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遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

川口潤監督『狂猿』(2021年)

2023-12-12 22:26:16 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

2023/12/11

・プロレスラーでデスマッチファイターの葛西純が、2019年の長期欠場からコロナ自粛明けまでの生活と戦いを映したドキュメンタリー。

・個人的にデスマッチは大日本の試合を何回か見ているくらい。プロレス観戦自体だいぶんご無沙汰。

・そんな自分でも、クレイジーモンキー葛西純のキャラクターは強烈に印象に残っている。

・作中で藤田ミノル選手が言うには、デスマッチの「芸術点が高い」。まさに。

・最初は小柄ながらもガタイのいい若手だった。キャリアを重ねていくにつれ、髪型、コンタクト、ゴーグル、時には尻尾、極めつけが文字通り傷だらけの背中。

・こんなに見た目の情報量が多い人間はいない。

・プロレスは勝てばいいというものではないし、デスマッチは危険であればいいというものでもない。

・危険なことをやって、実際に血を流して、それでも紙一重のところで致命傷を避ける。どこまでがOKで、どこからがNGなのかが全くわからない。

・それがプロの仕事だとは言えるんだけど、他ジャンルでここまで直接的に体を痛めつけているプロがいるとは思えない。

・とにかく過剰で過激で血まみれの現場でも、そこには確かに表現の巧拙はあるし、一歩間違えば死ぬ状況だからこそ伝わってくるものもある。

・串で頬を横に貫通させたまま試合するの、ほんと痛々しくてイヤ。

・ホームセンターで凶器を物色している様子は映画『レスラー』を思い出させる。ほんとにやってるんだ。

・女性用カミソリ「ビューティーM」を「ビューティーマーダー」と呼んで、ビューティーMを模した大きな板にたくさん貼り付けた凶器。

・見ているだけで痛々しく、かわいらしくもあり、どういう感情になったらいいかわからなくなる。

・デスマッチやるような頭のおかしい人って世の中にそんなにいないから、試合中でも他のプロレスやスポーツと比較して仲良さそうに見える。同好の士という感じ。

・映像にも映っていたけど、筋肉が取れたりもするようだから、紙一重と言っても、ちょいちょいそのラインを越えてしまうこともある。怖い。

・自分が何か創作するときは、こういう人にも負けないように意識しなきゃと思うけど、だいぶん自信ない。

(U-NEXT)

▼本編でも取り上げられている試合について、ライターの橋本宗洋さんの記事。
濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER/カリスマ葛西純「世の中は無駄な血を一滴も流すな」 頬を串刺し、人間ダーツ…それでもデスマッチが“ただの残虐ショー”ではない理由(NUMBER WEB )

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大阪府立岸和田高等学校『オドリ ・ バリデ ・ ジュー』

2023-12-11 02:23:00 | 動画で演劇を見た(観劇三昧以外)

大阪府立岸和田高等学校『オドリ ・ バリデ ・ ジュー』(OPENREC)

2023/12/10

演劇部の高校生たちが、オーディションに参加する地下アイドルを題材にした演劇作品を作ろうとするがなかなかできない話。

一割くらい声が聞き取れない。個人差は多少あるものの、ほぼ録音環境の問題と思われる。

オーディション司会者がよりうるさくて聞き取りにくいので、パワハラ感が増している。

聞き取れたところを何となく頭の中でつなげて話を理解しようとする。

脚本ができなくてギスギスしているあたりはこういう話の定番だけど、「手伝えることがあったら~」という言葉の欺瞞性を指摘しているのは少ないような気がする。

とても内省的な話で、どうして演劇部を続けているのか、どうして演劇をやっているのか、巷の多くの演劇部員が悩んでいるようなことを真正面から受け止めている。

決めポーズが四人バラバラなのに、それぞれにこだわりを感じる。みんなアイドル好きなのか。

身体表現が不得意な感じもしなかったし、せっかくだから一曲披露してほしかったかも。

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野村有志監督『さようなら』(2022年)

