ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ヒューマン・フロー 大地漂流

2019-01-10 23:34:00 | は行


ユーモラスにひょっこりと
世界の「現場」に表れ、斬り込む。

彼は静かに怒れる中国のマイケル・ムーアだ!

 

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「ヒューマン・フロー 大地漂流」75点★★★★

 

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闘う現代美術家アイ・ウェイウェイが

世界の難民を写したドキュメンタリー。



美術家にして、社会活動家であり
中国当局からマークされ、しかしそれをユーモアとアートに昇華する、彼の波乱の人生は

ぜひ映画「アイ・ウェイウェイは謝らない」を参考にしていただきたいのですが

今回はそんな彼が「難民」問題に焦点を当てて
世界23カ国、40カ所の難民キャンプや現場を取材したドキュメンタリー。

 


ギリシャに流れつくシリア難民に、バングラディシュに逃れたロヒンギャ、

パレスチナ難民にアフリカ難民――

世界にこんなに難民がいるとは!とあ然。

2018年、世界の難民は6850万人にのぼるそうですから、さもありなん。

 

ただ、ニュースなテーマだけど、描き方は独特。

まず冒頭から
ドローンを巧みに使った映像の美しさに圧倒されます。

美術作品のようなフレームワークのなかで
祖国を追われ、寄る辺なき悲しき人々の現実が
ニュースとは別の視座から描かれていく。


特に解説もなく、合間にピリッと辛い詩が挟まり、

アイ・ウェイウェイ本人も画面に積極的に登場し、
彼らの内側に入り込み、ユーモアを忘れず、会話を交わし、心を沿わせていく。

 

この視点とスタイルは

故郷・中国を追われ、いまはベルリンに暮らし、

安全を脅かされる身だからこその、

共感と距離感から生まれていると思う。



アキ・カウリスマキ監督が

難民を「人」の物語として描くことで、問題を提起し、彼らに「顔」を与えているように、

アイ・ウェイウェイはまた別のやり方で、彼らの「顔」を描き

この問題へ想いをはせるよう、我々を導いているのかなと思います。



「受け入れてくれたら、必ず、恩を返す」――

カメラに向かってそう話す難民の「生きようとする力」に

何度も熱いものがこみ上げました。

 

そして

1/12発売の「AERA」で

闘う美術家としての側面からアイ・ウェイウェイを紹介する記事を書きました。

都内でいま見られる彼の美術作品もあります。

「カタストロフと美術のちから」展(六本木、森美術館で1/20まで開催中)

 

ぜひ映画と合わせてご一読くださいませ!

 

★1/12(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「ヒューマン・フロー 大地漂流」公式サイト

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