仮タイトル

『超時空要塞マクロス』(初代)輝×未沙中心だが
美味しい所はミンメイが持って行く二次創作(SS)ブログ。

Still

2008-04-06 | メガロード編
だが、あれから輝の動きは無く、結局またひとりでパーティーに参加する事となってしまった。
「なあに?輝はまたボイコットしてんの?」
ミンメイがまた呆れ返っている。
「ん、もう。公式の場なのに、艦長の夫だって自覚無さ過ぎよぉ!未沙さんも甘やかしてないでガンガン我侭言えばいいのに!」
「でも、私が任務放棄しろなんて言えるわけ無いじゃない」
「これも任務だって脅かしてやればいいんだわ!…未沙さん?顔色悪いけど大丈夫?」
冗談めかしながら輝の事を怒っていたが、元気の無さに加えて青白い顔の未沙を見てミンメイは声を小さくした。
「え?あ、大丈夫よ。ちょっと…疲れているだけだから」
最近だるさが抜けずにいる。
頭がぼんやりして仕事がまともに手につかない時もあった。
「新年明けましておめでとうございます。艦長」
未沙の心臓が跳ねた。
「…おめでとうございます。市長」
できれば顔を合わせる事はしたくなかったが、こういった席では仕方が無い。
市長は相変わらず落ち着き払っていて、あの時の行為をどう思っているのかが読み取れない。
「おめでとうございます、市長」
「ミンメイさんも、新しいアルバムの発売おめでとうございます」
「ありがとうございます。聴いていただけました?」
ミンメイとの挨拶を交わしている間も未沙は気が気ではなかった。
「もちろん。どの曲も素晴しかったですが、私が一番惹かれたのは『白い狂気』ですね」
「恐れ入ります。でもあの曲は裏声使った歌だからちょっと複雑かしら?」
「おや、そこまで深く考えておりませんでした。失礼」
軽く頭を下げながらも市長は微笑んでいた。
「いやだわ、冗談よ」
ミンメイも笑いながら受け応える。
「艦長はいかがでしたか?」
市長に話を振られて戸惑った。
「え?わ、私、ですか?…そうですね…『Still』…かしら」
「『Still』かぁ、あれ出されるとちょっと照れるわぁ」
ミンメイが恥らう仕草をとる。
「…歌手になりたくて色んな事にチャレンジしたわ。ピアノにバレエ、ヴォイスレッスンも受けた。あの頃は、夢ばかりみてた」
未沙も少女の頃を思い出していた。

 15の頃
 明日になれば世界を動かせるほどの
 愛を手に入れられると思ってた

思っていたのに、ライバーは死んでしまった。
「艦長?どうされました?」
感傷に浸っていた未沙は市長の声にハッとした。
「あ…ごめんなさい、ちょっと熱っぽくて頭がぼうっとするものだから…」
「未沙さん、今日はもう帰った方がいいんじゃない?」
ミンメイが心配そうに顔を覗き込んだ。
「そう、ね…そうさせていただこうかしら…」
「私がお送りしましょう。今玄関に車を持って…」
「いいえ!」
市長の言葉をさえぎって、強く送迎を拒絶した。
「いいえ、大丈夫です…ひとりで帰れますから」
「…では玄関までお送りしましょう」
市長がパーティー会場の出入り口へと体を振り返らせたとほぼ同時に、未沙の目の前が真っ暗になった。
「?!未沙さん!!」
倒れる未沙の身体に、ミンメイの腕も届かなかった。

『一条中佐!至急ブリッジまで連絡ください!繰り返します!一条中佐!大至急ブリッジに連絡してくださいーーーっ!』
艦内アナウンスの声は大きいばかりか、甲高く、誰もが驚いた。
待機所にいた輝は受話器を取り、ブリッジへの内線番号を押した。
『一条中佐ーーーーぁっ!』
艦内放送の声と同じくらいの大きな声で、他の隊員達もびっくりして目を剥いた。
「その声はメグミか?!うるさいぞ!」
負けじと輝も大声を出した。
『中佐!艦長が、艦長が倒れて病院に救急搬送されたって連絡がーーー!』
メグミの声は悲鳴に近かった。
---え?
聞き耳を立てるつもりはないが、自然と入ってくるメグミの叫びに隊員達も愕然とした。

