桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2005・6・25

2005年06月26日 | Weblog
S子と初めて会ったのは広尾で店を始めて間もなくの頃、だからもう6、7年前。当時彼女はまだ高校一年生。勿論一人で店に来た訳ではない。母親に連れられて来たのだが、この母親と云うのが変わっていて、店に男友達を呼んだと思ったら「桃井さん、娘をよろしくね」とS子を置いて男友達と帰ってしまうとんでもないことをする奴だった。母親が母親だからS子もそれなりに変わっていて、母親が出て行った後もなかなか帰ろうとせず、カウンターで参考書を拡げだす。仕方なく店が終った後、焼き肉屋に誘ったりして俺としてはその夜以来保護者の役割を演じさせられることになった。S子はその後某一流私大に合格して時々店に友達を連れて来る様になったが、一人で来る時は決まって失恋をした時や大きな悩みを抱えた時。そんな彼女が今日も12時近くに一年ぶりに電話して来て、今から行っていい?と聞く。土曜日は12時までだし、今日も店はイベントに続いて予約客も含めて一般のお客さんが結構入った為、Lちゃんと俺はヘトヘト状態。正直言ってS子が来店するのは少ししんどかった。それに相談事となると必然的に閉店後と云うことになり、若い女性客が俺と二人きりで店に残ることに厳しいチェックをするLちゃんの目もある。だからやんわり断ったのだけど、もうタクシーに乗っているとなると帰れとも言えない。そのことを告げたら案の定Lちゃんは不機嫌な顔。誰がこの厨房一杯になった汚れたお皿の洗い物をするんですか?と刺々しい。でも、事態は意外な展開を見せる。S子がカウンターに座った時は刺々しい視線を向けていたLちゃんだったが、しばらくして彼女の話に出て来る恋人(と言っても30歳近くも年上の男)が、Lちゃんの父親の同業者で、且つLちゃん自身もよく知っている人と分かり、彼女の目から刺々しさが消え去り、二人は俺を押し退ける様に女同士の会話に突入する。俺もきつねにつままれた様な気分だったが、二人も妙な思いだったに違いない。俺と云う人間を挟んで、S子の恋人とLちゃんの父親がつながってしまったのだから。他のお客さんが帰った後も二人の女の話は続く。途中まで洗い物を一人でやったけど、途中でダウンして俺も飲みだす。三時過ぎ二人を誘って深夜の六本木へ。カラオケボックスの中でも若い女二人の話は延々と続いていた。