かしまし娘は、間違いなく一時代の先駆者だ。
若い美人の女性3人のバライティーショーが、演芸場に出るなどとは予想しなかった。その後、フラワーショー・ジョウサンズ・ちゃっきり娘などの、トリオが乱立したが、かしまし娘を越える芸人は出なかった。
三味線の長女正司歌江を中央にして、右手に二女照枝、左手に三女花江のギターを引き連れたもので、「うちら陽気なかしまし娘、誰が行ったか知らないが、女三人寄おったら、姦しいとは愉快だね。ベリーグーグー、ベリーグーグー。お笑い、おしゃべり、ミュージック。明るく歌あてナイトアンドデー、ピーチクパーチク姦しいーーーー。」テーマソングのあと、歌江が当時の流行歌を歌って照枝が、なにがしか突っ込んで笑いが始まった。美人だが決して長女らしくない歌江に、二女の照枝が鋭く突っ込み、三女の花江が賢く優等生ぶってとぼける。
特に、しゃべりも歌も楽器も上手でもないが、なぜか存在感のあったトリオだった。解散後は関西芸能界の重鎮として活躍した。特に、二女照枝は、藤山寛美(藤山直美の実父)の松竹新喜劇に所属し貴重な脇役を勤めていた。当時、渋谷天外の新喜劇を継いだものの、寛美は莫大な借金を抱えて、返済の為もあって劇場に泊まり込んで連続上演記録を更新していた時代だ。寛美は舞台上でベテランの役者にはアドリブで器量を試していた。照枝には、「お姉さんの歌江は元気にしとるんか?」と、セリフの中で突然言って、戸惑う照枝を見て会場も大爆笑となった。酒井光子・曾我廼家鶴蝶・四条恵美・月城小夜子など、大看板の女優陣の中で貴重な存在だった。因みに、その照枝の息子は、磯野貴理子のマネージャーだった。
数年前、現在のかしまし娘を特集していたが、それぞれ普通の老女になっていた。
弟子は、レッツゴー正司、正司敏江・玲児など。