「すみません、お騒がせしてしまって…」
未沙はベッドの中で謝った。
「いいんですよ。すぐ気がつかれたんでホッとしました」
「大丈夫?未沙さん。気分悪くない?」
市長とミンメイが付き添っていた。
「大丈夫よ。ありがとう、ミンメイさん」
笑顔で答えるが、まだ顔が青白い。
「気がつかれましたか?艦長」
一人の男性医師が病室に入ってきた。
「あ、はい。すみませんお手数おかけしました」
身体を起こそうとする未沙を医師は「ああ、横になっていてください」と止めた。
「2日程入院して安静にしてもらいますよ。大事な身体なんですから」
医師は微笑みながら言った。
「え?」
その言葉の意味をすぐには理解できなかった。
「おめでとうございます、艦長。検査で胎嚢が確認されました。心拍も聞こえてましたから5週に入ったくらいでしょうか」
---え?
一緒に居た市長とミンメイも、驚きを隠せなかった。
「それって、もしかして赤ちゃんが出来たって事ですか?」
未沙の代わりにミンメイが問いただした。
「はい。私は産婦人科医師のベンジャミン木村と申します。艦長の担当医になりました。これからよろしくお願いします」
木村医師は未沙の顔を覗き込むように頭をさげ、穏やかに笑いかけた。
「は、はい!…お願いします」
まだ今ひとつ実感が沸かない。
「うわぁ!未沙さんおめでとう!」
ミンメイの未沙の手を握って屈託の無い笑顔を見せた。
市長は、ただ黙って二人を見ていた。
「ありがとう、ミンメイさん…」
---赤ちゃん…?
不思議な感じがした。
---私の赤ちゃん?
自分のお腹に出来た、新しい命。
---輝の、赤ちゃん…。
じわじわと喜びが沸いてきた。
自分が母親になるとこいう事をこそばゆく思い、未沙は照れ笑いをする。
「あ、未沙さん、ようやっと笑った」
「え?」
「クリスマスパーティーからずっと、未沙さん暗い顔してたから、心配してたけど、やっと笑顔見せてくれた」
失言した事もあって、ミンメイはずっと気に病んでいたようだった。
「ミンメイさんたら…」
市長は目を閉じ、ゆっくりと静かに息を吐いた。
まるで今まで息を止めていたかのように。





Minmay's song:「Still」


9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
あとがき (作者)
2008-04-06 21:09:37
元ネタ(おい)は11と16と23なんですよ。
惜しいな~(なにが…)
で、やっと未来ちゃんが出来たわけですが、『クムイウタ』書いてる時から妊娠週期表とにらめっこしてたですよ…。
「この辺りでやったとして、そうするとこの辺りにははっきりわかるわよね…」と。健忘症だから一日一回見ないとすぐ忘れちゃったり(爆)
でもマクロス大映ドラマはまだつづくです。
返信する
祝 妊娠 (理沙)
2008-04-06 22:01:10
ベンジャミン木村はおもろい…
返信する
士官室ベイビーですか・・・ (もか)
2008-04-06 22:57:49
輝もいよいよ親父かぁ・・・なれるのか?
まさかヤリ逃げでは!?未来ちゃんの運命やいかに!!
大映ドラマは1クールじゃ終わりませんねっ!
次は出生の秘密か?赤ちゃんの取り違えか?まさか、未来ちゃん不良少女に!?
返信する
お久しぶりです (kirisima)
2008-04-06 23:09:06
お久しぶりでございます。ついに未来ちゃんが満を持してのご登場というわけですね。今後の展開がとても楽しみです。頑張って下さい。
返信する
寝るのでレス (作者)
2008-04-06 23:41:00
>理沙さん
 もう、名前考えるの面倒くさくて高校時代の先輩のあだ名にしました

>もかさん
 はい。士官室です(きっぱり)
 そのうち未来ちゃんは積み木をくずします!
 あ、これは大映じゃなかった(そういう問題じゃないって)
 「私はドジでのろまなモンスターです!」とか言い出すのだろうか…。
 って、モンスターに失礼な!(一人ボケつっこみ)

>kirisimaさん
 お久しぶりです。
 未来ちゃん来ました。ついに来た。
 士官室で
 来たーーっ!(爆)
返信する
祝・ご懐妊 (いろは)
2008-04-07 20:56:55
きたきた~

どう出る輝。

ベンジャミン木村さんにお会いしたい・・・
返信する
>いろはさん (作者)
2008-04-07 23:49:49
←ベンジャミン木村

もんちゅたん来る?もんちゅたん(わくわく)
返信する
Unknown (いろは)
2008-04-08 21:11:26
3機ほど出撃命令出したわ。もんすた
返信する
迎撃用意! (作者)
2008-04-08 21:57:45
サッ( ゜Д゜)⊃旦~旦~旦~

あ、もんすたの操縦士って三人だからもっとお茶の用意しないと…。
返信する