平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

サマーウォーズ デジタル世界の絆

2010年08月11日 | コミック・アニメ・特撮
 電脳世界と田舎。
 デジタルとアナログ。
 サイバーテロやデジタル依存社会の危険を表現して、この作品はデジタルを否定している様に見える。
 夏希の田舎の様な<家族>という人間関係をもう一度取り戻そうみたいな。

 だが、それだけでは片手落ちの様な気がする。
 ハッキングAI・ラブマシーンのサイバーテロと戦うのは夏希の家族だけではない。
 最後のコイコイ勝負では、全世界のネットの住人が力を合わせて戦うのだ。
 そう、デジタル世界でも人間関係は存在する。
 ひとつの目標に向かって力を合わせて、強い絆を作ることが出来る。
 デジタル世界が人間性を破壊するなんて言うのは、それについていけない老人の戯言だ。
 インターネットで人が繋がり、今人気の仮想空間でも人は繋がっていくだろう。
 そして自分はひとりでないと確認できる。
 秋葉原殺傷事件の加藤智大容疑者は、裁判での供述に拠るとデジタル世界の人間関係からも疎外されてしまった様だが。

 さて話を作品に戻す。
 この作品ではデジタルとアナログは一見、対立している様に見えて対立していない。実は同質なものとして描いている。
 そしてビジュアル的には、デジタル世界と田舎を描いて見事に成功している。
 デジタル世界だけでは無機質でどこか物足りない。風や鳥の鳴き声を感じることの出来る田舎世界があって何となく落ち着く。
 でも一方で田舎だけの風景だったら、これも物足りない。ゲームが日常生活に溶けこんでいる現代人には、デジタル世界も愛おしいのだ。
 この作品はこうした現代人のビジュアル欲求を見事にとらえている。
 何しろ<サイバーテロ>が<いくさ>ですからね。
 <デジタル世界>での戦いが<コイコイ>だし。
 この豊かなイメージが作品を成功させている。

 最後に「時をかける少女」もそうだったが、細田守監督の作品には、絵に陰(かげ)がない。
 普通のアニメーションなら、髪や皮膚は立体感を出すために同系色の様々な色が使われ、服でも皺を表現するために陰影がある。
 ところが細田さんの作品にはそれがない。のっぺりした感じがする。
 これは一体どんな効果を狙っているんだろう?
 確かにあの描き込まれた背景には、陰のないのっぺりした絵の方が合う様な気がするが。


コメント
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