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ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ロボジー

2012-01-08 18:43:16 | ら行

新春初笑いに絶対おすすめ。
そして
早くも今年の邦画上位決定――!(笑)

「ロボジー」88点★★★★

「ハッピーフライト」矢口史靖監督の新作です。


家電メーカー、木村電器の社員トリオ
小林(濱田岳)、太田(川合正悟)、永井(川島潤哉)は

社長から突然
「二足歩行のロボットを作れ」と命じられてんてこまい。

なんとかロボットを作り上げるものの、
お披露目を目前に、アクシデントが発生!

ピンチに立たされた3人は、
秘密裏にある計画を立て、一般向けのオーディションを実施する。

身長、肩幅、腕の長さなど
妙にキッチリ決まった応募基準にハマったのは
73歳の偏屈じいさん、鈴木重光(五十嵐信次郎)だった。

さて、彼らの計画とは一体――って、もうバレバレか?!


いや~最高!笑いました!(笑)

試写室もマジで爆笑の渦。

そのなかでも番長、笑いがカタカタと止まらずに
かなりヤバイ感じになってました(苦笑)


矢口監督の笑いはやっぱりツボだなあ。

とぼけていて、しかし独特で、
根底に「人のよさ」を感じさせるところがいい。


人間みたいに動くロボットのなかに
実は人間が入ってる――?!という

そんなのベタベタじゃん!という発想も

ん?でもいやまてよ?あるかもよ?と思わせる
この倒錯のリアルとギャグのバランスが絶品です。


しかもそれが老人で
老人のぎこちない動きが=ロボットになる、
喜劇のおかしみ。

いわば欺瞞の物語が、こんなに楽しくてよいのか?という(笑)


奇抜な発想をきちんとストーリーに仕立てて、
オチをつける才能と、

主旋律となるストーリーに
自然と「現代日本の姿」や「登場人物の成長」といった
副産物が立ち表れてくるのもうまいもんです。

主演の五十嵐信次郎とは
いわずとしれたミッキー・カーチス氏の別名。

彼のすっとぼけて、実に憎々しい(笑)じじい役と、
家電メーカー社の濱田岳氏、

そして
キーとなる“ロボヲタ”の女子大生役、吉高由里子氏の
アンサンブルが最高!

ぜひ劇場で笑ってください!

★1/14(土)から全国で公開。

「ロボジー」公式サイト
コメント (2)
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今日と明日の間で

2012-01-07 18:55:39 | か行

こちらもダンスについての映画。

美しいひとを見るのは
楽しいですねえ。

「今日と明日の間で」53点★★★

バレエダンサー首藤康之のドキュメンタリーです。

9歳でバレエに出会い、
15歳で東京バレエ団に入団。

モーリス・ベジャールとの出会い、
そして
古典から現代作品へ――という彼の軌跡を
彼のダンスをはさみながら綴った作品です。

バレエのドキュメンタリーでおもしろいのは
やっぱりダンサーの素顔が見えるとき。

ストイックな身体と精神を育む
その日常生活はどんなんなのだ?というのが
興味のあるところですが

本作でも
踊る前の入念なウォームアップの様子や
骨格標本の置かれたスタジオなどから
彼の「踊り」に対する考えが見えてくるのがおもしろい。


踊るきっかけになった大分のバレエスクールを再訪したり、
公演後にビールを飲みながら
仲間と語るリラックスした表情まで垣間見えるし、


ダンサーとして年齢を重ねるとはどういうことなのか、
それにともなう作品の選び方など
「なるほど」と思うことも多かった。

取材対象として、
彼はかなり“開いて”くれてはいると思います。

ただ「個人のインタビュー」として見ると
あまり深くまでは潜ってはいない。

もう少しテーマを絞って
悩みや苦しみなどに突っ込むなど、
表層的でない彼自身の素顔が見たかったな、と感じました。

まあ「彼を知るには時間がかかるわよ」と、
20年来のダンサーが言ってるから

そうやすやすとは、見せないんでしょうし
それが目的の作品ではないんだけどね。

映画のタイトルにもなっている
新作ソロダンス「Between Today and Tomorrow」の
椎名林檎による音楽が非常によかったです。

★1/7から東京写真美術館ホールほかで公開。

「今日と明日の間で」公式サイト
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ストリートダンス/TOP OF UK

2012-01-05 22:52:06 | さ行

ダンスものって、なーんか好きなんすよね。

「ストリートダンス」68点★★★☆

俳優とホンモノのダンサーたちを使い、
ドキュメンタリーではなく、
あえて青春ドラマにした映画です。


カーリー(ニコラ・バーリー)は
UKダンス選手権を目指しているストリートダンサー。

がんばって決勝進出を決めたものの
ある出来事から
チームはバラバラになりかけていた。

そんなときカーリーは
偶然、バレエ教師ヘレナ(シャーロット・ランプリング)に出会う。

練習場所も失い、困り果てていたカーリーに
ヘレナは意外な申し出をする。

「バレエ団のスタジオを使っていいわ。
ただし、うちのバレエダンサーをチームに入れること」

え?バレエとストリートダンス?
あり得ない!と思うカーリーだったが――?!


