Box of Days

~日々の雑念をつらつらと綴るもの也~ by MIYAI

John

2007年09月19日 | diary
 シンシアの『John』を読了。原題はこんなにシンプルなのに、邦題は『ジョン・レノンに恋して』という陳腐なものだったりする。どういうわけか、こういうことになるんだよな。

 ま、いいや。で、内容の方なんだけど、とても血のかよった本だと思った。僕自身が元々ヨーコに対してあまり好意的じゃない(というか、かなり懐疑的)というのもあるけど、正直、ヨーコがやってきたことや言ってることより、何倍も説得力があったし、心に響いてくるものがあった。本の前半は、ジョンとの出逢いとビートルズの成功が綴られ、読んでいてとても楽しい。後半はジョンのそれはそれはひどい仕打ちと離婚、そして、その後の長い長い時間のこと。読んでいてこちらの胸も痛くなってくる。でも、ジョンのことを嫌いになるかというと、そういうことはないわけで。ほんとにひどい奴なんだけどね。なのになんでだろう。その理由は、結局のところ、こういうことだと思う。シンシアの言葉からちょいと抜粋。

「ジョン・レノンのという人は、やはりかなり特別な存在だった。才能にあふれ、心に深い傷を負った、創造の天才。愛についての歌を、聴く者が心を焦がすほど情熱的に歌い、でもその一方で、愛すべき自分のいちばん身近な者たちの心を、まるで鋭利な刃物でえぐるように傷つける。わたしはジョンを愛してやまなかった。けれども、その愛のために支払った代償は、途方もなく大きい」

 つまり、ジョンは特別な人なんだと思う。ずるいっちゃーずるいが、もしそうなら、しょうがないっちゃーしょうがない。リンゴの言うように「ジョンはほんとにおかしな奴だよ。でも結局、僕らジョンのことが大好きだからね」ということになってしまうのだと思う。その点、ヨーコに対しては、「あーあーやっぱりねー。そういう女だよねー」と、僕なんかはすぐに思ったりするわけでね。
 
 結論:ジョンは特別だけど、ヨーコはそうじゃない。

 ジョンの死後、 ヨーコが作り上げていったジョン・レノン像に、僕はどうしても馴染めない。いつしかジョンのイメージ・カラーはきれいな白になっていた。でも、ジョンって白か?亡くなったばかりの頃は、黒とかそんな感じだった気がする(そういうアンケート結果を何度か目にしたこともある)。ジョン・レノン・ミュージアムの最後の白い部屋も、僕は好きになれない。ヨーコの匂いが強すぎて、あまりジョンらしくないと感じるからだと思う。だから、もしかすると、僕はこの本を読んで、少しほっとしたのかもしれない。

 こういう本が出るとよく、「これはあくまでもシンシア側から見たジョンだから」というまっとうな意見がどっかから聞こえてくるけれど、ここに書かれた内容には、それだけで済ますのはどうかと思うくらいのものがあると、僕は感じている。少なくとも、シンシアは正直になにかを伝えようとしている。なにが正しいとか、そういうんじゃなくて。そんな彼女の話が聞けてよかったと思っている。

 当然のことながら、ジュリアンの話もたくさん出てきた。この本を読み終わったとき、僕が聴きたいと思ったのは、ジョンの歌ではなく、彼の歌だった。『Valotte』しか持ってないんだけどね。