平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

平清盛 第42回「鹿ヶ谷の陰謀」~共に参ろうぞ、まだ見ぬ明日へ!

2012年10月29日 | 大河ドラマ・時代劇
 ラストの頼朝(岡田将生)のナレーションでこんなものがあった。
「清盛は明日を見失いかけていた」
 これはどういうことだろうか?
 キレて西光(加藤虎ノ介)を蹴りまくる清盛(松山ケンイチ)。
 清盛の中に巣喰っていた<もののけの血>が爆発したようだ。
 このシーンは、清盛が頼朝に流罪を命じ<ヒゲ斬り>を突き刺すシーンと共に描かれる。
 作家はなぜここでこの回想シーンを持って来たのか?
 清盛が西光を蹴りまくるシーンだけでもいいはずである。
 これはこういうことではないか?
 頼朝に流罪を命じたシーンでは、清盛は理性を保っていた。
 激情に駆られながらも心の中はクールだった。
 政子(杏)が看破したように、<ヒゲ斬り>を渡すことで頼朝に「武士の魂を忘れるな」と語っていた。
 だが今回の西光のシーンではそれはない。
 自分のやってきたことを<復讐>と言われ、キレた。
 激情に任せて蹴りまくった。
 ここには何の理性もない。
 以前の清盛なら、西光の言葉を理解して、「確かにそういう面もあったかもしれない。行き過ぎだったかなぁ」と兎丸の時のように考えたかもしれない。「西光殿、それは違う」と語りかけたかもしれない。

 清盛の中で、自制したり自己を顧みたりすることが失われつつある。
 今まで理性と理想で抑えられていた<もののけの血>が噴出しつつある。
 それは老いのせいか?
 ほぼ世の頂に立ってしまったせいか?
 白河院(伊東四朗)の「今まで見えなかった景色が見えてくる」という予言がよみがえる。
 清盛は、頂に立った者しか見ることの出来ない景色を見つつある。
 それは愛も明日もない、暴力と狂気だけが支配する荒涼とした景色。
 いつ権力の座から追い落とされるかわからない不安と恐怖に脅える悪夢のような景色。

 一方、明日が見え始めた頼朝のシーンは明るい。
「連れて行ってくれ。私を明日へ」
「連れて行けとは女々しいお方じゃ」
「共に参ろうぞ、まだ見ぬ明日へ」
 さわやかな恋愛映画を見ているようだ。
 杏さんの政子がいい味を出している。

 坂道を下っていく清盛と上っていく頼朝。
 このふたりのシーンを交互に描いていったことも劇的効果をあげている。
 巧みな作劇だと思う。



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4 コメント

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「もののけ」の心 (TEPO)
2012-10-29 22:07:08
公式HPのインタビューによれば加藤虎ノ介さんは西光が貴族でありながら北面の武士勤務も経験したという史実をもとに役作りをしたそうです。
振り返って見れば、武士を「無教養なならず者」と見つつあくまでも「利用の対象」とするという姿勢は信西配下の師光時代から一貫していました。
「成り上がった」清盛に対し西光の側も狂気じみた憎悪を示していたのはそのためでしょうし、清盛の激昂もその点に反応したからであることは確かでしょう。

この清盛の西光に対する暴力については「西光の言うことが真実だったから」、「西光の言葉通り「無頼の平太」の姿を暴露した」、「所詮武士は暴力装置だ」など様々なコメントが寄せられているようです。

ところで激情に任せた暴力の爆発-それも相手を「蹴り倒す」という-は明子の死に際して「役に立たなかった」祈祷僧に対する場面に伏線がありました。
その時「もののけのごとく生きた白河院の血が清盛に流れていることを育ての父忠盛に否応なく思い出させた」とナレーションがありました。
ですから、コウジさんご指摘の通りここでの暴力性はやはり「もものけ」白河院の血によるであるように思います。

>白河院の「今まで見えなかった景色が見えてくる」という予言がよみがえる。

当初白河院には暴虐な権力者、ほとんど純粋な「悪人」の顔しか感じられませんでした。
しかし、これから清盛の目を通して白河院が見ていた景色=「悪人」白河院の内面性が視聴者にも見えてくるのだとしたら楽しみです。
単純な善悪を越えた深みのある世界観が見られるでしょうから。

「薄汚い禿」→「やや薄汚い姫」(40話)→「姫」(41話)→「婚礼衣装(ただし他家へ)」
急速に綺麗になってゆく政子がいいですね。

>坂道を下っていく清盛と上っていく頼朝。
>このふたりのシーンを交互に描いていったことも劇的効果をあげている。

六波羅屋敷の庭という同じ「場」を重ねあわせていることも巧みだと思います。
よく覚えていらっしゃいましたね! (コウジ)
2012-10-30 09:02:32
TEPOさん

