平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

弁護士のくず 第3話

2006年04月28日 | 職業ドラマ
 第3回は「どんな手段を使っても這い上がりたい人間」のドラマ。

 瀬能セリ(北川弘美)は元グラビアアイドル。
 だが、グラビアアイドルとしては売れず、彼女が所属していたグループ「おねだりガールズ」もクビになってしまった。
 それでもセリは「どんな手段を使っても這い上がりたい人間」。
 出版社に自分をグラビアに使ってくれるよう頼みに行った時に1枚のフロッピーを見つける。
 開いて見てみると小説。
 エロティックで面白い。
 これを自分のものとして写真集付で発表したら……。
 結果、セリの書いたというより盗作した小説はベストセラーになった。

 そこへそれは自分の作品だと言って乗り込んで来た女・豪田珠美(片桐はいり)。
 セリを盗作で訴えたいと武田(伊藤英明)に頼み込む。
 武田と九頭(豊川悦司)はセリの小説が盗作かどうかを調べ始めるが、実はその背景には珠美によって仕組まれた巧妙なシナリオがあった。

 九頭は珠美のシナリオを物語ふうに話す。(以下、ネタバレ)
「文壇のシンデレラを目指す女の話だ。
 華やかな世界にどうしても戻りたかったグラビアアイドルは知り合いの編集者にフロッピーの中のそれを自分が書いた文章だと言って見せた。
 その文章は編集長の目に留まり、すぐに出版されて大ヒット。
 彼女は瞬く間に、文壇のシンデレラになった。
 そこへ、この物語のもう一人の主人公が登場する。
 やはりチャンスに恵まれてはいなかった本物の作者だ。本物の作者はサイン会に乱入し、妄想癖の女を演じてマスコミの注目を集め、スキャンダラスな告訴合戦で大衆の目を引く。
 そして最終的に決定的な証拠を出し、劇的な勝利を収めた本物の作者は衝撃のデビューを果たす。
 本物の作者はグラビアアイドルの作者がわざとフロッピーを拾うように仕向けたんだ。シンデレラがガラスの靴を王子に拾わせたようにね」

 「どんな手段を使っても這い上がりたい人間(セリ)」の裏にもうひとり「どんな手段を使っても這い上がりたい人間(珠美)」がいた。

 同じ動機を持つ人間が同じ動機を持つ他の人間を利用する。
 これがこのプロットの面白いところ。

 ふたりの動機は交錯し、微妙な人生のドラマを醸し出す。
 セリを踏み台にして這い上がろうとする珠美に九頭が釘を刺すのだ。
 セリも這い上がろうとして血の滲む努力をしていたことを話す九頭先生。
 セリの指には吐きダコがあった。
 吐くために喉に指を突っこんだ時に出来るタコだ。
 それはグラビアアイドルとしてのスタイルを保つためにセリがしていたことだった。
 ここで珠美はセリを告発することをためらう。
 セリもまた自分と同じシンデレラになりたくてなれない苦しみを抱えていた人間だとわかったから。

 今回の九頭先生は推理ドラマ。
 トリックはある動機を持った人間が同じ動機を持った人間を利用して目的を果たそうとするというもの。
 また、同じ動機を持つ者どうしが交錯してドラマを作り出した。

★研究ポイント
 推理ドラマの作り方:ある動機を持った人間が同じ動機を持った人間を利用して目的を果たそうとする。

★名セリフ
「シンデレラってさ、わざとガラスの靴を階段に落としていったって思わない?
シンデレラはガラスの靴を落としていかなかったら王子の目に留まることもなかった。合コンでもさ、なんかダラダラいる女より、スパっと帰っちゃう女の方が気になるでしょ?」

★ディティル
 キャバクラは「セーラー服と機関坊」
 ホステスはセーラー服で、客は学ランを着なくてはならない。
 入店するには学生証の提示が求められる。

 加藤徹子(高島礼子)は「12時過ぎたシンデレラ」と言われてしまう。
 武田真実(伊藤英明)は「あそこもきっと短い」と言われてしまう。

★ちょっと一言
 セリが盗作をしたことが視聴者にわかるまでに時間がかかりすぎている。
 むしろ武田が珠美の誘導でセリが盗作をした証拠を掴み、訴えるところを九頭が止めて真相を話すという形にした方がよかったのでは?
 物語で明らかにしたいのは「セリが盗作したか?しなかったのか?」ということではなく、その裏にある珠美の思惑の方なのだから。
 少しキレの悪い話でした。
コメント (4)
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