えんたんと読書

2015年開設。メーカー営業女子の日頃読んだ本や読書に関係したコラムなど日々綴っています。

ビジネス書大バカ辞典 勢古浩爾

2018-04-01 01:25:04 | 読書術
「ビジネス書には、まともなビジネス書と、いかがわしいビジネス書『もどき』がある」

怪しげなビジネス書をぶった切る本です。
Amazonのレビューを見ると、賛否きれいに分かれていますね。
私は表題の文言に賛成する派ですが、
筆者の口調が週刊Spa!のようにが軽いこともあり「なんの権限があってビジネス書を評論してるんだよ」と反発する意見もあるようです。


私は、本書を読むと、「怪しいビジネス書」が何で怪しく感じるのか、明快な言葉で説明してくれているのでハラオチしました。

とりわけ面白がって読ませてもらったのが神田昌典、勝間和代の箇所。

◆神田昌典 『あなたの会社が90日で儲かる』『非常識な成功法則』『全脳思考』
これらはいずれも読んだことのある本です。そしていずれも「ほほーっ!なるほど!」と感動しながら読みました。
これを著者に言わせると

表情がその都度コロコロ変わる 1冊目はまじめなコンサルタント、2冊目はとち狂い、3冊目は理路整然としている。
これが、1冊目はまじめに書いたが売れたので2冊目で調子に乗った。3冊目になると売れる本を買おうという必死感がなくなって堂々たる大冊の理論書になった、と解説している。
とりわけ私は『非常識な成功法則』が好きだ。
「願望を紙に書きなさい。ただ、それだけではだめです。やりたくないことも書き出して、やりたいことを浮き上がらせなさい」という内容がある。
これを本書に言わせれば、「紙に書いただけでは実現するはずがない。これは神田もわかっているはずだ。説得力を持たせるためにやりたくないことも書き出させているだけだ」とぶった切っている。
なるほど、そんな考え方もあるものだ。

私が『非常識な成功法則』を愛読書とするのは変わらないが、本書のぶった切り理論も私は好きだ。


◆勝間和代 『お金は銀行に預けるな』『効率が10倍アップする知的生産術』『起きていることはすべて正しい』
勝間和代は、考えが極端で私は受け付けない。しかし、本書では「根がまじめ」と評価している。
確かに、「金融リテラシーが付けばつくほど、世の中に『楽なお金儲け』の方法がないことに気づく」という一文を評価している。
これは私も勝間を見直した。

話がそれるが、読書においても、『読書をすればするほど、速く、簡単に、読みこなす方法ないことに気づく』というのが私の理論だ。
速読で熟読ができる方法がある、なんて考えたら大間違いだ。まともな読書家であればわかるだろう。慣れというものはもちろんあるのだろうけど。




いずれにせよ、売れるビジネス書を次々出す作家も大変なんだろうな。
ネタが尽きてしまったら、「それらしい」概念をあちこちから引っ張ってきて適当にアレンジしてごちゃごちゃくみ上げる。
そして優良作家もいつのまにか「もどき」になってしまう。

もちろん、他人が絶賛する本にあれこれ良しあしを言及するのも良くないとは思うが
「成功」「法則」「ルール」「運」「秘訣」「魔法」「夢をかなえる」「10倍アップ」「○○分で」…
このタイトルに警鐘を鳴らす著者の姿勢は賛成する。

ビジネス書、とりわけ自己啓発書は自分の能力を高めてくれる本だとは思う。
しかし、読んだ達成感から「自分は有能な人間だ」「自分は何でも知っている」と勘違いしてしまう意識高い『系』の人もたくさん見てきた。
優良なビジネス書と、「もどき」の本を切り分ける読書リテラシーが必要だということは心から痛感する。

おススメ度 ★★★★★