仮タイトル

『超時空要塞マクロス』(初代)輝×未沙中心だが
美味しい所はミンメイが持って行く二次創作(SS)ブログ。

Again

2008-04-08 | メガロード編
「それではゆっくりと休んでくださいね。初期は安静が一番ですから」
明日、もう一度検査をする事を伝え、木村医師は病室を出て行った。
「8月か9月には輝もパパになるのかぁ。男の子かな?女の子かな?でも未沙さんの子供ならどっちでもきっとカワイイ子が産まれるでしょうね」
ミンメイはベッドに肘をつき、まるで自分の事のように目を輝かせている。
ノック音が聞こえたのはちょうどその時だ。
「はーい」
答えたミンメイの声は弾んでいる。
やってきたのは輝だった。
「ミンメイ?どうしてここに…?」
ミンメイの隣に市長の姿を見つけると、輝の頬は強張った。
「どーしてじゃないでしょ!アナタこそ未沙さん一人でパーティーに参加させて何してんのよっ!」
何も知らないミンメイはいつもの調子で輝につっかかった。
「…何って、仕事に決まってんだろうが」
少し怒っているような表情しているのは、エスコートしなかったのを言われた所為だと思い、ミンメイはあまり気にしなかった。
「それよりこっち来なさいよ、輝。未沙さんが話したい事あるんですって」
掌を上下に振り、輝をベッド近くに招いた。
「ミ、ミンメイさんっ」
自分でさえ今知ったばかりなのに、輝にどう告げようかと未沙は焦った。
---今更話しなんか…。
思いつつもミンメイの手前、行かざるを得ない。
「…なんだ?」
仏頂面をしたまま未沙を見下ろす。
「あ、あのね…私もさっき聞かされたばかりなんだけど…」
毛布で照れる顔を半分隠した。
「…お腹に赤ちゃんがいるって…5週目だって」
---え?
輝もすぐには理解出来ず、呆けた顔をしてしまった。
「秋にはパパになるのよ、輝」
---子供?俺の…?
「おめでとう、輝」
ミンメイの声にやっと我に返り、隣に顔を向けると、ミンメイの後ろに市長の姿が目に入った。
---…俺の?
市長と目が合った。途端、あの時の事が甦り、疑いが輝の脳を侵し始めた。
「どうしたの輝?あんまり突然でビックリしたの?」
この報告を一番喜ぶであろう人物が、難しい顔をしているのをミンメイは不思議に思った。
「……俺の、子供?」
やっと口を開いたが、低い声だった。
「そうよ、もっと嬉しい顔したらどうなのよ」
なかなか笑顔にならない輝に首を傾げる。
一度市長を睨み、顔を未沙の方へ向きなおす。
未沙は子供が出来た事を喜んで、笑顔を見せてくれるだろうと期待していた。
だが…。
「そいつは、本当に俺の子供なのか?」
口端を歪ませて出た言葉は、未沙の胸を射抜いた。
「なっ?!」
驚いてミンメイは立ち上がった。
「何言ってんのよ、輝っ!当たり前じゃない!」
「当たり前?相手が俺一人なら、確かにそうかもしれないがな」
輝の怒りの目線の先には市長がいる。
「輝?」
どうして輝が市長を睨んでいるのか、ミンメイはまだ把握出来ない。
「…俺は、他人の子供を育てられる程心の広い男じゃない」
自分の子供だと信じたい気持ちと裏腹に、口から出てくるのは悪辣な言葉。
「輝っ!貴方の子よ!…う」
訴えながら未沙は起き上がろうとしたが、眩暈がひどくて頭を上げる事も出来なかった。
「未沙さん!駄目よ、静かにしてないと!」
ミンメイは肩に手を添え、毛布をかけなおす。
「子供が出来れば全部チャラになると思ったのか?未沙」
喜ぶどころか労わろうともしない輝にミンメイは苛立ちを感じた。
「いい加減にしなさいよ!輝!」
「…」
輝は黙って身体を翻し、病室を出て行った。
「ちょっと!輝!」
「私が行きます」
立ち上がろうとしたミンメイの肩を押さえ、市長が後を追った。
「…なんなのよ…一体なんなのよ!?」
事情が上手く飲み込めず、ミンメイはうろたえるばかりだ。
「…ミンメイさん」
未沙はぼんやりと天井を見つめている。
「なに?未沙さん、気分悪い?」
呼ばれてミンメイは慌てて未沙を振り返った。
「ううん。でももう今夜は、一人にして欲しいの…」
「未沙さん…。…大丈夫?」
「大丈夫よ。…お願い。一人にして…」
弱々しい声だった。
「……わかったわ。身体大事にしてね」
心配ながらも、何も言えないミンメイはその場を立ち去るしかなかった。
静かになった病室で、未沙は瞳を閉じた。

