平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

平清盛 第32回「百日の太政大臣」~そなたが次にあがるのは太政大臣。これであがりじゃ

2012年08月20日 | 大河ドラマ・時代劇
 清盛(松山ケンイチ)と後白河上皇(松田翔太)のすごろく遊び。
 清盛は、大納言→内大臣→右大臣→左大臣。
 この世の頂に、というゴールを目指していた。
 一方、後白河上皇はそんな上がりを認めない。
 大納言→内大臣→太政大臣。
 名はあれども実権はないというゴールに向かわせた。

 いいですね、すごろく遊びになぞらえたこの権力争い。
 すべては<後白河上皇の手のひらの上で踊らされていた>ことがわかった後の清盛のリアクションもいい。
 清盛は、上皇の手のひらの上にいられることが心地よいと喜び、こう語る。
「ゾクゾクいたしまする、修羅の道を歩んできたがゆえに味わえるこの心地。存分に味わい尽くしますぞ」
 そして、次にとった作戦は
 <平家の人間の地位を上げるだけ上げて、平家の地位を盤石にして、清盛自身は太政大臣を辞任すること>
 劣勢に追い込まれていた清盛の一発逆転だ。

 この逆転劇、ドラマとしてなかなか痛快でもある。
 大河ドラマの主人公は現実としっかり闘ってほしいし、できれば<権力争い>で勝利してほしい。
 本来、ドロドロである権力争いを<遊び>としたことも秀逸。
 折にふれて流れる ♪遊びをせんとや♪ が効果的だ。

 後白河上皇は「犬は犬のままで終わるのじゃ」みたいなことを言っていましたが、これって白河院のせりふですよね。
 妖怪・白河院は、その血を受け継いだ後白河上皇の中に生きている。
 これってすごい設定。見事な伏線。

 一方、頼朝(岡田将生)。
 八重姫(福田沙紀)との甘いラブストーリーの世界に生きていたが、厳しい現実に引き戻された。
 大切なものを守るには、やはり力が必要なのだ。
 あるいは源氏の嫡男の血を引く子供が殺される運命にあることを予見できなかった頼朝は甘い。
 頼朝にしてみれば、源氏を捨てれば何とかなると考えていたようだが、『血』の問題はそんなに簡単ではないのだ。
 この作品『平清盛』では『血』の問題は重要なモチーフになっている。
 頼朝の源氏の血もそうだし、先程の白河院→後白河上皇・清盛の血の流れもそう。

 最後に伊東祐親(峰竜太)が、頼朝の子を抱いた時、どうリアクションするかは興味津々だった。
 ここで祐親が子供を床に投げつけたりしたら、NHKに抗議の電話が殺到しただろう。
 なので、どうするかと見ていたら、黙って子供を運び出して、子供が斬り殺されたことを暗示する描写。
 剣を抜く音と、祐親と八重姫のせりふのみの描写。
 実に見事です。



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8 コメント

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双六に例えたのは面白かったです ()
2012-08-20 10:51:25
 大納言→内大臣→右大臣→左大臣という出世街道を、6の目が出てしまい、一気に太政大臣(あがり)に行ってしまったと、双六に例えるのはうまいですね。
 後白河院によりゴール(太政大臣)させられてしまった清盛であったが、それを逆手に取ったのも面白かったです。
 松田聖子の再登場はどうかと思いますが、双六に結びつけ、清盛が立て直すのに、よいきっかけとなっていました。

>後白河上皇は「犬は犬のままで終わるのじゃ」みたいなことを言っていましたが、これって白河院のせりふですよね。

 これに似た主旨の言葉を20話「前夜の決断」でのふたりの密会シーンで
「朝廷の番犬としてこき使われたまま志半ばで死んでいくのだ!」
と言っていました。
6の目 (コウジ)
2012-08-20 18:10:21
英さん

いつもありがとうございます。
6の目にはそんな意味があったんですね。
目が多く出過ぎて、右大臣、左大臣を飛び越えてしまった、と。
気づきませんでした。
すごいですね、このすごろく例え!

それから、20話でこういう会話を交わしていたんですね。
この作品、至る所に伏線が張り巡らされているので、目が離せません。
逆に、前のエピソードなり伏線などを把握していないと、面白さは半減してしまう。
この辺が視聴率で苦戦している理由なんでしょうね。
6の目ですが ()
2012-08-20 18:52:13
コウジさん、れす、ありがとうございます。

>6の目にはそんな意味があったんですね。
目が多く出過ぎて、右大臣、左大臣を飛び越えてしまった、と。

 ええ、「目が多く出過ぎて、右大臣、左大臣を飛び越えてしまった」と言いたかったのですが、6の目と言うのは、適当なたとえです。ごめんなさい。
 そう言えば、2つのさいころを振っていたので、6では小さいですよね。

 もう視聴率など気にしないで、このまま、突っ走っていただきたいですね。NHKのアンケートでは、評価はけっこう高いみたいで、「視聴率は気にするな」という意見も多いようです。
視聴率 (コウジ)
2012-08-20 19:27:09
英さん
私こそ確認もせず、失礼しました!

