英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

将棋界(順位戦)の歪み その1「菅井悲劇をもたらした棋界の現状」

2012-10-14 14:40:21 | 将棋
 『明日対局』(渡辺明著)を少しずつ読んでいるのですが、ようやく2006年度まで来ました。この年の竜王戦は佐藤康光棋聖の挑戦を受け4勝3敗の激闘の末、2度目の防衛(3連覇)を果たしています。ちょうど現在は第2局に敗れ2連敗とややピンチの様相。確か、第3局は終盤、起死回生の妙手を放ち勝利したように記憶しています。(将棋は理論的には逆転の妙手はありえず、実際は渡辺竜王が優勢で決め手を放ったというのが正しいと思いますが、観戦者やおそらく対局者も指される(指す)まで気づいていないので、「逆転の妙手」に見えるのです)

 それはともかく、この年は名人戦問題が浮上し、毎日新聞、朝日新聞の共催という形で落着しましたが、下手をすると将棋界にとって大きなダメージを受ける危険性がありました。
 当の渡辺竜王も春ぐらいから、そのことが心に重くのしかかっていたようでした。ブログでもそういった心を漏らしたり、棋士としての見解を述べたり、連盟の事情や対応などをぎりぎりのところまでファンに説明していました。タイトル保持者、しかも「竜王」という筆頭の地位にいるので、その責任は重く、軽々しく意見を言えない立場でしたが、よくぞ書いてくれたと思いました。
 名人戦問題が決着したころの日記「将棋界初の共催へ。」(2006年9月19日)に、その安度と感謝と決意の気持ちを述べています。

「共催決定」の報を聞いて安心したと同時に「日本の伝統文化である将棋の振興に寄与するため」これからも将棋界を支援するいう決断をされた毎日新聞社に感謝の気持ちで一杯になりました。僕は今回の件では毎日支持でしたが名人戦にこれだけの価値を見出して頂いた朝日新聞社にも感謝しています。

将棋界はスポンサー、見てくれるファンの方々の支えなしでは成り立ちません。その二つの大事な柱のうちの一つが折れようかという状況だったのでこの数ヶ月間は本当に心配が絶えませんでした。
棋戦とスポンサーが同時に減るという最悪の状況は免れたわけですが、今回の騒動で二本の柱に傷を付けてしまったことに変わりはないと思います。

この傷を治すために棋士がするべき事は色々あるとは思いますが一番は「良い将棋を見せる」ということだと思います。平凡ですがこれがスポンサー、ファンの方々に一番喜んで頂けることではないでしょうか。

失ったものを取り戻すべく頑張りますので、これからも将棋界に変わらぬご支援の程を宜しくお願い致します。





 将棋連盟の内情は分からないが、この時の連盟の取った行為はかなり義に反するものだと考えられ、共催で決着したのは幸運だった。しかし、この件は、将棋界(連盟ではない)に思いの深いファンの心に影がさす出来事だった。
 さらに翌年、女流棋士独立問題(分裂騒動)が起こり、連盟には相当嫌気を感じている。

 しかし、今回記事を書き始めたのは、この両問題についてではなく、上述したブログ記事よりひと月以上前の竜王のブログ記事の一文です。
 2006年8月3日記事「名人戦問題を振り返る1。」より。
(参考:竜王ブログ 8月1日記事「臨時総会」

「私だって一棋士としてはこんなことしたくないんです。ただ経営者としてはこれしかないんです。毎日さんにだって申し訳ないし、ファンの方の信用も失ってしまうかもしれません。本当に苦渋の決断なんです」印象に残った西村先生の言葉です

 「気持はよく分かるが、経営者としてはこれしかないんです」
 この言葉に、大きな引っかかりを感じる。企業の経営努力としては、売上(収益)の拡大、経費節減、人員削減などいろいろ考えられる(すいません。こういう理論は、よく分かりません)。まず、頭に浮かぶのは人員削減(リストラ)。どの企業もこれを真っ先にしているのではなく、いろいろな方策を講じているが、世間にニュースとして知らされるのは、具体的なリストラ策なので、真っ先に頭に浮かんでしまうのかもしれない。
 将棋連盟がリストラ策を取らなかったのは、棋士の気質や連盟の体質を考えると、「連盟らしい」と言える。実際は、連盟職員などについては実施したかもしれないが、棋士については行っていないはず。まあ、翌年、女流棋士に対しては行おうとしたが。
 いえ、私は何が何でもリストラをしろとは言っていない。しかし、「これしかない」とか「毎日さんに申し訳ない」「苦渋の決断」と言うのなら、しかも、義に反した行為をするのなら、リストラをするべきだったと思う。
 もちろん、棋士すべてに価値があるのなら、リストラはすべきでない。しかし、そうではないことは、棋士が一番分かっているはずだ。いや、ある意味では、勝ち星を献上してくれるありがたい存在とも言えるが。
 そういう皮肉はさておき、「弱い者は去る」という勝負の大原則が有耶無耶にされている将棋界では、それによる歪みが何十年も前から生じている。特に、順位戦において。
 そして、昨年度もその顕著な症例が順位戦C級2組において起こってしまった。

