英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その6

2013-07-07 15:08:14 | 将棋
『電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その1』
『電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その2』
『電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その3』
『電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その4』
『電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その5』の続きです。


 先手・プエラαの玉が9一まで侵入し、後手・塚田九段の敗北が決定的になったと思われた局面である。

 ここから、△6九飛▲6八金打△4九龍▲3四歩(第14図)と進む。
 この4手のやり取り……≪ん?≫ と感じさせる手順だ。
 まず、▲6八金打。この手は金を取りに来た龍に金を打って当て返す先手を取る手だが、取られる可能性のある駒を先手陣に増やす手で、入玉確定後の最優先事項「自陣に残る駒を敵陣に逃がす」の逆の行為である。
 そして、その金を犯してまで「先」を握って指した手が▲3四歩。この手は、通常の将棋ならと金を作る価値のある手だが、既に入玉されている時点では敵玉に響かず、また入玉している自玉からも遠く、無意味に近い手だ。

 プエラαの開発者の伊藤氏は入玉対策を組み込んだと述べていたが、それは「急きょ」だったらしく、付け焼刃的なものだったようだ。
 おそらく、入玉対策としての対応プログラムは自玉が入玉を果たすまでで、それ以降の指し方のプログラムは組み込まれていなかったと考えられる。
 なので、13図以降の指し手は、通常局面の手の評価で指し手を決定した。そう考えると、第13図以降の指し手のよれ方が納得できる。




 第14図より18手進んだ局面。
 先手のプエラαは、やはり1筋にと金を作るあまり有効でない手を指し、自陣左側の駒を敵陣に避難させようとはしない。また、その残された駒を攻められた際の折衝で駒を1枚損しており、持将棋までの塚田九段の駒数は「あと6点」となっている。あと、先手の7七の馬の行動範囲が狭くなっているのも気になるところ(塚田九段にとっては捕獲するチャンスがある)。
 図の▲4四歩は「歩を避難させた」という趣旨ではなく、「と金を製造する」ことを高く評価したことによるものと考えられる。
 と金製造に重きを置いたプエラαであるが、塚田九段が意図的かどうかは分からないが、先手の6~9筋の歩を取らなかったことにより、先手玉の周辺にと金を製造することができなかった。このことが、この後の激変を招いた要因となっている。

 実際、第15図より△5二金▲7一馬△6二銀▲8二馬△7一金▲9二馬△8一金打(第16図)と進み、

先手の馬を召し取ることができた(後手の金2枚と交換)。これで塚田九段の駒数は「ほぼ確定の19点プラス5二、6二の金銀」で、この金銀がうまく先手の駒と交換できたとして21点という状況。
 しかし、『将棋世界』六月号の特集記事によると、第16図の△8一金打では△8二香(変化図1)があったそうだ。

 塚田九段は▲8三桂(変化図2)でダメだと速断したようだが、以下△8一金打▲同馬△同金▲同玉△6三角(変化図3)で王手龍取りが掛かる。

 ちなみに、変化図1の△8二香に▲5六馬と龍を取ると、△8一金打で詰んでしまう。



 更に手が進み、185手目▲6四桂と打った局面。この桂打ちは金取りで、それを△6三金と受けさせ▲7二桂成と桂を成り込む、通常では大きな手だが、手番を渡したため△6六龍と歩を取られてしまった。「歩1枚より成桂の方が大きい(次に銀と交換できる権利もある)」という通常局面の判断が働いてしまったと考えられる。
 この折衝により、後手の駒数は「確定21点プラス金銀(不確定)」となり、先手の行き遅れの歩3枚があるので、持将棋が現実的となってきた。



 更に30手ほど進んだ局面。後手・塚田九段の懸案だった金銀は銀が脱出成功し、金は歩との交換になった。プエラαの判断は「金>歩」の駒得優先。入玉将棋においては「金=歩」という指標がないのだろう。
 この金銀の2点を確保できたので、あと1枚獲得できれば持将棋に持ち込める。
 その他としては、やはりプエラαは「と金の製造」を繰り返していた。

 そして、この△8八歩によって、△8九歩成から先手の7~9筋の歩を獲得できる公算が強くなった。



 ついに24点確保が確実になった局面。


 この局面で、両者が合意し持将棋が成立した。(電王戦規定で「引き分け」)


 書きたいことは、これまでに書いてしまったので、まとめは簡単に。
 将棋としては、塚田九段が入玉を目指した時点で、質的には観るべきものがなくなってしまった。せめて、駒数確保の最善を尽くして……最善を尽くすのは寄せられてしまう危険性もあるので、危険と照らし合わせながら、駒数確保の努力をして欲しかった。(実戦は、一目散に入玉)
 解説の変化で示された入玉将棋特有の手筋などは面白かった。(余力があれば取り上げたい)
 絶望的な局面でもあきらめずに指し続け、ついには引き分けの持ち込んだ塚田九段の精神力とそのドラマ性には感動したかもしれない。世間へのアピール度は大きかった。
 しかし、もし、プエラαが入玉後のプログラムを組み込んでいたら、塚田九段は醜態の棋譜を残す結果になったはずだ。
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電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その5

