仮タイトル

『超時空要塞マクロス』(初代)輝×未沙中心だが
美味しい所はミンメイが持って行く二次創作(SS)ブログ。

Orgueil(6)

2007-09-12 | Orgueil
その日、グローバル総司令に伴って、クローディアは航空隊本部に来ていた。
彼女は総司令の秘書のような役職になっている。
グローバルは本部長との打ち合わせの為会議室へ入り、クローディアは待機休憩室でお茶を飲んでいた。
そこへ久しぶりに亡き恋人の後輩・一条輝が顔を見せにやってきた。
「お久しぶりね、坊や。あら?筋肉ついてたくましくなったわねー」
「そうでしょうか?そうだといいんですが…」
と、溜息交じりの返事をしながら向かいの席に座る。
「なんだか元気無いみたいね。誰かさんに甘える暇がないからかな~?」
半分冗談で懸念の声をかける。
「よしてくださいよ。今は女に現を抜かしてる暇はないんです」
大隊長らしい、立派な男のような返答にクローディアは少しばかり驚いた。
「…ふ~ん。ま、立派に大隊長として成長はしてるみたいだけど」
「だけど、何ですか?」
「恋人としては成長してないみたいねー」
飲もうとして持った、コーヒーカップが音を立てて再びテーブルの上に戻った。
「なな…何をいきなり」
顔を赤らめ、どもりながら問いただす。
「ノータッチ。なんですって?」
クローディアはストレートだ。
「いいじゃないですか、どうだって」
なんでもない素振りをみせているが、本当は未沙と二人きりの時間が欲しい。
彼女の髪に、やわらかい肌に触れたい、と思ってはいる。
あの時の胸の感触が腕に甦ってくる。
制服に隠されたふくよかな胸。
しかし輝はまだ自分を認めてはいない。
彼女にふさわしい男になるまでは、彼女を征服する権利などない、と。
きゅ、と唇を噛締め、テーブルの一点を見つめる。
どうやら彼は彼なりに思う事があるようだ、とクローディアも察しがついた。
そんな空気をぶち壊すようにキャシーが休憩室に入ってきた。
「あー!輝、いたいた!もーう、お姉さんクタクタよぉ!」
どっか、と隣の席に座り、輝のコーヒーを頂戴する。
「立ちっぱなしは辛いわー。ちょっと足揉んでくれなーい?」
と、輝の太ももの上に右足を伸ばして乗せてきた。
「中尉。僕は今、友人と大切な話をしている最中なんです。…足をどけてください」
さすがにこめかみを引きつらせながらキャシーを宥める。
クローディアは呆然とした。
「…一条君、これはどういう事かしら?」
一瞬、彼の心情を察してあげようとした自分が馬鹿だったと言いたげだ。
顔は微笑んでいるが眼が笑っていない。
「あら、ごめんなさーい!なぁに?輝の彼女ー?」
「まさか!」
二人は同時に否定の言葉を発した。
「誤解しないでくださいね、クローディアさん。彼女はキャサリン=スナイダー中尉です。ノンキャリのパイロット指導をしています。…父のスタントチームのメンバーの一人でした」
諦め交じりの疲れた口調でキャシーを紹介する。
「一条君のお父さんのって…じゃあ、ロイの…」
「あら?ロイを知ってるの?」
「キャシー。クローディアさんは…彼女は先輩の恋人だよ」
さすがにキャシーは真顔に戻った。
かつて仕事を共にしたロイ=フォッカーが戦死した事は、輝から聞いていたからだ。
『そうか…この人も…』
キャシーは一瞬淋しげな眼をし、右手をクローディアの前に差し出した。
「キャシーです。以後、見知りおきを」
クローディアは彼女の一瞬の表情を見過ごさなかった。
『なんだろう。今の顔…』
「クローディア=ラサールです。よろしくお願いします」
静かにキャシーの手を握り返す。
握手を交わした直後、再びキャシーはいつものおどけた顔になった。
「ったく、こんないい女を置いて逝くなんて、ロイも大バカねー!…で、何の話してたの?」
「なんでもいいじゃないですか。プライベートな事に干渉しないで貰えます?」
こういう場合、席を立つもんだろうが、と、ほとほと呆れ返る。
「何よ、ケチ!いいわ、クローディアさんに聞くから!」
「キャシー!」
「ねえねえ!コイツどうなのよ?彼女出来たかしら?」
「え?…あの」
「キャシー…」
「出来たとしても長く続かないでしょー。なにせこの子ったら女の子相手に飛行機の薀蓄垂れるだけでなーんにも考えない唐変木だから。昔ロイに紹介してもらった女の子にも呆れられたのよねー」
キャシーの勢いに飲まれっぱなしのクローディア。
話し出すきっかけを逃してしまっている。
輝は『誰かこいつを止めてくれ』と言わんばかりに頭を抱えた。
「一条君、彼女いますよ。とびっきりの彼女がね」
クローディアがウィンクを投げながら告げる。
「えっ!マジっ!ちょっと!なんでそういう事をアタシに黙ってたのよ!」
「うるさいなあ!いちいち報告する事じゃないだろ!」
「だってアポロにいた時は『振られたばかり』って言ってたじゃない!」
「その子とは違う人!」
「どの子!?」
『さすがロイの仲間…』と、クローディアは変な感心を持った。
「それは…っ!…その…」
勢いよく詰め寄るキャシーの問いに、顔を真っ赤にしながら言葉を濁す。
「吐け!吐かないとメガロード護衛航空隊隊員にあんな事やこんな事を言いふらすぞ!」
ちょっとそれは聞きたいかも、と思いつつ、照れて顔を真っ赤にしている輝をさすがに憐れとクローディアが替わりに吐いた。
「面識はなくても名前はご存知かもしれません。早瀬未沙少佐ですよ。キャシーさん」
「クローディアさん!」
「はやせみさ…早瀬…早瀬少佐……ん?…早瀬少佐って、メガロード艦長の早瀬未沙ぁ?!」
「キャシー…苦しい…」
襟首を思い切り握り締められて輝は窒息しそうになるのであった。




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1 コメント

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あとがき(6) (作者)
2007-09-19 23:21:56
伏線貼りまくり。
クローディアが「静」のアドバイザーならキャシーは「動」のアドバイザー、という事です。(どういう事だよ)
兄貴分であるロイがいないのでそれに替わる人間がキャシー。
マックスでもいいんだけどさ、ミリアとの馴初めが馴初めだけに、あまり説得力が出ないような気がしてね。
それにマックスもどちらかというと「静」な人間だと思うし。
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