Box of Days

~日々の雑念をつらつらと綴るもの也~ by MIYAI

クイーン再び

2006年01月07日 | diary
 昨年の10月にさいたまスーパーアリーナで観たクイーンのライヴ。なんでも年末に、僕の部屋では映らない番組で(つまり地上波じゃないところで)放映されたそうで、えっと、僕が観た日の公演ではないのだけど(その翌日の公演なんだけど)、いいなーと思っていたら、親切な(ところのある)友人がDVD-Rに録画しておいてくれた。さんきゅーまいふれんど。で、昨日はそれを観たんだけど…

 いやーすごかった!ほんとに気持ちがいっぱいに詰まったライヴだったんだなぁと、改めて感動してしまったよ。

 実を言うとこのDVD-Rは、大変中途半端なとこ(“Teo Torriatte”の大ラス)から始まる。なぜか?これを貸してくれた友人は大の格闘技ファン。そして、年末のテレビと言えばやっぱり格闘技。つまり、クイーンのライヴと同じ時間帯に、どうやら彼の観たい格闘技番組が放映されていたらしく、(当然のことながら)彼はそちらを録画した。すると必然的に、(そして僕にしたら残念なことに)クイーンの最初の1時間を諦めざると得なくなったと。そういうわけ。もっとも感動的だった“Love of My Life”は、確か“Teo Torriatte”のひとつ前だったはず(だよね?)。あとちょっとだったんだけどなぁ。まぁ、しょうがないよね。後半観れただけでもよしとしよう。

 でも、途中からであれ、そして感動的な“Love of My Life”を観れなかったとはいえ、なんら問題もない。ほんとに素敵なライヴだったから。ブライアンのギターは彼だけの音を奏で、ロジャーのドラムもエネルギッシュだった。2人の細かい表情や動きなど、当日さほど近くはなかった僕の席ではよく見えなかった部分も、今回の映像でいろいろわかった気がする。そして、ポール・ロジャース。やっぱりイギリスが生んだロック・ヴォーカリストの最高峰のひとりだと思った(とにかく上手い!)。

 しかし、なんだかんだ言っても、このライヴを特別なものにしたのは数万人の観客の温かさだと思う。一緒に観に行った友達が終演後「幸せそうなクイーン・ファンを観れたのが嬉しかった」と言ってたけど、ほんとにそんな感じだった。みんなが声を合わせて歌っている。手を上げて応えている。ドラム・ソロ・タイムやギター・インスト・タイムでも、だれたりしない。生で観てたとき、例えば“Radio Ga Ga”とかは、ポール・ロジャースが歌った方がいいと僕は思ったんだけど、それは間違いだったのかもしれない。ポール・ロジャースが歌えば、確かにもっと締まったとは思うけど、それでもやっぱりロジャーが歌って正解なのだと思い直した。みんなのためにも、そしてロジャーのためにも。なんていうか、音楽にはそういうところがあると思う。

 そして、どう考えても奥の手を使った“Bohemian Rhapsody”。まぁ、やるからにはここまでやるっきゃないってとこまでやってて、で、これが大変な泣かせどころになっている。スクリーンに映し出される生前のフレディの姿。会場に響くフレディの歌声。これをあざといと言う人も確かにいるだろう。でも、残されたメンバーやファンが、ずっと抱えてきた悲しみを埋めるのに、ライヴという特別な場で、他にどんな方法があるというのか?そして、ここでの大合唱が純粋なものでないとどうして言えるのか?僕が問いたいのはそういうことだ。

 ポールがツアーで歌った“Here Today”と“Something”。ポールは言った。「会場にはジョンやジョージに特別な想いをもった人達がたくさんいる。そういう人と悲しい気持ちを共有するのは悪いことじゃない」。『Concert for George』を開催したクラプトンは言った。「ジョージのためになにかがしたかった。でも、これは自分のためでもある。こういう形で悲しみを表現する必要が僕にはあった」。

 長く同じ人を愛し、同じ音楽を愛してきた人達が、あの日、さいたまアリーナに集まっていたと思う。ステージの上にも、観客席にも。クイーンの音楽を人生の一部にした人達。到底言葉にし得ぬ感情が溢れ出し、会場を満たした夜。全員がそうだったとは言わない。それでもそういう人達がいたことは、このDVD-Rを観ればわかると思う。「幸せそうなクイーン・ファン」と彼女は言った。その通りだ。そして、そんなファンをもてたクイーンもまた幸せなバンドだと、僕は昨日改めて思った。

 僕は、あの夜、クイーンのライヴを観に行ったことが不思議でならない。それまで1枚もレコードを持っていなかったバンドなのに。でも、心のどこかではわかっている。いろんな偶然と(非常に個人的な)思惑が重なって、あの日、さいたままで足を運んだことに、そして僕をそんな気持ちにさせてくれたすべてのことに感謝したい。