2013-07-05 00:23:26 | 将棋
『電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その1』
『電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その2』
『電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その3』
『電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その4』の続きです。


 ▲7七玉!
提供されていたボンクラーズ(プエラαの前身)を研究(対局)して、塚田九段は「玉を追わなければ、入玉はしない」という感触を得ていたが、▲7七玉は塚田九段の思惑を打ち砕いた。


 『その4』と同じ局面、同じような文章………ごめんなさい、同じです。使い回しました。今回は、プエラαの指し手中心になりそうです。ただ、▲7七玉を考える前に、やや気になるプエラαの指し手がありましたので、局面を少しさかのぼります。


 第11図は塚田九段が△6九金と飛車を取りに行った手だが、その直前の▲1四銀が今考えると気になる手だ。『その3』で私は「着実に駒を確保しに来た手で、しかも、▲2三銀成と歩を取った手も2四の銀取りになっており、可能性は低いが後手玉に迫る手にもなっており、当然の一手のように思える」と記している。
 しかし、▲1四銀では飛車を助ける▲7七桂もありそうだ。この手で、飛車が助かるかどうか、また、先手玉が大丈夫なのか、はっきり分からないが、大丈夫のように思える。
 もし、▲7七桂が成立したと仮定すると、プエラαは、『飛車(遊び駒)1枚<金(後手が飛車を取る時に手に入る)+歩+「先手を取りながら後手玉に迫れる」』と判断したのではないだろうか。これは、通常の中盤の形勢判断に基づいているように考えられる。
 実際、飛車取りを放置して、▲2三銀成△2五銀▲2四成銀△1六銀を指してから、▲7七玉を指している。


 ▲7七玉は入玉志向の手だ。後手の塚田九段の飛車取りに打った△6九金が先手玉に迫る手になっているので、それに対応したと考えられるが、上記で述べたように、▲6九金にすぐ反応したわけではない。
 ▲7七玉以外有効な手がなく、▲7七玉が最も価値のある手と判断した「一手のみの判断」なのか、この局面において入玉が一番有効と「方針の決定」なのかは、この一手の段階ではわからない。
 木村八段も述べていた、「▲7七玉と上がったが、次に▲8八玉と指す可能性もある」と。コンピュータは過去の判断や思考に囚われず、断片的に局面を捉える(直前の▲7七玉を尊重しない)ので、「玉の位置は8八の方が安定している」や「後手の成桂や成香から遠ざかったほうが良い」などと判断して、▲8八玉と指すかもしれない。

 しかし、そういった期待を粉砕するかのごとく、プエラαは▲9五銀と玉の脱出口を開いた後は、駒を取り返すなど後手の手に最低限の対応をするだけで、ほぼ一目散に8六~7五~……~9一まで入玉させてしまった。

 開発者の伊藤氏の「簡単ではあるが入玉対策も組み込んでいた」と述べていたが、どういう仕組みなのだろうか?
 「入玉スイッチ」があって、その条件、①敵の駒に迫られた、②ある手数(たとえば120手)を超えた、③敵陣の駒を取るなどして一掃した、などの条件をクリアしたら、そのスイッチが入り、入玉を目指すのかと思ったが、勝又六段の推測によると、「玉を一段上部に進出する手の評価点を+300点(数値は推測)に設定しておいたのではないか」ということだ。
 確かに▲7七玉(第12図)の局面ではさしたる有効な手はない。そこで、玉を一段上部進出させるプラス点が大きく評価値がそれより大きな手が存在せず、入玉一直線の指し手になったと考えると、辻褄が合う。

 第13図では、双方入玉が確定しており、後手の塚田九段の駒数は17点。取られそうな駒はないので駒数が減ることはないだろうが、持将棋を持ち込むには7点必要で、小駒7枚か大駒1枚と小駒2枚獲得しなければならない。
 しかし、大駒は移動力があるので捕まえるのは難しいうえ、プエラαの大駒3枚の動きを制限する駒も存在しないので、塚田九段がプエラαの大駒を取るのは至難の業である。となると、5段~7段に存在するプエラαの小駒を、それこそブルドーザーのようにすくい取るしかないが、これも不可能に近いように思われる。
 プエラαとしては、2、3枚取られてもいいので、機械的に小駒を敵陣に進めていけば良い。プエラαの勝利は確定的に思えた…………
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『八重の桜』 第26話 「八重、決戦のとき」

2013-07-03 22:43:59 | ドラマ・映画
死の美学……犬死?無駄死?

