163分で観客は、
このほの暗い路地で暮らす一人になっていく。
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「苦い銭」72点★★★★
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「三姉妹~雲南の子」(12年)「収容病棟」(13年)などで知られる
ワン・ビン監督が
中国・淅江省(せっこうしょう)の縫製工場で働く
人々を写したドキュメンタリーです。
2時間43分(!)をじっくり味わう
相変わらずのワン・ビンの超・観察っぷり。
浙江省・湖州は縫製工場の町で
30万人を超える出稼ぎ労働者が働いているそう。
みな
田舎から出てきて、狭い寮をあてがわれ、
コミュニティを作って暮らしている。
そんななかで
果てのない夫婦ゲンカにハラハラし
ミシンの下で布地を複雑に動かし、瞬く間に“洋服”にしていく
人々の手に感嘆し、
長時間労働に付き合い
時にウトウトしながら(ははは。笑)、
完全に自分が、このほの暗い路地の、
この場所で暮らす一人になっていく。
その感覚が
とてつもなく不思議でおもしろい。
働けど、働けど、暮らし楽にならず。
でもみんな、必死に働いている。
嗚呼、自分と同じだ、と思う。
「仕事とは、生きること」。
改めて感じつつ、
なんでか、
じんわり熱いものがこみあげてくるのでした。
★2/3(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国で公開。
「苦い銭」公式サイト