2023-12-09 20:38:24 | NETFLIX/PrimeVideo/UNEXT/Apple TVで観た

映画『さようなら』予告編その1

2023/12/8

・淡路島の小さな工場で、現状をそこそこ受け入れている社員柴田が、現状に満足できない社員たちによる犯罪計画に振り回される話。

・見ていると、昔、自分が出稼ぎで工場勤務していたころを思い出してしまう。

・コミュニケーション能力の低いおじさんたちが集まっていて、それゆえにギスギスしていた。

・あの狭い社会で関係性が固定しているのはつらい。

・そんななか、多少不愉快な思いをしていても、なんとなく受け流せる柴田のような人間も実際いる。生々しい。

・不快な職場環境描写とは裏腹に、演劇としての会話劇の面白さをうまいこと映像に移植している。

・会話の良さを軸に、見ている人間の意識を先取りしていくようなシーンの繰り返しも心地いい。

・加えて映像なので各々の表情がくっきり見える。いぶかしげな柴田と、はにかむ末田が好き。

・ママが何を言われても全く動じない。鉄壁。どんだけの修羅場をくぐっているんだ。

・だからこそ、後半の変化も効いてくる。変化というか、メッキがはがれていく。

・変化はママだけではなく、みんなそれぞれ少しずつ変化していく。

・変わりたい末田もクライマックスに向けてしっかり変わる。いい方向かどうかはわからない。

・別に変わろうとしていない柴田も変わる。

・時計を受け取るところ、作中唯一の優しさが垣間見えてほっとする。

・社長の替り目は怖い。念入りに積み重ねられた前フリが効いている。

・夜の暗いシーンが多いけど、照明の妙で見えにくいことはない。むしろ、色味の付いた照明が登場人物に当たっているシーンは、輪郭部分が差し色のようになって美しい。

・まさかオパンポンダンスまで見られるとは思わなかった。

・監督兼柴田役の野村有志さんは、どちらかというと柴田より末田のほうに近いような感じがする。

・そうじゃなきゃ映画監督なんかできないと思う。

・最後のオチは関西人でもないのに「そんなわけあるかい」とツッコんでしまいそうになった。

・とても生々しい話ではあったけど、最後の最後でこれは映画なんだと我に返った。

(PrimVideo)

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「旭山動物園」

2023-12-07 00:02:23 | 今月のソロ活

2023/12/4

・行動展示で全国的に注目されて以降、いまだに行ったことのない北海道屈指の有名観光地についに行く。

・開園時間にあわせてバスに乗る。平日にも関わらず満席。途中バス停にいた人の乗車を断るくらい、立錐の余地なし。外国の人が多い。

・一通り園内を見てまわったものの、滞在時間が決まっていたので細かい解説まで読む余裕がない。2時間半は短い。

・主にペンギン館、レッサーパンダ、爬虫類館の三本立て。

・ペンギンはキング、ジェンツー、イワトビ、フンボルトの4種類。数が多く、敷地も広い。

・うっすら雪の積もった岩肌をヨチヨチ歩く様子と、最低限の動きで縦横無尽に泳ぎ回る水中のギャップ。

・もともとペンギンたちは集団で歩く習性があること、人をあまり怖がらないとの解説があり、ペンギンウォークが単なる観光客向けの見世物ではないことを知る(時期的にやってなかったけど)。

・風太君で有名になったレッサーパンダは餌やりタイムで解説が始まる。

・レッサーパンダ歴5年の飼育員の方の語り口が楽しく聞き入ってしまう。

・今までの水族館やクマ牧場で聞いてきたような万人受けするような話し方ではなく、話し慣れしたテンポの良い語り口、時には敬語丁寧語を省略するぶっきらぼうで挑発的な言い回し。漫才で淡々としゃべるタイプのボケ担当を思わせる。

