D9の響き

Guitarを肴につらつらと・・

Sunshower('77)/大貫妙子

2007-11-21 22:28:24 | vocalist
先月、大貫妙子さんのソロ1st&2ndの2作が、紙ジャケでCD化されました。
いつもお世話になってるmints lifeさんのお店“レコミンツ”でこれら2枚を同時購入し、めでたく本人の生サイン入りカードをも手に入れることが出来ました。
・・ブログやってて、ホント良かったです。(笑)

彼女のソロ1st作“Grey Skies”は“Suger Babe”時代のアウトテイク集的な雰囲気が大半を占めていたのに対し、本作“Sunshower”はまさに“クロスオーヴァー”の息吹が満載となるアレンジで埋め尽くされてますね。
本作リリース当時、フォークからニューミュージックの勃興に呼応するように、ポピュラー・ミュージックを支えるスタジオ・ミュージシャンの間ではインストゥルメンタル嗜好が次第に広まり、後にフュージョン・ミュージックと呼ばれるジャンルの夜明け前を迎えていました。

当時はまだ、ジャズでもなくロックでもないという曖昧なジャンルをさして“クロスオーヴァー”と呼び始めていたようです。
このムーヴメントはアメリカ本国でのシラケ具合に反して我国では異常に盛り上がってたようで、当時の邦楽に大きな影響を与えたバンドは数あれど、やはり“Stuff(スタッフ)”がその最右翼だったといえるのではないでしょうか。

この作品は、音楽的イニシアチヴを若き日の坂本龍一さんが握り、くだんのStuffのツイン・ドラムスの一翼を担ってたChristpher Parker(クリス・パーカー)を迎え、約3週間という極短期間に根性で仕上げたモノだそうです。
これがSteve Gadd(スティーヴ・ガッド)の方だったら、きっととんでもない状況だったにちがいないでしょうがネ。
今回の再発に際し大貫さん他が書かれてるライナーにも、その状況や経緯などが詳しく載ってますので、興味のある方はそちらをご覧ください。

で、参加ミュージシャンが、これまた凄い方々のオンパレード・・しかも当時全員20代だったそうです。

1.Summer Connection
大貫妙子(vo) 坂本龍一(pf) 今井裕(rhodes) 大村憲司(g-solo) 松木恒秀(g) 後藤次利(b) クリス・パーカー(d) 斉藤ノブ(per) 山下達郎(cho)

2.くすりをたくさん
大貫妙子(vo) 坂本龍一(pf) 大村憲司(g) 細野晴臣(b) クリス・パーカー(d) 斉藤ノブ(per) 中川昌三(fl) 山下達郎(cho)

3.何もいらない
大貫妙子(vo) 坂本龍一(pf,org,synth) 松木恒秀(g) 後藤次利(b) クリス・パーカー(d) 斉藤ノブ(per) 渡辺香津美(g-solo)

4.都会
大貫妙子(vo) 坂本龍一(rhodes,synth) 大村憲司(g) 細野晴臣(b) クリス・パーカー(d) 斉藤ノブ(per) 清水靖晃(s-sax) 山下達郎(cho)

5.からっぽの椅子
大貫妙子(vo) 坂本龍一(rhodes,synth) 今井裕(pf) 松木恒秀(g) 後藤次利(b) クリス・パーカー(d) 斉藤ノブ(per) 清水靖晃(t-sax)

6.Law Of Nature
大貫妙子(vo) 坂本龍一(rhodes,synth) 渡辺香津美(g-solo) 松木恒秀(g) 後藤次利(b) クリス・パーカー(d) 斉藤ノブ(per)

7.誰のために
大貫妙子(vo) 坂本龍一(pf,rhodes,synth) 原宏一(g) 細野晴臣(b) クリス・パーカー(d) 斉藤ノブ(per)

8.Silent Screamer
大貫妙子(vo) 坂本龍一(pf,org,synth) 松木恒秀(g) 後藤次利(b) クリス・パーカー(d) 斉藤ノブ(per) 向井滋春(tb)

9.Sargasso Sea
大貫妙子(vo) 坂本龍一(pf,rhodes,synth)

10.振子の山羊
大貫妙子(vo) 坂本龍一(pf,synth,marimba) 今井裕(rhodes) 松木恒秀(g) 大村憲司(g-solo) 後藤次利(b) クリス・パーカー(d) 斉藤ノブ(per)

【bonus tracks】
1.サマー・コネクション(single version)
大貫妙子(vo) 坂本龍一(kb) 鈴木茂(g) 松木恒秀(g) 田中章弘(b) 村上秀一(d) 斉藤ノブ(per)

2.部屋
大貫妙子(vo) 坂本龍一(pf,rhodes,synth) 鈴木茂(g) 吉川忠英(aco-g) 田中章弘(b) 林立夫(d) 斉藤ノブ(per)

3.荒涼
大貫妙子(vo) 松任谷正隆(kb,vo) 細野晴臣(b) 林立夫(d) 瀬戸龍介(aco-g) 斉藤ノブ(per)

この時期、大貫さんの音楽性というものは、少なくとも本人が自覚される以前の潜在的な姿にとどまっていたと思われます。
後のヨーロピアン嗜好へ移る過程で、非常に貴重な記録とも言えるかもしれません。
このあたりは本人も述懐されてるので間違いないとは思いますが、メロディ・メイカーとして光る部分が既に良く出ていると感じます。
プロデューサーの生田朗さんの手腕に依るところも多いのでしょうが、坂本龍一さんを中心とした当時新進気鋭の才能達を集結し得たという事実は、やはり彼女のカリスマ性が成せた業と言えるのではないでしょうか。
・・当時もそれだけ魅力的な存在だったんでしょうネ。

