Box of Days

~日々の雑念をつらつらと綴るもの也~ by MIYAI

Sea Side Woman Blues

2004年07月20日 | old diary
 昨日は地元で小さな花火大会があった。近所に住む人だけがお客さんのローカルなものだが、そんなのんびりとした空気が好きで、毎年楽しみにしている催しだ。仕事から戻って部屋でビールを飲んでいると、ドーンドーンというあの音が聞こえてくる。さっそく自転車に乗って見晴しの良さそうな場所へ。今年は近くの川にかかる橋の上から、夏の風物詩を楽しんだ。

 湘南には華やかな反面、夏の混雑や喧騒、汚れた海など、ネガティブなイメージもあるだろう。しかし、僕はこの土地が好きだ。湘南にはここだけにしかない独特の風情があると思う。長い時間をかけて培ってきた伝統と、60年代に生まれた割と新しい文化がうまい具合に融合している。だから、どこか保守的でありながら自由でもあるのだろう。それは海沿いの町が共通して持つおおらかさと無関係ではないと思う。

 僕は昔よく旅をした。おそらく行ったことのない都道府県はないだろう。まぁ、しっかりチェックしたわけじゃないけど。で、そのほとんどの土地を、僕は自転車を使って旅した。自転車の旅は自分でペダルを踏んですすむしかないので時間がかかるし疲れるが、それゆえに車や電車を使った旅よりも訪れた土地の印象は強く残る。そんな日本各地の風情を感じることは、僕の心に豊ななにかを確実に残してくれた。しかしそうは言っても、「ああ、ここでずっと暮らしてみたいなぁ」と思わせる土地というのは案外少ないものだ。

 僕が湘南に引っ越して来たのは、海の近くに住みたかったからだ。けれど、海ならどこでも良かったわけじゃない。その美しさで選ぶなら、もっと違う場所に行けばいいはずだった。それをなぜあえて湘南なのかと言えば、それはやっぱりここが僕にとっての海だからだ。埼玉のせまい部屋で自由な生活を夢見ていた頃、いつも頭に浮かぶ風景は、北海道でも東北でも四国でも九州でも沖縄でもなく、ましてや外国の海岸線でもなく、ガキの頃から親しんできた湘南の海だった。ここでのたくさんの想い出は、僕にとってひどく身近な種類の想い出であって、そのつながりの深さは旅先で見た海のそれとは比較にならない。きっと僕はそうした場所で暮らすことを望んでいたのだと思うし、その気持ちは今も変わっていない。