『英語屋さん』の宝箱

『英語屋さん』『英語屋さんの虎ノ巻』(集英社新書/電子書籍版)、『英語で夢を見る楽しみ』(財界研究所)の著者のブログ

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子ネコ生かし

2006-09-18 12:01:49 | 随想

 私の住む東京都内の古い一軒家にはネコが2匹、同居しています。「飼っている」ではなく「同居している」と書いたのは、彼らがどちらも自らの意志でこの家を選んで住み始めたからです。つまり、どちらもノラネコの出身。


 先輩の雌ネコはまだ小さかったころ、ノラの母ネコが連れてきました。その母ネコは、「この子をお願いします」とでもいいたげな表情でしばらく私の顔を見つめたあと、どこへともなく姿を消しました。子ネコのほうはしばらく軒先で暮らしていたのですが、前足が硬直して動かなくなるという大病を患ったため、動物病院に入院させました。


 後輩の雄ネコも、しばらく拙宅に遊びにきているうちに縁台の上で熱を出して寝込んでしまったため、これも入院させました。二匹とも、自宅に帰ってくるとすっかり家の中の生活に慣れてしまい、もう二度と外に出ようとはしません。


 このようにノラネコが多かったこの界隈も、最近ではあまりネコの姿を見かけなくなりました。以前、ノラネコが急増して近所でちょっとした問題になったときに、保健所とボランティア団体の助けを借りてノラネコの不妊去勢手術をしたおかげでしょう。外に出入りできる近所の飼いネコの多くも、そのほとんどが手術を受けているようです。


 ノラネコの姿を見かけない街というのも何か味気なくて寂しい気もしますが、飼い主がいない不幸なネコがやたら増えるのは、人間にとってもネコにとっても、けっして良いことではありません。ネコの不妊去勢手術は、特に都市の居住環境を守るためには、やむを得ない選択だと思います。


 たしか一ヶ月くらい前だったと思いますが、ある女性作家が日本経済新聞に「子猫殺し」というエッセイを寄稿して批判を招いたことがありました。タヒチ島に住んでいるというその人は、飼いネコの不妊手術をする代わりに、生まれたばかりの子ネコを殺して(昔の言葉でいう「間引き」して)いるというのです。


 彼女によると、もともと人間には動物の不妊手術をする権利も、生まれてから殺す権利もないのだから、自分はあえて生まれた子ネコを殺す方法を選んでいるのだとか。タヒチ島における彼女の生活環境はわかりませんし、彼女独自の死生観による考え方もあるのでしょう。批判を承知でそのような文章を寄稿した彼女、それを掲載した新聞社の判断をただ感情的に責めるのはどうかと思います。


 しかし、彼女の主張に対して、私はとても大きな違和感を覚えました。救う手段がほかにない場合ならともかく、そうとは思えないからです。ここ日本では、多くのボランティア(注)や地域住民が協力し合いながら、不幸な生命が生まれてこないようにしたり、生まれてきた子ネコの飼い主を見つけたりするといった地道な努力を重ねています。


 人の手が及ばない野生動物とは違って、イヌやネコはもともと人間の都合で生まれてきた愛玩動物。そのイヌやネコがこの世に生を受けた以上、彼らの生命をできる限り幸せのうちにまっとうさせてあげるのは、私たち人間の責任ではないでしょうか。


 


(注)そのようなボランティア団体のひとつに「ねこだすけ」があります。そのホームページでは、各地で行われている地域ネコ活動がよくわかります。また、ネコの里親探しのようなホームページもあちらこちらにあるようです。

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