NHKのアンケート結果の方が、視聴率より正当な評価をしていますよね。
視聴率を取っていた昨年の『江』などより、はるかに内容が濃いですし、ドラマになっていますし。
NHKは数より質で勝負してほしいですよね。
玄人好み (TEPO)
2012-08-21 09:51:26
出張先のフィリピンから昨日帰国し録画を見ました。

>すごろく遊びになぞらえたこの権力争い。
普通のすごろく遊びなら「上がり」が勝ちですが、清盛と後白河院との権力闘争は複雑なものでした。相手を引きずり下ろそうというものではありません。
後白河院は清盛を憲仁親王のスポンサーとして「利用」はしたかったので「平家に落ちぶられては困る」。しかし清盛に「発言権」は与えたくない。
だから清盛を実権のある左右大臣を飛び越して当時は単なる名誉職であった太政大臣(上がり)にしてしまった。
この「太政大臣」の意味について清盛の息子たちと盛国との会話の中で予め解説していたのも芸が細かいですね。

祇園女御=乙前の登場はやや唐突でしたが、たしかに彼女は基房たちの陰謀からのみならず
<後白河上皇の手のひらの上で踊らされていた>ことがわかった敗北感からも清盛を救ったようです。
ここでかき立てられた闘志が
<平家の人間の地位を上げるだけ上げて、平家の地位を盤石にして、清盛自身は太政大臣を辞任する>
一発逆転打に結びついたのでしょう。

頼朝と八重姫との悲恋。
>剣を抜く音と、祐親と八重姫のせりふのみの描写。
たしかに見事でした。
頼朝の言葉でもある最後のナレーションが、それまで畏敬の対象であった清盛に対して彼が憎悪を抱き始めてきたことを暗示していたように思います。

>アンケート結果の方が、視聴率より正当な評価をしていますよね

清盛vs後白河院も、清盛vs頼朝も、基本的には敵対関係なのですが多面的で複雑な関係です。

ストーリーの質は低くても「分かりやすい」方が視聴率はとれるのでしょう。
しかし、脱落せずにストーリーを理解している人たちの目から見れば-まだ終わってはいませんが-本作は明らかに名作の一つだろうと思います。

追記
伏線と言えば平治の乱後、西光が頼朝の処刑を強く要求しに登場しており、今回そのことがもとで清盛に不信感を示している描写がありました。
ほんのわずかの描写ですが「鹿ケ谷の陰謀」への道筋が暗示されています。

後の評価 (コウジ)
2012-08-21 12:20:55
TEPOさん

お帰りなさい。
世界中を飛びまわっていらっしゃいますね。

この作品、確かに玄人好みですよね。

>後白河院は清盛を憲仁親王のスポンサーとして「利用」はしたかったので「平家に落ちぶられては困る」。しかし清盛に「発言権」は与えたくない。

といった後白河上皇の政治的状況の説明などは、省略してもいい部分かもしれませんが、敢えてこだわる。
人間関係も、おっしゃるとおり複雑に描いている。
西光のせりふも「鹿ケ谷の陰謀」への暗示なんですね。

視聴率は悪いかもしれませんが、こういう作品こそ、後に高評価を得られる作品ではないかと思っています。

また、一方で視聴者への配慮もうかがえますね。

>「太政大臣」の意味について清盛の息子たちと盛国との会話の中で予め解説していた
ことなんかは、今までの『清盛』だったら、これほど説明していなかったのに、ワンシーンを使って説明している。

作品としていろいろこなれてきたような気がします。

さらに (N)
2012-08-22 00:03:15
>「太政大臣」の意味について清盛の息子たちと盛国との会話の中で予め解説していた

さらにそこで、清盛の息子たちのおバカっぷり、能天気ぶりを混ぜ込むところが、この脚本家さんの腕ですね。

名作だと思います。
1シーンで多情報 (コウジ)
2012-08-22 08:17:23
Nさん

コメントありがとうございます。
なるほど、太政大臣とは何かを描くと同時に息子たちのキャラクターも描いているわけですね。
1シーンで複数のことを語っている。
1シーンでひとつの情報よりは、多情報。
これが作品の厚みになるんでしょうね。

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