ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ベル・エポックでもう一度

2021-06-11 00:45:35 | は行

スマホや動画配信の時代に馴染めない中年主人公――ってとこに

共感できたら、観るしかないす!(ワシじゃ!笑)

 

 

「ベル・エポックでもう一度」72点★★★★

 

 

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主人公ヴィクトル(ダニエル・オートゥイユ)は60代。

かつては売れっ子イラストレーターだったが、

デジタル化についていけず

同年代の妻のマリアンヌ(ファニー・アルダン)にも見放されている。

 

そんな父に息子が友人(ギョーム・カネ)が始めた

〈タイムトラベルサービス〉をプレゼントする。

 

それは映画のセットや役者を使って

客の戻りたい過去を再現してくれる

体験型のエンターテイメントサービスだった。

 

ヴィクトルは

「運命の女性と出会った1974年のリヨンに戻りたい」とリクエスト。

 

当日、指定された場所に赴くと

そこには、あの日、あのときのすべてが再現されていた――!

 

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しょっぱな中世貴族の晩餐シーンからはじまり

「あれ?現代劇じゃなかったっけ?」と

意表をついてくる本作。

 

もろもろを理解し没入するまでに少々、時間はかかりますが、

なかなかにおもしろい後味を残してくれます。

 

主人公のヴィクトルは60代。

かつては売れっ子イラストレーターだったけど

スマホや配信動画など新しいものに馴染めず

いまや

完全に時代から取り残され(うっ・・・共感)

半・隠居生活を送ってる。

 

いっぽう、同世代の妻は

VRまで使いこなすアグレッシブな女性。

 

彼女は時代の変化を受け入れずに思考停止し、

あげく会食中に居眠りをする夫に

ウンザリしている(うわあ、うちのおとんとおかんみたいだ!

 

 

この夫婦描写が実にリアルなんですが

さて、映画は、そんなしょぼしょぼな夫ヴィクトルが

息子の勧めで<タイムトラベルサービス>なるものを

試すことになるところから動き出すんです。

 

<タイムトラベルサービス>とは

映画のセットや役者を使って、

客が望む過去を体験させてくれる、というアトラクション。

 

言うなれば

「昭和を再現したテーマパークで、自分が主人公になって

”忘れられない、あの1日”を過ごす」イメージかなあ。

 

で、その体験にハマったヴィクトルは

けっこうな額の追加料金を払って体験の延長をし、

さらに運命の女性を“演じている”女優に恋をしてしまう――という展開。

 

映画やドラマが作り出す「虚構」が大きなテーマでもあり

そこで

完璧に造られた「嘘」を演出する

スムーズでなめらかなカメラワークが、実に気持ちよい。

 

過去に戻る感覚はSFのようでもあるし、

サービスを提供する舞台裏のドタバタも可笑しい(笑)

 

手の込んだ入れ子構造のようで、

実は周りくどすぎる熟年夫婦のラブストーリーだったりもして

けっこう深いんです。

 

過去を体験することを

「あのころはよかったなぁ」とかの

単なる「ノスタルジー」にせず

 

主人公ヴィクトルが、過去を再体験することで

どう変化していくのか――が

見どころですね。

 

主人公の状況に思い当たるふしある方には

ぜひともオススメしたいし

 

てか、実際にこのサービスないの?

本気で思ってしまうのでありました(笑)

 

★6/12(土)からシネスイッチ銀座ほか全国で公開。

「ベル・エポックでもう一度」公式サイト


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