・自身のレッサーパンダ愛を主張しつつ、レッサーパンダをただかわいいと言うだけのライト層には厳しい。

・脱走の心配への回答、オス同士だと非常に攻撃的になるという一面、自身のふくらはぎをかみちぎられたという咬筋力エピソード。知識欲も満たしてくれる。

・腹黒(見た目)もしっかり覚えることができた。

・爬虫類館は、せっかくだから入っておこうくらいの気持ちで入ると、床の通路にアオダイショウが落ちている。

・実際には死角になったところに飼育員さんがいたんだけど、本当にびっくりした。

・服装がやや違っていたけど、多分レッサーパンダと同じ人が解説してくれる。

・アオダイショウを体にまとわりつかせながら、旭山動物園の理念、生餌を与えること、それを見せることの意義。

・その話も面白く、そして思っていたよりも長く、ほぼ時間切れになってしまった。

・一回じゃ無理だった。また行きたい。

※腹が白いの、ほんとに保護色になっているのかな。

※画像の枠外に餌を持った飼育員さんがいる。

※有名なシロクマの飛込は見られなかった。

※ハシブトカラスまで展示されている。

※びっくりはした。(写ってないだけでカドの裏に飼育員さんはいた)

 

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アリエル・ドウフマン、飯島みどり訳『死と乙女』

2023-12-06 23:48:34 | 読書感想文

2023/12/5

・弦巻楽団の公演を見て、解釈で気になったところがあったので、別の訳者の文庫本を購入する。

・解説が充実している。戯曲より長い。

・あらためて読み直すと、やはり最後のほうのパウリナ(ポーリャ)の告発が鬼気せまっている。

・日常から地獄への移行があまりにもシームレスで、その瞬間、彼女が恐怖を感じることすらない。

・おそらく、いろんな社会においても平和を喪失する瞬間ってこんな感じなんだろうと思う。

・解説中の「もしも向こうが忘却を要求してくるとするならいったいあなたは許しを代価として支払うことができようか?」は、作中の夫婦関係もそうだし、ほかのいろんな場面で使えそう。許しの対価という考え方。

・気になっていたのは、ロベルトの顛末。

・ロベルトを演じた井上嵩之君くんの演技に引きずられたところもあったけど、演劇を見たときには彼は死んでいたと思っていた。どちらにも解釈できそう。

・戯曲を読むと、最後、パウリナはミランダのほうに視線を向けているので、少なくとも彼女には見えている。

・でも、彼女が見たのは幻影かもしれない。

・解説内にも言及があって、このあたりの作者と演出の解釈が合わず、企画が頓挫したこともあったようだ。

・演出は白黒はっきりさせたいとし、作者はオープンエンドにこだわった。

・やはり死んでいる可能性もナシではないようだ。

・本来、悪人を裁くのは社会のシステムに任せるのが一番いい。

・社会のシステムで裁けないなら、自分で裁くしかない。でも、やっていることは私刑。

・比較的、社会が安定している今の日本にいると、裁判所や警察のやることが正義だと思いがちなんだけど、一度そのシステムを失うと元に戻すのが大変。

・その境界線は自分たちが思っているほど強くはないので、いつ日本がそうなってもおかしくはない。

・パウリアがそうだったように、その変化は劇的なものではなく、気を付けていないといつのまにか失ってしまうものなんだろうなと思った。

 

