25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

宿命を変える人工T細胞

2015年10月15日 | 社会・経済・政治

  病気という概念が変わったのは iPS細胞の培養が成功したからである。脳卒中も、心筋梗塞も、慢性肝臓疾患や腎臓疾患も、糖尿病や骨粗鬆症も免疫細胞の暴走、誤作動から起きていることが究明されている。濃いめの塩味と脳卒中に因果関係があるか。脂肪と動脈硬化に因果関係があるか、と言えば、相関関係はあるのかもしれないが、因果関係ではないことがはっきりしてきている。

  パソコンが使えなければ仕事にならないように、iPS細胞が扱えなければ医師として存在しにくい日がそう遠くない日にくるのだろうか。

免疫細胞は病気にならないようにしてくれる。ところがこの細胞の代表格であるT細胞は20歳で旺盛期を終え、僕らが子孫をのこせる性の相を終えると衰退しはじめる。 

  20歳のときの100%のT細胞は外的異物がやってくると素早く活動する。ところが70代ではわずか10%のT細胞が敵を認識できず、のそっと昼寝しているように見える。これが「老い」である。免疫細胞が誤作動して、暴走を始めるときがある。すると、上記の病気が発生する。京都大学の研究所ではiPS細胞から人工T細胞を作り出し、実験を行い、現在のところ副作用なしで、進んでいるという。

 中山所長は「変えられる運命はもはや運命ではない」と言っている。いわば iPS細胞によって人間の宿命の大転換がノーベル賞だったということになる。

 僕もやがて人工T細胞の点滴をうつ日がくるのだろうか。人類の次の段階をみることができるのだろうか、と思いながら、今日また酒を飲む。



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