平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

おんな城主直虎 第48回~おとわと家康の共感 「いくさを起こせぬような仕組みを敷いてしまえばいい」

2017年12月04日 | 大河ドラマ・時代劇
 いくさやはかりごとばかりの「嫌なこの世」を変える方策として、家康(阿部サダヲ)はこう語る。
「いくさを起こせぬような仕組みを敷いてしまえばいい」
 しかし、そんなことは非力な自分にはできないと諦めてもいる。
 そんな家康に対して、おとわ(柴咲コウ)はこう返す。
「やってみなければわかりますまい」
「変えられぬものなどありません」

 このシーン迫力があったな。
 政次(髙橋一生)を槍で突くシーンと共に、柴咲コウさんの最高の演技だったと思う。
 一年かけて描いてきた『おんな城主直虎』のまとめ的なシーンでもあるし。
 おとわにとっては、家康と同様に
 <いくさ><はかりごと><首><一年かけて育てた稲が一日で焼かれる世界><今日の味方が明日には敵になる世界>がイヤでしょうがないのだ。
「やってみなければわからない」
「変えられぬものなどない」
 というのも、この作品がずっと語ってきたこと。
 南渓和尚(小林薫)が「明日には今川屋敷が焼け落ちているかもしれぬ」と幼いおとわに語ったことは、次回、焼け落ちる本能寺でふたたび現実になるのだろう。
 まさに諸行無常である。
 …………

 人の憎しみということも考えさせられた。

 信長(市川海老蔵)にへりくだり、雅の世界に生きていた今川氏真(尾上松也)。
 相撲の余興では、今川家にとって屈辱的な桶狭間を思わせる演出もした。
 そんな氏真が心の奥底で燃やしていた信長への憎悪。
 桶狭間で父を殺し、信康の事件で瀬名(菜々緒)を殺した信長への憎しみ。
 氏真がずっと憎悪の気持ちを抱き続けていたかは定かでないが、くすぶっていた憎悪の炎が明智光秀(光石研)の誘いで再燃したことは確かだろう。

 まことに怖ろしきは、人の心。
 憎悪の気持ちは消えることはない。

 一方、これに対するおとわの反応が面白い。
 氏真同様、おとわにとっても、信長は、父や叔父、瀬名を殺した憎むべき相手。
 しかし、おとわはこう答える。
「仇は誰かと考えぬようにしております」

 おとわはやはり〝僧〟なんですよね。
 仏教では、怒りや憎悪の感情に執着せず捨てよ、と教える。
 …………

 さて、人の世から戦争をなくすにはどうしたらいいんでしょうね。
 ひとつは、家康のように、参勤交代のような戦争を起こせないシステムを作ってしまうこと。
 もうひとつは、おとわのように、怒りや憎しみの心を捨てること。
 あるいは徹底して戦争を避ける道を模索すること。

 この作品は、ほとんどいくさを描かない作品だったが、テーマとしては、しっかりいくさを描いている。

コメント (8)
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