ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

指輪をはめたい

2011-11-18 22:47:36 | や行

見どころは
「ヒミズ」(12月公開)にも出る二階堂ふみの
キュートさ……かな。

「指輪をはめたい」31点★★☆


スケートリンクでスッ転んで
記憶をなくしてした片山(山田孝之)。

しかし彼のポケットにはダイヤの指輪が。

どう見てもエンゲージリングっぽいのだが
片山は何も思い出せない。

そんな彼の前に
3人の女性が現れる。

クールな会社の先輩(小西真奈美)、
営業先の風俗嬢(真木よう子)、
清純派の不思議ちゃん(池脇千鶴)。

一体自分は
誰にプロポーズするつもりだったのか?!

片山はスケートリンクで出会った少女(二階堂ふみ)のアドバイスのもと
手がかりを求めて
3人の女性と付き合うことにするが――?!


芥川賞作家、伊藤たかみ氏の同名小説が原作。
監督・脚本はイラストレーターでもある岩田ユキ氏。


冒頭、水森亜土が出てきたりして
「おっ」と思ったり

淡い映像のトーンや
美術が可愛らしかったり

すっとぼけた笑いとおかしみが
ちょこちょこあるにはありました。

それに言うまでもなく役者は粒ぞろい。

挙動不審な山田孝之、
コメディエンヌな小西真奈美をはじめ
みんないい味出してます。

しかーし。
収束のしかたがあまりにダメだったー。

話のオチがつけられずに
どんどん終わりが遠くなるような感じで
見ていてつらかったす。

原作を読んでないので
そもそもこういう読後感だったのか

それとも映画で何かがズレたのか
なんとも言えないのですが

見終わって残っているのが
山田孝之の困り顔と、
メルヘン調の色彩だけ、というのは
あまりに具がなく

もったいなく感じました。

もっともっとコメディかと。
期待しすぎたのかしらん。


★11/19から新宿バルト9ほか、全国で公開。

「指輪をはめたい」公式サイト
コメント (2)
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ジョージ・ハリスン/リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド

2011-11-17 23:24:21 | あ行

自分のなかの
ジョージ・ハリスンのイメージが
かなり覆りました。

「ジョージ・ハリスン/リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」67点★★★☆

ビートルズのジョージ・ハリスンが
生前に企画していたという自身の伝記映画。

撮影も始めていた2001年に
本人は亡くなってしまいましたが

その後を
マーティン・スコセッシ監督が託されたというドキュメンタリー。


3時間半の超大作(!)

子ども時代からビートルズ結成、そして
解散後の活動、晩年に至るまでを、
膨大な資料映像と本人のインタビュー、

さらに
兄たちや、妻に息子、
ポールやリンゴ、テリー・ギリアムなどなど
充実の関係者インタビューで綴っています。


前半はビートルズ解散あたりまでを描いていて、
ポールらが昔を振り返る話も楽しいんですが、

つい最近
「ジョン・レノン、ニューヨーク」を観たばかりからか、

メンバー確執とかはだいたい聞いてたので、
前半はさすがに所々寝てしまいました(笑)

