑充希)
 そして、村重とだし(桐谷美玲)

 人間にとって大切なのは、地位や権力を求めることでなく、家族と共に穏やかに生きていく、そういうことかもしれません。


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2 コメント

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映像で見る (コウジ)
2014-08-04 20:34:37
TEPOさん

いつもありがとうございます。

カメラワーク。
これこそ演出の腕の見せ所ですよね。
シナリオで内容やせりふは決まってしまいますし、演技も大河ドラマに出演する役者さんのレベルだと役者さん次第みたいな所がある。

長政と糸が会話しているのを微笑ましく見ている光のシーンは、映像の密度が増しましたね。1+1でひとつのカットが2になる。
これが、①長政と糸が会話しているカット→②それを光が微笑ましく見ているとカット、という形でふたつに分けてしまうと、1と1という形で分散して映像密度が薄くなってしまう。

あと、このカメラワークが出来たのは、光役の中谷美紀さんの演技に信頼があったからなんでしょうね。
中谷さんの演技なら引きの映像でも視聴者は気づいてくれる。下手な役者だと、別カットで光のアップを入れなくてはならないが、中谷さんなら大丈夫。
そう演出家は判断したのでしょうね。

茶室の俯瞰に関しては、おっしゃるとおり空間の狭さをどこかで表現しておきたかったんでしょうね。
僕も不自然なカットだったので、気がつきました。

物語をハラハラドキドキして見るのもいいですが、TEPOさんのように映像で楽しむのもありですよね。

カメラワーク (TEPO)
2014-08-04 09:57:02
>この過程の描写はダイジェストに近い。
>もっと官兵衛(岡田准一)が軍師として暗躍するシーンを見たかった。

前回の山崎の戦いもさることがなら、清洲会議はタイトル前に片付け、一気に北ノ庄落城にまで突っ走る今回の展開の早さもまた物議を醸しているようです。
本作は「秀吉物」ではなくて官兵衛が主人公なのですが、それにしても端折り過ぎでしょうか。

秀吉ではなく黒田家および官兵衛を中心とするエピソードと言えば長政の縁談と道糞こと荒木村重との再会でした。

長政の縁談も急展開でしたが、私が感心したのはカメラワークです。
糸が長政に酌をしている時、二人の間の遠景ににこやかにこちらの二人を見ている光が映っていました。
次いで糸の背後からおね、職隆と歓談中の秀吉から「長政、よろしくやっておるな」と声がかかる。
再び長政と糸との「谷間」に見えている光が小六に「蜂須賀様、糸殿に決まった方はおられるのですか?」と尋ねる。
光に長政が呼び寄せられて官兵衛、光、長政、小六と並ぶが、残ってそちらの話を聞いている糸の顔が近景に写されている。
光に糸への気持ちを問われてどぎまぎする長政を背後で笑いをこらえる職隆とおねが見ており、ついにおねが「松寿、良きご縁じゃ」と声をかける。
長政の手をとった小六が「糸をもらってくれるな」。
官兵衛の「願っても無いこと」で決定。

この時点での人物の配置、角度が計算されつくしていて実に見事でした。

「跳ねっ返り」という言葉で顔を見合わせる官兵衛夫妻の糸に対する好意の伏線。
縁談の仕掛け人である光が二人を観察してほぼその気持ちを把握していること。
秀吉夫妻、職隆、黒田家家臣団も経緯に立ち会っており、「良縁」と認めていること。

こうした要素も相俟って、すさまじい急展開であるにもかかわらず、まったく強引な印象がない自然な流れとなり、おっしゃる<家族>の幸福な空間を描いていました。

><権力をもった者は狂い始める。それは信長がそうであったし、秀吉も免れない>

ストーリー的には道糞との再会は、秀吉の今後について官兵衛に警告するための伏線なのだと思いますが、ここでもカメラワークが光っていました。
天井からの俯瞰図という構図によって、官兵衛が因縁の人物と狭い茶室のわずか一坪の空間の中で顔を付き合わせたことを強く印象づけています。

というわけで、今回はストーリーよりもカメラワークが注目の的でした。

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