ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

マイ・バック・ページ

2011-05-26 19:13:32 | ま行

おもしろかったです、素直に。

「マイ・バック・ページ」80点★★★★

評論家・川本三郎さんの
朝日新聞社勤務時代の実話がもとです。


1971年。

学生たちによる全共闘運動が下火になり
一部、残った活動家が、
過激な武力闘争へと突き進んでいた時代。


新聞社の週刊誌記者・沢田(妻夫木聡)は、
ある組織幹部を名乗る男から
タレコミを受ける。

その男、梅山(松山ケンイチ)は
「銃を奪取して、行動を起こす」と言う。

同行した先輩記者は
「あいつは偽物だ」と断じるが、

沢田は梅山に興味を持ち、
接触を続ける。

「なにか事を起こすときは、
自分に独占取材をさせて欲しい」

だが、その約束が
思わぬ事態を引き起こし――。



始まって10分、先輩記者役の役者
古館寛治が出てきた瞬間、
「これは本物だ」と思いました。


デスク役のあがた森魚といい、
クセのありそうな記者たちと、週刊誌編集部の空気が
まあリアルなこと。


それに不肖にも原作未読、
ずっと席を借りてた朝日での話なのに、
事件を詳しく知らなかったこともあって

ガンガン引き込まれました。


特に
ジャーナリストとしては優しすぎる、という
主人公の人となりに
ものすごく共感してしまった。


取材対象に対しても、読者に対しても
誠実であろうとするがゆえに
身動きが取れなくなったり、


自分自身に迷いがあるゆえに、
見抜けない嘘もある。


映画が好きで、文学が好きで、
猛者うごめく記者社会で
柔和な佇まいを持っている――


そんな沢田役に
妻夫木氏がピッタリはまった。

ラストの演技には
自分でも意外なほど
ホロッときちゃいました。


しかもその役が
実在している川本三郎さんであり、

その人となりが
彼が書いているものに
そのままつながるわけですから、

おもしろいですねえ。


しかし、若き日のこんなにも苦い記憶を
さらけ出せるなんて……
すごすぎる。


やはり物書きとは、
自分を振り返り、向き合ってこそなのか。

表現者として
自らをさらけだせるかがキーなのか、と
深く深く、感じ入るものがありました。

ジャーナリズムや創作に関わる人は
特に必見す。


★5/28から公開。

「マイ・バック・ページ」公式サイト

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