イギリスのオーディション番組で
あのスーザン・ボイルを退けて優勝したのが
ストリートダンサーたちだったことを
記憶している方も多いでしょう。

あのとき優勝したダンス軍団含め、
イギリスで人気のリアル・ダンサーたちが多数出演し、
ダンスバトルを繰り広げるドラマです。

ドキュメンタリーにすれば
もっとシンプルだったんだろうけど、

あえて女優を使い、青春ドラマ仕立てにしたのが
ひねり、という感じでしょうか。

展開や演出には正直、
バリバリにベタでチープなところがあるけど
(特にあの「マトリックス」静止手法、
360度ないのはチープすぎるのでやめて~!(失笑)


それでも
音楽やダンスはやっぱり気分を盛り上げてくれるし
それにバトルが加わればもう
ある意味、鉄板ってやつで(笑)

けっこう楽しみました、ハイ。


それにバレエ教師役のシャーロット・ランプリングの出番が
思ったより俄然多いのに驚いた!

そして彼女のスタイルと着こなしが
マジでステキすぎる。

背筋ピンとして、シャンとして
パンツスーツもシャツも、ワンピもビシッと着こなしてて
カッコよすぎ。
それ観るだけでプラス30点、いってます。

ぜひ、正月明け、なまりまくりの体に喝!という感じで
お楽しみください。

と、正月早々「バーレスク」見直しつつ
自分にも喝を入れる番長でした。


★1/7(土)から新宿バルト9、横浜ブルク13ほか2週間限定公開。全国順次公開。

「ストリートダンス/TOP OF UK」公式サイト
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パーフェクト・センス

2012-01-04 16:23:49 | は行

あけましておめでとうございます。
今年も番長と映画を、よろしくお願いいたしまする。

で、2012年1発目はこちら。

「パーフェクト・センス」59点★★★☆

ユアン・マクレガー主演の、静かなる終末SF映画です。

イギリス、グラスゴー。

シェフのマイケル(ユアン・マクレガー)は
特定の恋人を持たない気ままな独身男。

その日も、一夜限りの恋人を
明け方に部屋から追い出したところだった。

その同じ朝、
感染症の専門家スーザン(エヴァ・グリーン)のもとに
ある事例が持ち込まれる。

中年男性が、突然
「生きる意味が分からない」と泣き崩れ、嗅覚を失ったというのだ。

しかも、同じ症例が24時間内に
イギリス国内だけでなく
ヨーロッパ中で発生しているという。

新たな感染症なのか――?
それともバイオ・テロ――?

調査を進めるスーザンは、
偶然、マイケルに出会い――。


すべての人々が「ある病」に感染していく世界の無情と哀しみを、
恋人たちの姿に映した作品です。

やはり感染症の恐怖を描いた
ソダーバーグの「コンテイジョン」も
比較的静かな演出でしたが、

こちらは科学的な説明やリアリズムをも廃し、
より静かに、詩情豊かな演出で、
終末感を切なく描いている。


人間の五感=センスがなくなっていくという
おっそろしい病で
シェフなんかにはまさに致命的。

演じるユアンも
たびたび絶望しそうになるんですが、

しかし、彼はあきらめず、捨て鉢にならず、
なんとか料理を楽しむ方法を考えだし、前へ進もうとする。

どんなに悲惨な状況下でも、
人間はそう簡単には折れない、折れられないんだ、というのが
この映画の言わんとするところと思います。

終わりゆく世界で
なんとか温めあおうとする恋人たちの姿も情感たっぷりで


作り手の狙い通りに仕上がってると思うし、
映像も美しく、
アプローチも好きなんですが、

逆に驚きや意外性がないのが、うーん残念。

パニック映画と違うのはわかるんですが、
やっぱりもうちょっと真に迫る恐怖は欲しかった、とか。

無い物ねだりするのも
申し訳ないんですけどね。

ただ、見終わって意外に
印象には残っているなあと。


特に12月から
グズグズと風邪が治らず、味覚も嗅覚もどんどんマヒしていってる番長。
この話、あながちSFとも言えない?なんて
ちょっとゾッとしますね。

★1/7(土)から新宿武蔵野館ほか全国で公開。

「パーフェクト・センス」公式サイト
コメント (3)
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