仮タイトル

『超時空要塞マクロス』(初代)輝×未沙中心だが
美味しい所はミンメイが持って行く二次創作(SS)ブログ。

UMUI(7)

2010-01-23 | メガロード編3
「ベンジャミンってファミリーネームは日本名だよねぇ。ハーフ?」
唐突に疑問をぶつけるミンメイ。
「クォーターです。母がイギリスとドイツのハーフで。父が日本人でした」
ニコニコと質問に答えるベンジャミン。
約束通り、新しいパティセリーに二人でお茶会を開いている時の事である。
「なんか…複雑なのね」
「ミンメイさんは中国ですよね?」
「うん。でも生まれも育ちも日本」
「そうですか。僕はカナダで生まれ育ったんですよ。面白いですね」
ベンジャミンが窓の外を見ると、ゼントラーディ人と地球人の夫婦が歩いているのが見えた。
「そして今度は異星人とのハーフが産まれてくる」
ベンジャミンが見ている夫婦をミンメイもちらりと見る。
地球人の奥さんのお腹が大きい。妊婦だった。
「生まれてくる子は男の子ですね」
「なんでわかるの?」
「優性遺伝というもので、どういう訳かゼントラーディ人の遺伝子の方が強くて、地球人との混血だとゼントラーディ人の性別…つまり父親がゼントラーディ人なら子供も男の子しか産まれないんですよ」
「へぇ…でもつまらないわね、そういうの」
ミンメイは濃い目のダージリンが注がれているカップを口元に運んだ。
「はい。だから僕は産み分け…と、いうか、男女どちらとも産まれるように研究をしているんですが…なかなか糸口が見つけられなくて」
ベンジャミンは困ったように頭を掻き毟る。
「ベンジャミンはすごいなぁ…ちゃあんとゼントラーディの人たちの事も考えてて…」
「何言ってるんですか。歌で多数のゼントラーディ人を味方にして戦争を終わらせたミンメイさんが」
かちゃ、と音をたて、カップをソーサーに戻す。
「私は…何もしてない。あの時はゼントラーディの人たちが音楽を知らなかったからに過ぎないもの。私は何もしていないし、何もしてあげられない…」
片手で頬杖をつき、俯いて伏し目がちになるミンメイ。
---私がいくら歌ったって、人種差別や偏見はなくならない。
ミンメイはいつかのニュースを思い出した。
ゼントラーディ人というだけで地球人と同じ働きをしたのに賃金に差別が出てる、と暴動が起こったというニュースを。
ゼントラーディ人が仕事に馴染めず、闘争本能がむき出しになり、暴れだしたというニュースを。
「私には何の力もないのよ」
「それでも、貴女には歌があるじゃないですか」
ミンメイは顔をあげた。
いつか輝に言われた言葉をベンジャミンにも言われるとは思っていなかった。
いや、それより今朝見た不思議な夢に出てきたベンジャミンを思い出し、既視感に一瞬背筋が寒くなった。
「…私が歌う事で何が変わると言うの?」
思わず真顔で口走ってしまった。
その様子に、いつもと違うミンメイを感じ取ったベンジャミンだった。

解析室では振動波を音に変える作業を行っている。
単純に音として捉えた場合、まず波型にして音階を拾えば良い。
だが今度は音階を拾った後の事に頭を悩ませる。
言葉を音として流しているのだろうか?
それとも音楽として流しているのだろうか?
そしてそれにメッセージはあるのか?
譜面をおこそうとしてもテンポがわからない。
今はただ、「音」という仮説の元に机上の空論がなされているだけだった。
メインブリッジの艦長席で未沙は相変わらず眉間に皺を寄せて考え込んでいた。
そこへブレンダがコーヒーの入った使い捨てカップをトレイに乗せて近寄ってきた。
「艦長、コーヒーが入りました、どうぞ」
「ありがとう…ブレンダ」
未沙はカップを受け取る。
「音…ですか。すると、発信しているのは艦長たちと同じ地球人ではないのですか?」
「いくら私たち地球人でも宇宙空間に音を発生させる事は出来ないわ」
実際、星間戦争でリン・ミンメイの歌をゼントラ艦に流したのはブリタイの戦艦経由だ。
「通信システムがなければ宇宙空間で音が聞こえる筈がない。だけど今回は何も無いのに音が聞こえる」
未沙はカップをホルダーに置き、口元に手をあてて考える。
「なんだか、懐かしいです」
「懐かしい?」
口から手を離してブレンダの顔を見る。
「ええ。あの星間戦争で初めてリン・ミンメイの歌を聴いた時のゼントラーディ軍に似てる気がします」
「そう…ね」
---『文化を持つ者』という威嚇なのかしら?
マクロスの例から言って監察軍のブービートラップかもしれない。
だが、監察軍の破船から音の発信源となる物が発見されたと言う報告はまだ、ない。
あの”音”を拾ってから一週間。
再び出現したという報告は、まだない。
監察軍の破船の調査もあって、メガロードは前に進めず、停留している状態だった。

護衛航空部隊棟の廊下を鼻歌交じりに歩く。
イワンはパトロール報告が入っているディスクケースの角でトントンと時々肩を叩いた。
「イワン隊長」
呼び止めたのはルージュ小隊の小隊長・李雅持だった。
「おう。なんだ?」
「一条隊長の所に行かれるのですか?でしたら隊長室にはいませんよ。さっき託児センターへ出かけたのを見ましたから」
「あ~。またかぁ」
イワンは肩を下げ、顔は上にあげて呆れ返った表情をした。
「あの”音”が発見されてから、艦長もまともに帰られてはいないようですからね」
「いっそのこと隊長室に連れて来ちまえばいいのに、なぁ?」
雅持はクス、と笑った。
「そんな事、奥さんである艦長にばれたら怒られますよ」


つづく


3 コメント

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Unknown (かりな)
2010-01-23 21:22:06
ベン&ミンメイの会話と場面転換の行間で1週間が過ぎています。

気にしない、気にしない。
一休み、一休み。
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拍手レス (かりな)
2010-01-25 21:11:44
>ゆばさん
落ち込み→立ち直り→(゜д゜)ウマーがウチのミンメイみたいっすねwww
てか、そんなパターンしか思い浮かばないのか、と自問自答orz

そうそう!コイツです!ありがとうございます!早速フォロー始めました@なほえぼと
作りかけのようでございますね。
もう、ずっと回ってる(1人で陶酔しながらべらべら喋り続けている状態)。
でもコイツを発見したという事は、ゆばさんもコイツのつぶやきを読んだという事でしょうか?
…何故か私が恥ずかしくなりますた。
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拍手レス (かりな)
2010-01-29 19:59:16
>yamatoさん
寒いですね。陽が暮れるとほんと冷え冷え。
日中との温度差が激しいです。
気をつけないといけませんね。
私もダイエットせなアカンと思いつつ、いつの間にか何か食ってるとかなので、こっちも気をつけねばなりません。
へぐしっ!
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