平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

「光る君へ」 第10回「月夜の陰謀」~あなたの使命は違う所にあると思います。わたしは都であなたを見つめ続けます。

2024年03月11日 | 大河ドラマ・時代劇
「おれはまひろに会うために生まれて来た」
「この国を変えるために高貴な家に生まれてきた道長様はおのれの使命を果たして下さい。
 直秀もそれを望んでいます」
「偽りを申すでない」
「道長様が好きです。とても好きです。でも、あなたの使命は違う所にあると思います」
「今、言ったことは偽りであろう?」
「私は都であなた様のことを見つめ続けます。
 誰よりも恋しい道長様が政によってこの国を変えていく様を死ぬまで見つめ続けます」

 まひろ(吉高由里子)は客観的にものごとを見ている。
 上のやりとりに挙げなかったが、
 衣食住に困ったことのない道長が地方で自力で暮らしていけないことも語っていた。

 一方、道長(柄本佑)は完全な恋愛モード。
 恋の熱病に冒されて、ものごとが見えなくなっている。

 それを象徴しているのが、ふたりの文のやりとり。
 道長は情熱的な和歌をおくったのに対し、まひろは漢詩。
 気持ちを漢詩に変換する作業をおこなっている分、まひろの方が冷静だ。
 藤原行成(渡辺大知)は、和歌は感情を伝えるものだが、漢詩は志を伝えるものだと語っていた。

 そんな中、恋の熱病のせいで、たばかられた人物がいる。
 花山天皇(本郷奏多)だ。
 花山天皇は今は亡き忯子(井上咲楽)を想うあまり、兼家(段田安則)一家に騙されて
 退位させられてしまった。
 史実で言う『寛和の変』である。

 相変わらず上手い語り口ですね。
 恋の病に冒された道長と花山天皇。
 道長は踏みとどまり、出世の道を歩むことになるが、
 花山天皇は踏みとどまれず、すべてを失ってしまった。
 道長が踏みとどまったのは、まひろの言葉もあるが、
 直秀(毎熊克哉)の件や「世を糺したい」という思いもあったからだろう。

 まあ、どちらが幸せかはわかりませんが……。
 愛する人を失った空洞を心に抱えて長く生きるより、
 熱烈な恋をして、すべてを失って死んでいく方が幸せかもしれない。
 まひろは聡明であるが、聡明さゆえ現実的で一歩を踏み出せない。

 感情描写も巧みだ。
 月の照らす廃屋で、契りを結んだまひろと道長。
 まひろは言う。
「幸せで哀しい」
「人は嬉しくても哀しくても泣くのよ」
 最愛の人と契りを結べて嬉しいが、同時に別れなくてはならないので哀しい。
 嬉しいと哀しいは相反する感情だが、実は同居できる。
 人間の感情というのは実に複雑だ。


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2 コメント

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二人の愛と直秀 (TEPO)
2024-03-11 17:52:23
>最愛の人と契りを結べて嬉しいが、同時に別れなくてはならないので哀しい。
まひろと道長、「プラトニック」ではなく、やはり契りを結んだのですね。
見ていて気持ちの良い「美しいラブシーン」でした。

やはり、先週の直秀の最期を道長と共にしたことが決定的でした。
先週は、「すまない……! 皆を殺したのは俺だ……! 余計なことをした……!」という道長慟哭の台詞以外はほぼ無言でした。
「鳥辺野で、泥まみれで、泣いている姿を見て、以前にも増して道長様のこと、好きになった」。
まひろ側の思いは、先週は語られていませんでしたが、今回まひろ自身の口から視聴者に分かりやすく言語化されていました。
他方、道長は「全てを捨てる」覚悟を示すことでまひろに対する「真実の愛」を証してはいましたが、
>衣食住に困ったことのない道長が地方で自力で暮らしていけないことも語っていた。
私はこちらの方が現実的な問題だと感じていました。
まひろは道長に「全てを捨てる」ことを踏みとどまらせる以上、「正妻」となる可能性は無くなることは承知の筈。
精々のところ「隠れた側室」。
今回、父為時が彼の「隠れた側室」の最期を看取ろうとする姿を見て、まひろがその誠実さに共感を示していた描写はそのことと関連しているのかもしれません。

今回のことで直秀というキャラの意義の全貌が明らかになったように思います。
直秀は徹頭徹尾「まひろと道長とを結びつける」ための存在だったわけです。
反貴族的な散楽への興味という点で二人の出会いのきっかけとなり、ある時期からは実際に二人の連絡役になり、さらには「母の仇の弟」という悲劇性までを知る二人の最大の理解者にまでなり、最後はその理不尽な死によって二人の心を決定的に結びつける。
直秀の埋葬は、二人の「最初の共同作業」であり、おそらくは直秀の記憶は「二人だけの秘密」―二人の従者、乙丸と百舌彦も詳細は知らない―となることでしょう。
先週の段階で退場したのは驚きでしたが、ストーリー上、彼の存在意義はしっかりと完結していたように思いました。

ところで、コウジさんは「5話1セット」の説を立てておられました。
第5話で、互いの素性を知らぬ「まひろと三郎」の関係から「藤原道長と為時の娘・まひろ」の関係に変わりました。
今回の第10話で、「すれ違い」が終わり、ついに「契りを交わす」までになりました。
公式HPによれば、第21話以降の「越前編」が収録されつつあるとのことです。

史実で言う『寛和の変』は兼家一家には栄華をもたらすでしょうが、まひろの父・為時は再び官職を失ってしまいます。
「越前編」で越前「守」となる為時は、これまでの官職と比べても相当の出世となるわけですが、当然それは道長の後ろ盾あってのこと。
つまり、道長がそこまで出世するまでにあと「10話」。
『寛和の変』成功後の栄華は兼家、道隆、道兼らのものであって、兼家一家の中では失敗に備えての「保険」役に過ぎなかった道長もまた、当面は「部屋住み」的な地位に甘んじることになるでしょう。
つまり、まひろにとっても、道長にとっても、しばらくは不遇な「雌伏の時期」が続くことでしょう。
そうした中で、以前から気になっていた道長と倫子との婚姻話がどう絡んで来るのか、気になるところです。
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越前編までの10話 (コウジ)
2024-03-12 08:25:13
TEPOさん

いつもありがとうございます。

>父為時が彼の「隠れた側室」の最期を看取ろうとする姿
為時と高倉の人のことをなぜ描いたのかわからなかったのですが、そういう意味があったんですね。
まひろはふたりをどう見て何を考えたのでしょう。
自分と道長の将来の姿を見たのでしょうか?
さらに掘り下げられそうですね。

直秀は本当に上手いキャラですよね。
おっしゃるとおり、まひろと道長を繋げる役。
「最初の共同作業」「二人だけの秘密」
そして「二人だけの志」をもたらしました。
まあ、直秀は天国でそんなふたりを見て「そんなことはどうでもいいから、おまえらつき合っちゃえよ」(©「葬送のフリーレン」)と思っているかもしれませんが。笑

10話ひと区切り説は信憑性を帯びて来ました。←自画自賛!
「越前赴任」の件はSNSで把握していたのですが、21話からなんですね。
次回で左遷されて、そのまま越前に行くのかと思っていました。
となると、
>まひろにとっても、道長にとっても、しばらくは不遇な「雌伏の時期」が続く
21話までの10話、何を描くんでしょうね?
大石静さんの筆に注目です。
今の緊張感と密度を継続できたら名作になると思います。
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