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弦巻楽団『死と乙女』

2023-12-05 10:53:21 | 演劇を見てきた

2023/12/3

・拷問による心の傷が癒えない女性ポーリナが、かつて自分を拷問した医師ロベルトに、彼女なりの方法で復讐する話。

・事実をもとにしたフィクション。三人芝居。

・彼女はその医師を拘束し、自白を迫る。

・その間、彼女の夫ジェラルドとひたすら激しく重苦しい口論が続く。

・膨大なセリフ量をものすごいスピードで繰り出していく役者さんの負荷を考えると、ホントにもうおつかれさまですとしか言いようがない。

・法的に裁けないとしても、ある人にとっては間違いのない真実だとわかることはある。

・少し前の映画『それでもボクはやっていない』を思い出す。確信しているのは冤罪だから逆なんだけど。

・観客として見ていると、彼女が狂っているのか、医師がとぼけているのかわからないバランスで進行する。

・特に序盤、拘束して自白を迫るという手口が日本の冤罪事件の取り調べと一緒で心配になってしてしまう。

・現実では十分な証拠がないと加害者の糾弾は難しい。

・本作はフィクションとして描かれているので、しっかり加害者を断罪することができる。

・真実を創作に隠すやりかたは色々応用が利く。

・パンフに書かれている、実際に起きたのほうの出来事を参照すると、驚くほど誰も罪に問われていない。認定された死者だけで2279名も犠牲になっているのに。

・本作は「死人に口なし」という、残念な現実の裏返しでもある。

・さらに残念なのは、生きていたとしても、愛する夫にまで正気を疑わるくらい、激しく主張しないと正当性を証明できないという矛盾。

・物言わぬ、言えぬ被害者がどれだけいたことか。

・本作では創作らしい機転で医師の嘘を確信する。もし拷問される機会があったら参考にしたい。

・ポーリアが拳銃を過信しすぎていてハラハラする。彼女にとっての命綱なのに、わりと隙があるように見えた。

・意図的な調整だと思うけど、夫の言いようがうっすらモラハラ気味なのも影響している。

・最後の医師のぬめっとした座り方。座った後は、無言でただひたすら夫婦を見つめる。

・被害者の奇跡的ながんばりにより断罪はなされたものの、憎悪の連鎖までは終わっていないという風に解釈した。

(12/2 コンカリーニョ)

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金子修介監督『ガメラ2 レギオン襲来』(轟音上映)

2023-12-01 13:52:11 | 映画を見てきた

2023/12/1

・巨大怪獣ガメラと人間たちが宇宙から飛来してきた怪獣レギオンを撃退しようとする話。

・TOHOシネマ、轟音上映初体験。せっかくなのでワイドコンフォートシートを選択。轟音効果は結構感じた。

・最初の舞台は札幌市。すすきの。まさに今見ている映画館の建物(当時はロビンソン。懐かしい)が粉々にされていて楽しかった。

・ここまで一地方都市にスポットを当ててじっくり描いている映画は多くないと思う。

・たしかに「TOHOシネマズすすきの」でのこけら落とし的な上映にはふさわしい(ただ仙台の人は複雑かも)。

・レギオンは札幌→仙台→東京と移動していく。だんだんスケールが大きくなっていように舞台を整えられていく。

・前作では若干のチープさが客側の安心感につながると思ったけど、今回は身近な場所が舞台になって、臨場感強め。

・いつもお世話になっている地下鉄で、運転手さんが襲われているのを見ると必要以上に悲しくなる。

・地下鉄が一世代前の型で懐かしい。

・すすきのと、青少年科学館や支笏湖との距離感おかしい感じもするけど、あまり気にならない。

・よく怪獣映画は人間ドラマとの相性が悪いという話を聞くけど、人間側のドラマは必要なくて、ありえない事態に遭遇した責任ある人々の関係性をきっちり描いていれば、十分なんだと思う。

・前回は人間たちが完全に足を引っ張っていたけど、今回はかなり人間側も貢献していた。

・行動している人たちに頭の悪い人がいない。意見が対立することはあっても、それぞれ理解できる範囲。

・ありえない事態に対して、必死で頭を使ったり、時には体を張って、しっかり事態終息に貢献している。

・「終わったらおごらせてください」という、ちょっとした掛け合いも好き。

・それはそれで大事ではあるものの、何事にも時間と手間のかかる人間の社会的な生き物らしさとは一線を画す、ガメラの存在が気持ちいい。

・有事のとき、大通公園はああいう風に使われるんだということを視覚的に見ることができた。

・なぜ生体兵器なのに亀をモデルにしてしまったのか。

・どうしてガメラは人類の味方をするのかという、見る側も気になる疑問に対して、学者が解釈を提示して終わるところ、無駄なエピローグもなく切れ味がよかった。

(TOHOシネマズすすきの)

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