25時間目  日々を哲学する

著者 本木周一 小説、詩、音楽 映画、ドラマ、経済、日々を哲学する

ビタミンC

2018年10月21日 | 
 岡田さんのブログを見て、最近ユヴァル・ノア・ハラリから知ったことを報告しておこう。壊血病とビタミンCのことである。壊血病とは体内の器官から出血し、死に至る病である。地理上の発見の時代、長い航海にでると船の乗組員の半数が死んだという。このことがあったから、遠くへの航海が憚られた。どうして船乗りたちは死んでいくのか。1522年、マゼランの遠征艦隊が7万2000キロメートルの旅を終えてスペインに帰り着いたとき、マゼランを含め全員が命を落とした。
 転機は1747年に訪れた。イギリスの医師ジェイムズ-リンドが船乗りの病気にたいしてグループに分けて実験をおこなった。実験グループの一つには、柑橘類を食べるように指示した。このグループの患者はあっという間に回復した。まだその頃は回復させるそれはビタミンCだとはリンド医師にもわからなかったが、クック船長は船に果物と野菜を積み込み、寄港地でも野菜と果物をたっぷり食べることを指示した。クックは一人として壊血病で水夫を失うことはなかった。
 その後数十年間で、世界中のすべての海軍がクックの航海用食事法を取り入れ、水夫や乗客の命が救われた。南北アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの先住民の9割が死んでいった代わりに、白人は地図に南北アメリカとオーストラリア、ニュージーランドを書き込み、そこを白人の領土とした。
 文明と接していなかった先住民にとって、なんという歴史の皮肉か。のちに、これがビタミンCであることがはっきりとした。ビタミンCが大航海時代を可能にしたのである。人類は主に歩いて地球の隅々にまでに行き渡った。島に渡るにも、日数のかかるところへは不可能であった。島から島へと長い年月をかけた。現代なら月にいくような感覚だったろう。

 科学が大航海を可能にした。武器には鉄砲まであった。世界の大転換期となった。宗教が科学に乗っかった。スペイン、ポルトガルは宣教師を派遣する。アメリカには清教徒が渡った。誰がビタミンCが切っ掛けとなって数々の先住民族を殺すことに至ることを想像したことだろう。



  


最新の画像もっと見る

コメントを投稿