平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

炎のランナー

2006年02月22日 | 洋画
「炎のランナー」は1922年のパリ・オリンピックでの英国陸上選手の姿を描いた秀作である。

テーマは走ることの原動力は何か?

ハロルド・エーブラムズは、「ユダヤ人に対する偏見」だ。
ユダヤ人の彼は周囲の目に憤り、屈辱を感じてきた。
現にケンブリッジの寮長たちは、時計が12回鳴るまでに校舎の内庭を1周するカレッジ・ダッシュというイベントで、ユダヤ人の彼が勝ったことを苦々しく思う。
彼は走ることで、その偏見が間違いであったことを認めさせようとする。
彼にとって、走ることは「戦うための武器」なのだ。

一方、スコットランドのエリック・リデルは神父、神を讃えるために走る。
「人が活きるとは走り続けること。ゴールまで走る力は我々の中から湧き出る。その力は神を信仰する人間の中にある」
それを証明するために彼は走るのだ。
彼は走ることで、神の喜びを感じる。

いずれも走ること(生きること)の原動力。
こうした心がなくては、走る(生きる)という戦いに耐えられない。

しかし、栄光は簡単にやって来ない。
彼らに困難が襲う。

エーブラハムズは、競技会でリデルに負ける。
そこでプロのコーチ、サム・マサビーニについてトレーニングを始める。
エーブラハムズの家は金持ちでコーチを雇うことができるのだ。
それをケンブリッジの寮長たちは非難する。
いわく。
「紳士の敗北は金の勝利よりはいい」
「テクニックを求め、個人的栄光を求めている」
それに対しエーブラハムズは言う。
「栄誉を求めるのは家族のため、大学のため、祖国のため」
「探求を重ね、自己を高めたい」

彼の恋人も彼の勝つ事への執念に悩む。
エーブラハムズは「自分は負けるために走るのではない。勝つために走るんだ」と言い、激しいトレーニングに打ち込む。
そんな彼のことに悩む恋人にエーブラハムズの友人リンゼイは言う。
「世界を相手に戦っている彼には恋人は見えない。戦いが終わるまで待っていてくれないか。彼はバカだな。俺ならずっと君のそばにいるのに」

一方、スコットランドのリデルの困難はこうだ。
リデルも「走ることに熱中し過ぎて神を忘れている」と妹に非難されている。
そしてパリ・オリンピック。
リデルの出場する100メートルの予選が安息日である日曜日になってしまう。
リデルは出場を辞退する。3年間、走ることに打ち込んで来た集大成であるオリンピックに出ることが出来ない。しかし神の教えを否定することは出来ない。彼にとって苦渋の選択だ。
説得をする国王やイギリスのオリンピック委員会とはこんな議論をする。
「頑なだな。たまには国のために折り合うことも重要だ」
しかし、リデルにとって重要なのは国より信仰、国王より神だ。
それをある英国貴族は傲慢だと言うが、リデルは「個人の信仰に立ち入ることこそ傲慢です」と自分の信念を貫く。
結局、リンゼイが400メートルの出場権をリデルに譲り、リデルは400メートルに出場する。
後にある貴族は反省する。
「国の栄誉のために人格を殺そうとしたわれわれが間違っていた」
これぞ英国紳士だ。

そしてエーブラハムズは100メートルで、リデルは400メートルで勝利する。

パドック、シュルツといったアメリカの名選手に勝って金メダルを獲得したエーブラハムズは、勝って喪失感を感じる。目標が失われたからだ。
しかし、彼は100メートルを走る10秒間の中に自分をしっかりと確認した。

リデルは400メートル。
もともと100メートルの選手だっただけに持久力が心配されたが、彼は「心」で走る選手。神の力を得て、翼を与えられ、400メートルを走って少しも揺るがない。ぶっちぎりで勝つ。

★研究ポイント
 葛藤して生きる人間を描いたスポーツ映画。
 テーマは信仰と差別。
 スポ根、ギャグ以外にこういうスポーツの描き方があった。
 スポーツと恋愛を絡ませたのが「ロッキー」。
 他にどんな絡ませ方があるか?

★追記
 エーブラハムズのコーチ、サム・マサビーニがカッコイイ。
 マサビーニは競技委員に「エンジョイ ザ ゲーム」と言われて憤慨する。
「ゲームだと?これは果たし合いだ」
 コーチを頼むエーブラハムズにサムは言う。
「コーチを引き受けるのは私から頼む時だ」
 そしてエーブラハムズがリデルに負けた時にサムはやって来る。
「あと2歩は私が保証する」
 エーブラハムズはリデルに1歩差で負けたのだ。
 サムはフォーム改造を行い、メンタルトレーニングを行う。
「リデルの姿を目に焼きつけて、目を閉じてもその姿を思い出せる様にしろ」
コメント
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