音に関しては、詩の世界とアレンジの乖離は否めない(・・#2なんて笑っちゃいますよね。)のですが、やはり大貫さんの声の質、あるいは微妙に不安定なピッチが妙に上手くマッチしてて、不思議な浮遊感を生んでて気持ちいい仕上がりじゃないかと思います。

坂本氏は完全にRichard teeに成りきってますしネ。(笑)

で、個人的に興味深いのは、まず渡辺香津美師匠の参加です。
2曲だけですが、明らかに他のギターと一線を隔する存在感を放ってます・・特に#3のソロは絶品でしょう。

そして、本題とはかなり反れますが、同じタイトル曲である本編#1でのクリスとボートラ#1での村上ポンタ師匠との音の差の大きさ・・ポンタ師匠を見直しました。
当時、クリスはガッドからの影響もあったのかも知れませんが、日本人ドラマーには真似できないハイ・レヴェルなルーディメントを組み入れた16ビートのダブル・ショットを自在に操っていました。
この作品をじっくり聴けばその辺が素人の私でさえ実に良く分るのですが、それ以上にボートラでのポンタ師匠のドラミングが何倍も凄いんです。
多分師匠がガッドと親交を深める前の時期だったと思うのですが、既にダブルどころかトリプル以上のショットや切れの鋭いアプローチがこれでもかちゅうくらい詰まってて、普通以上のクリスでさえ聴き劣りしてます。
“ビッグ・マウスなだけちゃうんか?”と、あなどってました・・ごめんポンタ師匠、やっぱアンタ凄いわ。(涙)


ちょっと脱線しましたが、ま、いい時代だったんでしょうネ。
日本人ミュージシャンだって、満更捨てたモンじゃなかったちゅうことです。


【レコーディング中の面々・・みなさんお若いですね(笑)】



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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
なつかしい! (桃猫)
2007-11-22 03:06:55
なんか、どんどん、日ごとに逆行していくような、懐かしさを覚える領域に分け入りましたね。かく言うわたくしめも、原点は、吉田美奈子であったりもします。当時、山口真文(コルゲン)や岡沢章、松木(和製エリックゲイル)、渡嘉敷(和製ガット)なんかで、プレイヤーズっていうバンドで、和製ウェザーリポート気取ってましたね。六本木ピットインで、よく聞いておりました。
レコード (WESING)
2007-11-22 18:28:31
大貫さんのアルバムはこれだけレコードを買いました。(URL)
最近はやたらとボートラ付きCDが出るけど、ボートラだけ集めたCDを出して欲しいです。
このアルバムのCDは持ってるし、2枚目を買うほどの金銭的余裕がないです。

昔、ポンタさんのライブをよく見に行ってる人から、
「ポンタさんのドラムは他のドラマーとは音圧が全然違う」と聞きました。
こんばんは (mintslife)
2007-11-22 23:42:56
お買いあげ、そして、ご紹介いただきありがとうございます。^^;
仰るとおり、大貫さんご本人も、このアルバムの参加ミュージシャンの技量を、べた褒めでしたよ。

この頃のポンタさんは、歌モノとしては少々叩きすぎな気もしますが(苦笑)、気持ち良いですよね~。
桃猫様 (elmar35)
2007-11-23 09:06:00
コメントありがとうございます。
この辺は桃猫さんのツボのようですね。
ムーヴメントの黎明期というのは、他の色んなジャンルでも凄く力が入ってて魅力的ですよね。
プレイヤーズって名前は聞いたことがあります。
スコヘンやバーリンのやつとは別なんでしょうね・・。
気になってきたので、探してみます。(笑)
WESING様 (elmar35)
2007-11-23 09:13:44
コメントありがとうございます。
既にCD化されてましたか・・でも多分音は変ってるはずですよ。(笑)
私も彼女の作品をLPで数枚持ってますが、仰るようにCDに買い換える余裕もなく悶々としてます。(涙)
香津美さんのライヴでポンタさんの凄さは一応認識してたのですが、聴き比べたことが無かったので、改めて違いが分った次第です・・機会があればボートラ入りも是非お聴き下さい。
mintslife様 (elmar35)
2007-11-23 09:20:08
コメントありがとうございます。
こちらこそご連絡まで頂き結構なアイテムまで頂戴し感謝しております。
あのインタビュー記事を読みながら、大貫さんの独特の言い回しの様子なんぞを想像しながら楽しませて頂きました。

最近不要CDの大量処分を考えておりますので、またよろしくお願いします。
Unknown (takaj)
2011-06-04 08:28:44
クリシェの頃からずっとファンです。
この初期2枚は実はずっと大人になって初めて聞くようになりました。理由は明快、ター坊のボーカルの質がこの後に変わるんです。抑揚を効かせないよにして歌うある種彼女独特の歌い方であり、それが基準だったんでどうも耳障りが悪かったんです。今は楽曲として聞いておりやはりというかいいもの作ってます、特に詩の世界観が素晴らしい。
Grは大村憲司の音色が好きなんですがこの香津美のもいいですよね。
今通しで聞いてますがちょっとくるものがあります。
takaj様 (elmar35)
2011-06-04 18:22:06
この作品は、やはりバックのメンツの色が少々濃すぎたかもしれないと感じてます。
でも、そんな中で女史の個性が一際際立っており、やはり只者ではないなと。(笑)
エヴァーグリーンな一枚ですね、ホント。