輝と結婚して、世界を動かせるほどの愛を手に入れたと想ってた。

---でも諦めない…。この子がいるんだから…。
もう一度優しく名前を呼んでくれる日が戻ってくる事を、私は諦めない。

私は夢を見ている。
そう、何も持たずに。
まだ夢を見ている。





Image music:「Again」 and 「Still」


7 コメント

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あとがき (作者)
2008-04-08 21:54:56
鬼輝。もしくは黒輝の巻。
「素直じゃない未沙」から「素直じゃない輝」と逆転の発想してみました。
でも「しぶとい未沙」は健在だな(爆)
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鬼~! (もか)
2008-04-08 22:42:34
輝ひどすぎ・・・計算すれば思い当たるだろうに・・・
未沙も開き直ってシングルマザー宣言でもしてみたらいいのに。
押してダメなら引いてみる。最終回のあの作戦をもう一度!
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Unknown (にゃん)
2008-04-09 00:45:24
我が家には猫が8匹おります。
その内、2匹は私と一緒にベッドで寝ております。
専用のまくらもございます。
ちゃんと仰向けで布団から顔だけ出して寝ております。
その姿はきっととても面白いと思います。

月の猫の食費、3万円也(涙)
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Unknown (作者)
2008-04-09 20:53:22
>もかさん
 ふふふ。
 もともとこの鬼輝書きたさにメガロード編始めたのさ…。
 一番の鬼は私かもしれない(←むっつりS)

>にゃんさん
 うわお!にぎやかそうですね!
 仰向けで顔だけ出して…わかります(笑)
 腕枕も好きですよね、ヤツら。
 ウチのは時々首枕を要求してくる。苦しいったら…。

3万円は…私のお小遣いと一緒だ…
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ミャ~ (kirisima)
2008-04-09 21:08:13
おおっと、予想だにできない展開にびっくり。いったいどうなってしまうのでしょうか?とてもたのしみです。私の家には現在猫が4匹います。(一時期10匹いました。みんな養子に行ったり出てったりしました。)そしてその内2匹は半ノラ。家の猫はこたつに入っても丸くならずに上半身を出して寝たりします(笑)
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辞職勧告 (どこかの誰か)
2008-04-09 22:02:49
ちょっと余計な口出しをしちゃいますけど、普通に考えたらこの市長さん、このあと当然辞職ですよね?市長という立場にありながら、他人の女房に軽々しく手を出したというのも言語道断ですが、もっと悪いのは艦の安全を司る艦長を滅茶苦茶動揺させたということ。これは艦の指揮系統を混乱させ、艦と市民の安全を脅かす危険な行為です(動揺した未沙が勤務中に思わぬ判断ミスをしないという保障はありません。)。自分の立場も他人の立場も全くわきまえないウルトラ級のKY市長だなと思いました。これだけのことをしておいて、なおも市長職に留まるというならこの市長の心臓にはきっと剛毛が生えているのでしょうね。
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Unknown (作者)
2008-04-09 23:53:01
>kirisimaさん
 そういう事でしたら、ウチも一時期14匹いました。
当時飼っていた2匹のネコが同時に出産して、里子に出すのに四苦八苦でしたよ…。

>どこかの誰かさん
 ”あの”「マクロス」の「個人妄想小説」にそこまで熱くならんといてください(笑)
 モデル(『ミラージュ』のなほえ)が悪かったかな(だから他力本願寺って言ってるじゃないですか)

それよりも現実の日本国会議事見ていると「こんなもんに金(税金)払ってんのか?!」とムカツク作者でございます。
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