ただ
解散してから、晩年を描いた後半2時間は
目もシャキーン!
見ごたえがありました。

最近の本人の映像資料も非常に多いし、

なにより無知なワタクシとしては、

ビートルズのなかで
一歩引いてるイメージだった
ジョージ・ハリスンという人の
キャラ全てがかなり意外でした。


超・フロントタイプじゃないけど、
思ったよりも「前に出る」タイプだったんだなアと。


彼自身のインタビュー映像も多くあるし、
なにより「自分で自伝を企画してた」ってとこから
へえ~~だったし。

映像や証言を見ると
割と人懐っこいというか、人たらしな傾向があり
友人の多い人気者だったんだなあと
驚きました。


彼と初対面したときの印象を
オノ・ヨーコ含む数人の女性が語るシーンがあるんですが、
みな一様に同じようなことを言うんですね。

つまり
「優しくて、気のつく、マメなタイプ」って感じ。

ふううん。
そりゃモテるわな。

それに
インタビュー出演者が豪華なのも見どころですね。

特にエリック・クラプトンが
「ビートルズにスカウトされた」話や、
過去の恋愛ゴタゴタなどを

無邪気なほどにあっさり語ってるのが
おもしろかったです。

本作は
公開期間は2週間と短いですが
12/23(金)にDVD、ブルーレイで発売が決まっているそう。

資料的価値が高いと思いますんで、
家でゆっくり観るのも、よいかと思います。


★11/19(土)~12/2(金)角川シネマ有楽町、TOHOシネマズ六本木ヒルズ、
             大阪ステーションシティシネマほか全国で公開。

「ジョージ・ハリスン/リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド」公式サイト
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ラブ・アゲイン

2011-11-15 22:52:02 | ら行

ブログを見返して、
意外にハリウッド製ラブコメの
平均点が高いことに気づきました。

笑えて、人間ドラマで
高クオリティが求められる
ラブコメって、けっこうスゲエ?

「ラブ・アゲイン」72点★★★★


結婚25年めのキャル(スティーブ・カレル)は、
ある晚、いきなり妻(ジュリアン・ムーア)から
「離婚して」と言われてしまう。

マジメな良夫だった彼には
まさに青天の霹靂。

だが妻は家を出ていってしまい、
キャルは夜な夜なバーで
妻の悪口を言っていた。

そんなキャルを見かねた
プレイボーイのジェイコブ(ライアン・ゴズリング)は
キャルに「モテ男」の手ほどきをしてやると言いだす。

よーし、モテ男になって
妻を見返してやるっ!

と、ジェイコブの指導を受けることにした
キャルだったが――?!


倦怠夫婦のありがちな話かなーと、
あまり期待してなかったら、かなり面白かったです(笑)


マジメが取り柄ながら
知らぬ間に“ちょいダサおやじ”になってしまった主人公が、

まず買い物に連れ出され
「いや、GAPより上に行こうよ!」的指南をされるのが
単純におかしく(笑)

昔ワイドショーでやってた
「亭主改造計画」アメリカ版ともいえるネタだなあと
ほくそえんでしまいました。


「40歳の童貞男」「ゲットスマート」の
スティーブ・カレルが
ダサい自覚のない主人公をもっさり演じており、
さすがにハマってる。

しかも
はしゃぎすぎず、悪ノリしすぎず、

男性主人公のコメディにありがちな
騒ぎすぎや下ネタ暴走もなく(苦笑)

気の利いたセリフで笑わせてくれます。

また
キャルの息子(ジョナ・ボボ)のキャラが
すごくよくて

妙に分別くさい13歳なんだけど
お父さんに似たもっさりと純粋さがあり、

彼の淡い恋がストーリーに絡んでくるので

オトナ笑いとファミリーテイストの
バランスもなかなかよく
微笑ましく仕上がってました。

ドギつい描写もそんなにないので、
中学生くらいなら、お子さんに見せても
大丈夫でしょう。


基本、笑いが好きで
家族モノや人間ドラマが好きな番長。

ラブコメって意外に失敗のないジャンルなんだなあと
いまさらにして思うのでした。

……ん~。かなりいまさら・・・?


★11/19(土)からシネマート新宿、シネマート心斎橋ほか全国で公開。

「ラブ・アゲイン」公式サイト
コメント (2)
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アントキノイノチ

2011-11-14 22:13:39 | あ行

「余命1ヶ月の花嫁」のスタッフが贈る感動作、とか
言わないほうがいいのに。


「アントキノイノチ」60点★★★☆


高校時代のある事件がきっかけで
心を閉ざしてしまった杏平(岡田将生)は

父(吹越満)の紹介で
遺品整理業の仕事を始める。

遺品整理業とは遺族に代わって、
亡くなった人の部屋や荷物を片付ける仕事だ。


杏平は淡々と作業をする先輩社員のゆき(榮倉奈々)に
仕事を教えてもらいながら、

様々な人々の
“生きた痕跡”と向き合うことになる。

だが、あるとき
杏平はゆきの秘密を知ることになり――?!


