Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

小説「世界最終戦争の夢」とオペラ「アルマゲドンの夢」

2020年10月24日 | 音楽
 H.G.ウェルズ(1866‐1946)の「世界最終戦争の夢」(1901)を読んだ。11月15日から新国立劇場で上演予定の藤倉大の新作オペラ「アルマゲドンの夢」の原作だからだ。同劇場のホームページによると、スタッフ・キャストの外国勢はすでに入国して、リハーサルに加わっているらしい。入国制限の折からたいしたものだ。

 原作のストーリーは――、ロンドンに向かう電車の中で、著者はある男から話しかけられる。著者は夢にかんする本を読んでいたのだが、その男がいうには、「自分は夢の中で別の人生を生き、そして死んだ。毎晩夢を見た。その夢は連続していた。目覚めているときはこの世を生き、眠っているときは別の場所、別の時間を生きた」と。そしてその男は夢の中での人生を語る。それは奇妙に生々しい物語だった。

 それは戦争の物語だった。男は「北の国」の政界の指導者だったが、恋人との愛の生活を選んで、政界を去った。男の後継者は危険な男だった。軍備を増強して、戦争の準備を始めた。恋人は男に、政界に戻って、戦争を阻止するよう求めた。しかし男は恋人のもとを離れなかった。戦争が始まった。それはだれも想像したことのない大規模なものだった。男も恋人も戦争に巻き込まれて死んだ。

 以上が「世界最終戦争の夢」のストーリーだ。そこには、愛か義務か、言い換えれば、個人か社会かという問いかけがある。また戦争への扇動者と大規模な戦争の描写が、第二次世界大戦の予言のように思える。

 オペラの台本は脚色されているようだ。新国立劇場のホームページに演出家のプラン説明の模様が掲載されているが、正確を期すために、公演チラシによると、まず「ダンスホールに現れたインスペクターの扇動」とある。原作にもダンスホールのシーンはあるが、インスペクターは登場しない。また恋人のキャラクターが、原作では(上記のように)男に、祖国に戻って戦争を阻止するよう求めるものの、どちらかといえば受動的なキャラクターであるのにたいして、公演チラシでは「ベラ(引用者注:恋人)は自由を求め戦おうと必死で説得する。」とあり、能動的なキャラクターのようだ。その他、プラン説明によると、原作のストーリーの「著者」と「男」の役割が一部改変されているようだ。あとはオペラを観てのお楽しみか。

 「世界最終戦争の夢」は創元社文庫の「ウェルズSF傑作集2」に入っているのだが、そこに収められた他の作品もおもしろかったので、触れておきたい。全13篇の作品の中には、環境破壊への警告のように読めるものや、キリスト教の無力化への警告のように読めるものがある。その中でわたしが惹かれたのは「盲人の国」だ。そこにもいくつかの寓意が読み取れるが、それ以上に神話的な作品世界に惹かれた。

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