平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

THE 有頂天ホテル

2006年04月26日 | 邦画
 「有頂天ホテル」の人物たちはすべて自分を偽っている。
 それは世間の目であったり、しがらみであったり、自分の弱さであったり。

 そんな彼らが「自分自身のままでいいじゃないか。今の自分を好きになり自分を生きよう」と思う。

 これが作品全体を貫くドラマとテーマ。
 だから、これだけ人が入り乱れていても作品として破綻しない。
 すべての人物が「自分を生きよう」という結末に向かって動いていく。
 そして作者は彼らが動いていくのを描いていくだけでいい。

 それを具体的に見てみると……
 
★新堂平吉(役所広司)
 別れた恋人・堀田由美(原田美枝子)に自分が演劇で成功したように見せる。
 自分がマン・オブ・ザ・イヤーに選ばれたと嘘を言うのだ。
 しかし、マン・オブ・ザ・イヤーに選ばれたのは由美の夫・堀田衛(角野卓造)。
 だから新堂が嘘をついているのはバレバレ。
 新堂が取り繕えば取り繕うほどギャグになる。
 最後にばれて新堂は由美に言われる。
「今、ホテルの仕事でがんばっているんでしょう。だったら今のあなたでいいじゃない」
★堀田衛
 コールガール・ヨーコ(篠原涼子)とつき合っているのを、恥ずかしい写真まで撮られているのを隠そうとして、七転八倒する。
 彼は最後まで嘘を突きとおすが、世間の目を気にして自分を偽ることがどんなに大変で愚かしいことを教えてくれる。
★只野憲二(香取慎吾)
 彼は30歳という年齢からミュージシャンになるのを諦めた。
 まだミュージシャンになる夢を捨てていないのに。
 巡りめぐって戻ってきた幸運を呼ぶ人形?とアヒルに運ばれてきたバンダナ、そしてギターが手許に戻り、再び夢に生きる決心をする。
★竹本ハナ(松たか子)
 彼女は老齢の社長・板東健治(津川雅彦)の愛人・小原なおみ(麻生久美子)のふりをした。というより勘違いに巻き込まれてなってしまった。
 健治の息子・直正(近藤芳正)がふたりを別れさせようとしているのを目の当たりにして、世間体を気にして自分たちの思いを全うできない愚かしさを実感する。
 愛し合っているなら年の差、世間体なんか気にしないで愛し合えばいいのにと思う。
 また、それは彼女にも当てはまることだった。
 彼女は自分がシングルマザーであることを恥じていた。
 しかし、そんなことは気にせず子供を愛そうと思った。
★桜チェリー(YOU)
 彼女は自分の歌を歌いたいと思っている。
 しかし、事務所の絡みで演歌しか歌わせてもらえない。
 仲間たちにも後押しされ彼女は最後に自分の納得する歌を歌う。
★武藤田勝利(佐藤浩一)
 彼は迷っている。
 汚職のすべてをぶちまけ政界から去るか、マスコミに叩かれながらも政界で生き残るか。そして第3の道自殺も。
 勝利は格好つけでもあり、いろいろ右往左往して迷うが、最後に見出した自分を見出す。
 どんなに叩かれて格好悪くても政界に残る。
 政界に残って政治をする。
★右近(オダギリジョー)
 筆耕係の彼は教科書どおりの書を書いてきたが、最後に自分の書を書く。

 とこんな感じ。
 大晦日、このホテルに集まって喜劇を繰り広げた人たちは、「自分を見出すことが一番幸せなんだ」ということを教えてくれる。
 そして、「自分を偽って右往左往することの愚かしさ」も。
 もっとも、作者は「自分を偽って右往左往することの愚かしさ」を否定はしていない。
 それが人間なのだと語っている。
 すべてを肯定すること。
 それが喜劇なのだから。

★研究ポイント
 テーマ:自分自身で行こう。
 ドラマの作り方:登場人物すべてを貫くテーマ。グランドホテル形式。

★キャラクター研究
「申し分のない副支配人」、「副支配人の分かれた妻」「能天気な総支配人」、「怪しい飲食部・副支配人」「神出鬼没のコールガール」、「人生崖っぷちの汚職国会議員」「議員の元愛人、今は客室係」、「筆の達人・筆耕係」、「謎のフライトアテンダント」、「一九分けの芸能プロ社長」、「不幸せなシンガー」、「事故にあった大富豪」「死にたがる演歌歌手」

★名セリフ
 総支配人
 「今×××にいる。洗顔クリームを持ってきてくれ」
 ※あの白塗りは「オペラ座の怪人」のパロディでしょうか?
 
コメント (7)
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