いつもありがとうございます。
なぜ清盛が狂気にも似た暴力に走ったかは、おっしゃるとおり様々な見解があるようですね。
>「西光の言うことが真実だったから」
については僕は却下しました。
確かに西光の言ったことは一面真理で当たっているのですが、物事は立場を変えて見れば、さまざまに解釈できるもの。
太平洋戦争だって、左派から見れば<侵略戦争>であり、右派から見れば<アジア解放の戦争>ですからね。
やはり清盛は<武士が指導者になって経済的に豊かな社会を作ろうとした>のだと思います。
西光の言ったことは、反清盛の立場から見た見解で。

明子の死の際に清盛が祈祷師を同じように蹴りまくったこと。
TEPOさん、よく覚えていらっしゃいましたね。
その時のナレーションが「もののけのごとく生きた白河院の血が清盛に流れていることを育ての父忠盛に否応なく思い出させた」だったことを記憶されていたこともすごい。
ぼくは完全に忘れていました。

そして、このことが示すように、『清盛』作家・藤本さんの中では、すべてが一貫しているんですよね。
どのエピソードも伏線になっていて、それが突如として現れる。
すごい構成力だと思いました。

昨年までは、一年間を構成できる脚本家はいないと嘆いていましたが、藤本さんに関しては例外のようです。
信西と西光 (TEPO)
2012-10-30 17:01:48
>よく覚えていらっしゃいましたね!

もう一件忘れられない場面について書きたくなりました。
それは23話で、信西が清盛、義朝にそれぞれ忠正、為義を斬らせた真意は摂関家の力をそぐためであったことを師光(=当時の西光)が解き明かす場面です。
信西の背中だけ見て顔を見ていなかった師光はただ信西の策の冴えに感動し「どこまでもついて参りまする」と述べていたのに対し、彼に背を向けていた信西は涙を流していました。

西光(師光)は信西を熱愛していたにもかかわらず、両者の間に隔たりがあったことを示すシーンです。
師光にとって武士とは「無教養なならず者」「利用の対象」に過ぎなかったことは前述インタビューで加藤さんが語っているところです。だから彼にとって義朝も清盛も極端に言えば「人ではない」。
これに対し信西は、師光が理解したとおりに策を進めてはいたものの、そのことに対して心を痛め涙を流していた。だから彼は清盛の友でありえたわけです。

このことを思い起こした上で今回の「重ね合わせ」場面を振り返ると新たな意味が見えてくるように思います。
同じ六波羅屋敷の庭でありながら、頼朝の場合には義朝が重ね合わせられていました。
清盛が相対していたのは成り行き上敵となってしまった友だったわけです。
他方、西光は真実の意味で敵であったわけです。

今回の政子による「ならば何故この太刀を渡された!?」「武士の魂を忘れるなということではないのか!?」という言葉は、奇しくもあの時の清盛が友としての義(頼)朝に語りかけていた側面に光を当てたものと言えましょう。
これに目覚めた頼朝は当面の敵対関係を越えて、父の代からの友としての清盛の思いを受け継ぐことになったわけです。

ですから今回の「重ね合わせ」場面は普通理解されているように「清盛の下り坂、頼朝の上り坂」への転回点であるのみならず、真の意味における清盛の後継者としての頼朝の誕生をも意味しているように思います。
西光=信西でない (コウジ)
2012-10-30 20:38:27
TEPOさん

鋭い深読みですね。
西光は信西の言葉を代弁しているように清盛に言っていましたが、実は西光は信西の本質を理解していなかったのですね。
それがご指摘の23話の信西と西光のリアクションの違いに現れている。

この文脈で見ていくと、おっしゃるとおり今回のシーンもなるほどですね。
頼朝にヒゲ切りを渡すシーンでは義朝が現れた。
もし西光=信西であれば、同じシーンで信西も現れるべきですよね。
しかし、現れなかったということは西光は信西の本質を理解した後継者ではなかった。
こんなふうにもあのシーンは読み取れますよね。

頼朝の覚醒については、頼朝が理解していなかった清盛の真意を政子が代弁したという感じでしょうか。
この点、政子は実に聡明ですね。
まあ、頼朝は実際に立ち会った当事者で、政子は客観視できる第三者だったから言えたのかもしれませんが。

いずれにしても『清盛』は繰り返し見れば見るほど、掘り下げれば掘り下げるほど、さまざまなことが見えて来る作品なのでしょうね。

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