★西郷家の女たち
「なよ竹の
 風にまかする身ながらも    
 たわまぬ節は
 ありとこそきけ」


  「細い竹にも曲がらぬ節があるように、か弱い女にも固い信念がある」と
   西郷千恵は、会津女性の強い精神を歌っている。
   「風にまかする身」の風とは、時代?それとも男たち?

 会津の潔白を晴らすため、敵(新政府軍)の非道な力に屈しないことを、命を捨てて示す西郷家の女たち…………

 「今日は何をすんですか?」
   と、尋ねる幼娘の問いには、心が痛む。

   自刃することも罪であるが、幼児の命を絶つのは大罪である。

★白虎隊
 飯盛山に逃げ落ちた彼ら、討ち死に覚悟で正面から突っ込むという意見も出たが、「敵に捕まるのはこの上もない恥」と日新館の教えを遵守。(日新館では、いったい何を教えているんだ?)
「生き恥を晴らしては殿に面目が立たぬ」と集団自決。

「死ぬのは、一人たりとも敵を倒してからに為さりませ!」という竹子の言葉を聞かせてやりたい。
 若者だというのに、悲観的過ぎる。「敵に捕らわれる」ことよりも城の者たち、会津を守るという意志を強く持たなかったのだろうか?(現代なら「生きる」が最優先)
「古き会津の魂」に縛られ、「恥」に囚われてしまった悲しき結末。

★神保内蔵助と田中土佐
(後述する「八重、出陣! 内蔵助を説き伏せる」の項で述べるが)
 会津の悲劇を招いた要因(第一の因は容保)は、この方たちにある。
 本人たちも死ぬ間際に後悔していた「殿の暴走を止められなかったこと」、さらに、会津が攻め込まれた際の無能な采配ぶりなど、あれこれ思い当たる。
 「今でしょ!」の林先生も述べていた『敗因の3要素……「情報不足」「思い込み」「うぬぼれ」』って、会津にぴったり当てはまる。「情報不足」による判断の誤り、古き会津の魂の「思い込み」、会津武士(剣)は強いという「うぬぼれ」……

 それにしても、最後まで無能な二人だった。
 あんなところで、思い出話をし、自害するくらいなら、竹子の言葉にならうか、敵将の前で自刃して情けを乞うなどして欲しいものだ。

★逃げ遅れた老子女たち
 人質となり足手まといになることを避け、自害。(今回、容保が一番足手まといになっていた)
 敵の目標は鶴ヶ城なので、そこに逃げずに隣村に逃げた方が合理的だが、そういう訳にはいかないか。


八重、出陣! 内蔵助を説き伏せる
 なかなか、家老どもを説得するのは難しいと思っていたが、
①男だけの戦いではない、男も女子もない会津全ての戦いだ
②山本覚馬の妹である。鉄砲のことなら負けない。私は戦力になる。自分を使わないのは損失だ
③私たちの大事な故郷、会津はこの手で守る!
 と、いろいろ手を変え品を変え、説得に成功。

 本当は、①の裏返し、
「おめえたち男どもが情けねえから、会津がこんなことになっちまったんだろ!
 もうおめえたちには任せておけねえ。つべこべ言うな!」
ぐらい言いたかったのだろう。


その他の感想
1.尚之助、どこにおったんや?……ああ、大砲、直してたのね。
2.生き延びとるやん?……大河内伝五郎(次回予告を見て)
3.「命中」「薩摩の大将を仕留めたぞ!」……足を撃っただけ
4.いつも勇ましくて頼もしい官兵衛だが、いつも、その後は出番なし
5.6月のオープニングは会津を表すような、血飛沫や血滴。陰鬱すぎる表現だが、7月はどうなるのだろう?



【ストーリー】番組サイトより
 八重(綾瀬はるか)は、半鐘が鳴り響く城下を佐久(風吹ジュン)らと共にひた走り、鶴ヶ城に入城する。城の守りが手薄であることを知った八重は、少年兵や老兵たちを束ねて銃撃戦の指揮を執った。
 一方、出発が遅れたユキ(剛力彩芽)たちは閉門に間に合わず、敵弾飛び交う城下を逃げ惑っていた。そして、頼母(西田敏行)の登城のあと自邸に残った妻・千恵(宮崎美子)たちは自刃の道を選び、壮絶な最期を迎える。田中土佐(佐藤B作)と神保内蔵助(津嘉山正種)も、郭門を破られた責任をとり自刃。白虎隊の少年たちも飯盛山でその命を絶った。
 新政府軍の大山(反町隆史)らは、鶴ヶ城へ向けて一気に兵を進めるが、城内からの精度の高い射撃に進軍を阻まれる。その夜、八重は夜襲に備えて髪を切り、城を守るため戦い抜く決意をする。
コメント (2)
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