ああ、最後が惜しいなあ!
ベタながら、まあ悪くない流れだったんだけどなあ。


題材となっている遺品整理業は
とてもいい視点だと思うんですよね。

最近の「エンディングノート」ブームといい、
みんなタブーではなく、死について語ったり、
「人生の終い支度」を考えるように
なってきはしましたが

それはあくまでも自分のなかでの整理であって、

本当の「片付け」っていうのは
こういうことだよね、というのが見られるから。

きれい事じゃないよね、というのを知るのって
シビアだけど、大事だと思う。


そんな題材の妙と、榮倉奈々が光るので
この点数。


でもやっぱり
特殊な仕事場ゆえに
“傷を持った人々が集う”ってのは
あまりに安直だよなあ。

で、主人公自身がその仕事を通じて、
自分の過去と向き合う、というのも
通り一遍、なんだよなア。

なにより、やっぱりラストが!
さだまさしの原作だそうですが、
原作もこのラストなのかなあ。


「ヘブンズ ストーリー」の瀬々監督作風は
ほとんど感じられないけど、


手持ちブレあり、わざとオートで焦点を合わせたような
ラフな映像が、ちょっとした“尖り”かもしれない。

少々、映像酔いする場面もありましたが。


にしても。

岡田将生氏ってこういう
精神的に不安定というか
もろい感じの役が多いですよねえ。

しかも制作側が
あまりキャラを描き込まなくても
顔の美しさで語れる、と
よっかかっている気がする。


美形は美形なりに
大変そうですね。
ハイ、大きなお世話でした。

★11/19(土)から全国で公開。

「アントキノイノチ」公式サイト
コメント (6)
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ラブ&ドラッグ

2011-11-13 16:22:37 | ら行

アン・ハサウェイが
大サービスですよーん。

「ラブ&ドラッグ」73点★★★★


アメリカがアゲアゲ好景気だった1996年。

ファイザー製薬(もち実名!)の
社員ジェイミー(ジェイク・ギレンホール)は、

言葉巧みに人の心を掴む
天性の営業マン。

ある日、彼は
パーキンソン病のキュートな女性
マギー(アン・ハサウェイ)と出会う。

ジェイミーの猛アタックで、
二人は意外にもサックリと
デート→ベッドインとなるが、

マギーは病気を理由に、
深入りしない関係を求めていた。

了解済みで付き合い始めた
ジェイミーだったが……?!


セックス先、恋愛あと、は
最近のラブコメの定番のようですが、
(「抱きたい関係」「ステイ・フレンズ」などなど)

この映画にはプラス難病という、
扱いにくい「縛り」が加わってる。

お涙頂戴になるか?と思いきや、

「ブラッド・ダイアモンド」や「ディファイアンス」など
硬派系が得意な
エドワード・ズウィック監督の手腕が冴え、

明るくセクシーで、やや下ネタも多く(笑)
けっこう笑えて、ラストは感動、と

実に盛りだくさんの
“お手本”的なうまさがあり

堪能いたしました。

一番の勝因は、
ラブコメでは薄くなりがちなキャラクターを
しっかり立体的に作りあげたところですね。


主人公のジェイミーが
チャラ男の裏に、多動症を匂わせているあたりも
うまいなアと思いました。

ゆえにアン・ハサウェイも
気持ちいいくらいキュートにポーンと、
脱いでくれたんでしょうね。


堪能いたしました。


しかしジェイク・ギレンホールを
「万人了解の“ハンサム”」と定義づける
アメリカの判断基準には相容れないな(笑)

あ、すいません
これは単に趣味の問題でした。


★11/19からシネマート新宿ほか全国順次公開。

「ラブ&ドラッグ」公式サイト
コメント (3)
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