平成エンタメ研究所

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風林火山 第11回「信虎追放」

2007年03月22日 | 大河ドラマ・時代劇
 第11回 「信虎追放」。
 信玄の人生の中の見せ場のひとつ。
 前半はサスペンス。
 父親追放の謀反を企み根回しをする。
 ここで寝返って信虎(仲代達矢)に内通するものが出て来るのではないかというサスペンスが生まれる。
 ポイントは信虎派と見られていた重臣・小山田信有(田辺誠一)や諸角虎定(加藤武)。信虎から可愛がられ家督を継ぐと見られていた晴信の弟・信繁(嘉島典俊)。
 そして彼らのリアクションで、それぞれの個性が出る。
 まずは信繁。
 彼は「よくぞ背かれた」と言って兄・晴信(市川亀治郎)の決断を支持する。自分は器量で兄より劣っているから、父上から家督を継ぐように言われていたが戸惑っていたと語る。これで信繁はこの若さでおのれの分をわきまえた聡明な男という印象が見ている者に伝わる。
 続いてリアクションするのは諸角虎定。
 彼はこのクーデターが間違っていると反論する。しかし、その反論の根拠は彼が家督を継ぐ信繁の後見人だからだろう(=信繁が家督を継げば、自分は武田家で権力を握ることが出来る)と指摘され、言葉を返せない。これで諸角の俗物性が浮き彫りにされる。彼は利に動き、態勢に流されやすい男だということが分かる。
 そして小山田信有。
 彼は今回のクーデターのすべてを見抜いていたかの様。もしこのクーデターに自分や信繁が従わなければ国は乱れ、他国に侵略されていると先を読んでいる。また襖を開けて控えている重鎮たち以外の武田のその他の家臣たちを見据えて、見事に根回しされたという。
 これで彼が先の読める頭のいい男であることが分かる。
 この三人三様の描き分け、見事である。

 そしていよいよ信虎追放。
 その前に今川家で和歌の会があり、クーデターを匂わされるが、奢れる信虎は自分のことだと気がつかない。
「晴れし心に戻る甲斐なし」
 信虎は「晴れし心」を晴信になぞらえていると考える。晴信には「戻る甲斐なし」ろ考える。義元は「晴れし心」を信虎になぞらえていたのだが。
 そして国境にやって来て目の当たりにする光景。
 晴信が立ちはだかり、追放を通告。
 次に信繁が現れ、続いて板垣信方(千葉真一)・甘利虎泰(竜雷太)・飯富虎昌(金田明夫)ら武田家譜代家臣たちが登場。
 今まで信虎につき従っていた兵隊も門の中に駆け込み、信虎ひとりだけに。
 信虎がなおも歩を進めると、足軽隊が槍を構える。
 すべての人の出入りが的確に計算され、まるで歌舞伎の舞台を見ている様だ。
 派手なCGの映像もいいが、こうした舞台を見るような映像もいい。
 逆に新鮮だ。
 そして伝わってくるのは、すべてに裏切られすべてを失った信虎の孤独・絶望。
 「本能寺の変」もクーデタードラマだが、信長が裏切られたのは光秀のみ。
 子供・家臣を含め、すべてに裏切られた信虎の心中は計り知れない。
 この信虎追放は日本史の名場面のひとつである。


★追記
 信虎を演じた仲代達矢さんは信虎をこう分析している。(風林火山HPより)
「権力者というのはとかく行き過ぎてしまう。人間は権力を持つと、だんだん客観的な目というものがなくなってくるのでしょう。自信がついて自信過剰にもなっていく。信虎も甲斐を平定したところで止めておけばよかったのが、領地を広げていくうちに欲望をコントロールできなくなってしまった」
 大井夫人との関係についてはこう。
「大井一族を打ち負かした信虎が、人質同然に略奪してきた女性が大井夫人です。しかし略奪結婚とはいえ、信虎は非常に愛していただろうと思うんです。
 ただ、大井夫人にそんな信虎の思いは通じていなかったのかも知れない。それどころか、さぞかし恨んでいるんだろう。きっと『お父さんは悪いヤツなんだよ』と言って、晴信を育てたんじゃないか。いつか、この俺から甲斐を奪い取り、追放しようと思っているんじゃないか。そんな疑心暗鬼に駆られていた」
 疑心暗鬼にとらわれる信虎を弱さを持った男だと分析している。
 どんな暴君も自分のしてきたことに負い目があり、不安なのだ。
 ミツを矢で殺してしまうような信虎の狂気を単なる狂気として描かず、こうした背景・理由があってのものであると分析しているのがいい。
 最後に「天下を制する者は晴信だ」と信虎が言ったセリフについては、演出家とこんなやりとりがあったという。
「演出家にも『追放された負け惜しみで言ったのでしょうか?』と聞いてみたのですが『いや、これは本音でしょう』と。やっぱり今まで出せなかった思いを、あそこですべて出したということですね」
 信虎はその才能を怖れるがゆえに、自分がやがて放逐されることを怖れるがゆえに晴信を遠ざけたのだ。
 そう考えて、この「追放」の場面を見てみるとさらに信虎の悲劇が伝わる。



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