平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

わたしたちの教科書 第9話

2007年06月08日 | 学園・青春ドラマ
 物語は教師の内部告発者を捜して裁判で証言させること。
 原告代理人・珠子(菅野美穂)はメモの記されたコースターの店に出入りしている吉越希美(酒井若菜)をその人物だと思うが(→作劇で言えばミスリード)、実は熊沢茂市(佐藤二朗)。
 彼は苦しんでいた。
 自分がいじめられている生徒に何も出来なかったことが。
 黒を黒と言えないことに。
 その想いは家出した娘のこととオーバーラップして彼をより苦しめる。
 作劇で言えば、娘のエピソードがあることで熊沢という人物の心情にリアリティが出て来る。

 そして珠子の問いかけに葛藤の末、しぼりだした言葉。
 まず最初の珠子の「藍沢明日香と関わりはあったか?」という質問に対し、「担任でなかったからよくわからない」と答える。
 しかし、これは嘘。彼は関わりを持っていた。
 熊沢はいじめられて靴を隠された明日香のために靴を探した。給食室のゴミ捨て場に捨てられた汚れた靴を拭いて下駄箱に戻してやった。
 彼は「これが唯一藍沢明日香に自分がしてやれたことだ」と言う。
 その告白がきっかけで堰を切ったように本当のことを話す熊沢。
 まずいじめのことを黙っていたのは雨木副校長(風吹じゅん)が担任教師・三澤(市川実和子)の生活記録を書き直させたことを目撃したから。この問題は自分が処理すると雨木が言ったから。
 裁判上では雨木の関与と隠蔽を示す重要な証言。
 そして最後に搾り出すようなひと言。
「当校にいじめはあります」

 熊沢役の佐藤二朗さんは公式HPのインタビューの中で、「このセリフは絶対人に渡したくないな」「このセリフはオレが言いたいな」って思うセリフのことを語られていたが、まさに「当校にいじめはあります」はドラマを大きく急転させる重要なせりふ。その前の告白といい役者冥利に尽きるシーンとせりふ。

 こうして大きく展開した裁判。
 次回以降は雨木ら闇の核心にメスが入れられそうだが、そこで語られることは何か?
 熊沢は嘘をつくことに迷いがあった。
 自分がついている嘘は自分の意に反したもので、苦しいものであった。
 それは自分に嘘をつく行為。
 一方、雨木副校長や兼良は?
 彼らは自分の行動や嘘にそれなりの強い理由・信念があるはずだ。
 それが何かを知りたい。
 加寿子が珠子に語ったいじめをするクラスメイトのことが頭をよぎる。
 ある女生徒はシュークリームを見ると吐き気をもよおす。(母親が外出して夜いない時はシュークリームが置かれていたから)
 ある女生徒は成績優秀だが、コンパスの針で自分の太ももを突き刺す。
 そんな彼女たちだからいじめをせずにはいられない。
 これは何を意味するのか?

 それにしても人はどうして嘘をつくのだろう?
 真実を明らかにしないのだろう?
 最近の事件では社会保険庁やコムスン。
 大人の世界では嘘をつくことが当たり前。隠蔽することが当たり前。
 珠子が言うように隠蔽することで傷口はどんどん大きくなっていくのに。
 こんなテーマともリンクして、この作品はインパクトのある作品となった。
 

コメント
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