わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

サンゴ礁再生に挑んだ実話の映画化「てぃだかんかん」

2010-04-24 17:38:49 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

Img262 養殖サンゴの海への移植・産卵を世界で初めて成功させ、07年環境大臣賞・内閣総理大臣賞を受賞した金城浩二さんと家族の足跡を映画化したのが、李闘士男監督の「てぃだかんかん-海とサンゴと小さな奇跡-」(4月24日公開)です。沖縄出身の金城さんは、98年に沖縄沿岸のサンゴの大規模な白化を目の当たりにして、軌道にのっていた飲食事業を人手に譲り、サンゴの養殖を仕事にすることを決意。さまざまな試行錯誤の結果、05年に、養殖して移植放流していたサンゴの産卵に成功したといいます。
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 映画は、この金城さんをモデルにした金城健司(岡村隆史)が、故郷・沖縄に戻って幼なじみの由莉(松雪泰子)と結婚するところから始まる。彼が久しぶりに潜った沖縄の海は、開発や温暖化の影響で、サンゴ礁が30年前にくらべて90パーセントも死滅。それを見た金城は、単独でサンゴの養殖と移植という試みに挑む。そして、移植技術の追求、学会からのバッシング、漁師との葛藤、産卵の失敗、莫大な借金、開発業者からの誘いといった多くの困難を乗り越えていく。映画では、この試練のくだりや、家族とのドラマが、やや感傷的に描かれているけれども、その自然保護・再生への努力には頭がさがります。
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 とりわけクライマックス、夜の海でのサンゴ産卵シーンが感動的です。李監督(「デトロイト・メタル・シティ」)は、この場面の撮影に苦労したとか。産卵時期は5月下旬から6月上旬で、夜8時から12時まで、このときは例年より2週間以上も遅れたという。毎晩、現場を見に行き、やっと撮影に成功したそうです。出演者では、不器用な金城の行動を批判しながらも温かく見つめる母親に扮した原田美枝子が、いい味を出している。沖縄の離島めぐりをすると、グラスボートでサンゴ礁や熱帯魚を見物できるけれども、そうした美しい自然を保護するためには、金城さんのような存在があるのだと改めて認識した次第。タイトルは、「てぃだ(太陽)」が「かんかん」照りという意味の沖縄言葉だそうです。


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