相棒15 「ギフト」～わたしたちにとって命は軽かった、他人の命も自分の命も

　異常心理。
　とはいえ、今回は犯人の異常心理を描いたわけではなかった。
　以下、ネタバレ。


　異常心理を抱いていたのは、何と殺された刑事・潮崎良純（橋本淳）と有村みなみ（片山萌美）！
　塩崎はＬＧＢＴであり、これを２回にわたってからかわれたことで復讐しようとした。
　そのため服毒自殺をして、快楽殺人犯・北一幸（野間口徹）を逃がした。
　まあ、塩崎の動機は＜復讐＞だし、北を逃がすために自殺するというのもある程度、理解できる。

　一方、有村みなみは……。
「わたしを殺して下さいませんか？　この顔を切り刻んで下さい」
　北一幸の快楽殺人に魅了され、彼を愛し、愛をまっとうするために殺されることを望む。
　みなみは北に殺され、顔を切り刻まれることに喜びを感じていたのだ。
　それが彼を愛することでもあった。

　人間というのは、本当にぶっ壊れていますよね。
　カマキリのオスは産卵するメスの栄養になるために食われると言われているが、それはあくまで子孫を残すため。
　しかし、人間は＜愛＞という名のもとに、殺されることを望む。

　刑事・塩崎の深層願望も壊れている。
　殺人鬼・北一幸は塩崎の心の奥底に眠っている願望を理解した。
＜北一幸が顔を切り刻むのは美しい女性のみ。
　だから顔を切り刻まれれば、塩崎は美しい女性として認められる＞
　北一幸はそれを理解して塩崎の顔を切り刻んだのだ。
　………………

　右京さん（水谷豊）は北一幸に「あなたに仲間はいない！」って言ってたけど、どうなんだろう？

「わたしたちにとって命は軽かった、他人の命も自分の命も。
　でも、計画を立てている間、わたしたちは命を燃やしていた」

　北と塩崎とみなみは心を通じ合わせていたんじゃないかな？
　塩崎もみなみも幸福を感じて死んでいった。
　北一幸がふたりを殺したのも、愛の行為。
　三人は＜こちら側の人間＞として互いに共鳴し合っていたのだ。

　僕たちは自分の理解できないことを＜異常＞というが、彼らには彼らなりの論理があるのだ。
　自分たちの世界の論理だけが正しいと思ってはいけない。
　………………

　ミステリとしてもよかったですね。
　被害者が何かの目的のために自殺するというのは、結構ある話だが、こんなふうにひねるとは！
　逆に快楽殺人犯の北一幸が＜自分の喜び＞のためでなく、＜他人＞のために殺人をおこなったというのも見事なひねり！

　で、シーズン１５での陣川さんの登場はこれで終わりか。
　陣川を演じている原田龍二さんは、現在、二時間ドラマで引っ張りだこみたいですからね、忙しかったのかな？