 菅井五段は3戦目に船江四段に敗れたものの、残りの9局に勝ち9勝1敗の好成績だった。さらに、順位も6位なので、通常なら3位までに入りC級1組に昇級している成績だったが、阿部健治郎五段、中村太地五段、船江四段の3名が全勝だったので4位の次点に終わってしまった。(全勝なら3位以内でなくても無条件で昇級できるらしい)
 まあ、これは順位戦の厳しさ、運の無さと言ってしまえる出来事であろう。しかし、8戦目が終わった時点、3人が8勝0敗で、菅井五段が7勝1敗となった時点で、なんだかこのままいきそうと言う雰囲気があった。阿部五段は菅井五段より順位が1つ上なので、1敗しても菅井五段より上位になる。
 それは残りの対局相手の顔触れを見ると、阿部五段が澤田四段と小倉七段、中村五段が岡崎六段と伊奈六段、船江四段が遠山五段と勝又六段である。もちろん、今名前が挙がった棋士がすべて楽な相手というわけではない。特に遠山五段、澤田四段は昨期8勝2敗の好成績で今期は3位4位で昇級候補だった。ただ、今期は8戦目終了時点で遠山五段は3勝5敗と不調、澤田四段は4連勝後4連敗と調子を崩していた。

 結局、先述したとおり四者とも星を落とさず終了。1敗してから上位が星を落とすのを待ち、勝ち続けた菅井五段は報われず勝負の厳しさを味わった。で、くどくなるが、これが本当に、勝負の厳しさ、運の悪さで済まされる問題なのだろうか?と思ったわけである。

 この四者の対局相手を調べてみると、阿部五段が10人中3人が3勝7敗以下棋士、中村五段はなんと7人が3勝以下、船江四段は3勝以下は2人、菅井五段は3勝以下が3人。また、対局相手の総勝ち数は、阿部五段が43勝、中村五段が34勝、船江四段が50勝、菅井五段は52勝とかなり難敵度に差がある。特に中村五段は対戦相手に恵まれていたと言える。(もちろん、棋聖に挑戦した氏であるので、くじ運だけで昇級したわけではないのは自明)
 くじの悪戯と言ってしまえばいいのかもしれないが、こういう状況は他の年度や他のクラスでも頻繁に起こっているように思える。

 頻繁に起こる理由(……裏を返せば、そういう状況を防ぐ方法)は二つ考えられる。
①順位戦のシステム(改革)
 そもそも、40人を超える人数で、上位3名をたった10局で決めることが無理。
 総当たりが理想だが、日程や記録係、対局場、対局料などいろいろ不都合が生じそう。せめて20局、いや、15局に増やしてはどうだろうか?
 それが無理なら、最初の5~6局で昇級争い組(5~6人)、降級争い組(6~10人)、残留組に分けてしまってはどうか?
 B級2組も24人で上位2名、C級1組も34人で上位2名を決めるのに無理がある。C級1組は昇級枠が2名なので、C級2組より難しい状況である。

 さて、もう一つの問題点であるが、こちらの方が言いにくい。
②現行の引退基準の緩やかさ
 将棋連盟のサイトの「今後1週間の予定」のページで予選の対戦カードを見ると、その勝敗結果が見えてしまうカードが多くある。本戦トーナメントやリーグ戦、順位戦の上位者以外だと、若手や中堅実力者対それ以外の中堅・ベテラン棋士のカードが多く、勝敗を予想するとほぼ的中してしまう。そんなカードがなんと多いことか。

 そう、この記事の本題は、ここから。つまり、「弱い者は去れ」という勝負の掟が適応されていない緩やかな将棋界の現状とその是正案(引退基準)を述べたいが、今日はここまで。

 相変わらず「前置き」が長い。続きます。
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『相棒 eleven』 第1話「聖域」初回スペシャル

2012-10-12 15:20:20 | ドラマ・映画
 初回スペシャルということで、期待しすぎたのだろうか、「う~ん」とうならせる推理もなく推測が多く、真相も想像できたし、ダラダラと長く感じた。普通の1時間枠で充分のように思える。
 偶然も多過ぎる。新相棒の甲斐享(成宮寛貴)の恋人・悦子(真飛聖)と右京が既に面識があり、偶然、バスで乗り合わせ、帰りの旅客機の中でも再会し、被害者の夫・三井副領事(小林正寛)も同乗していて、ただならぬ事件があったと右京が察するというのは、ドラマ的には仕方がない偶然かも知れないが、ちょっと偶然が重なり過ぎ。
 副領事官のマンションに二人で出向いたが門前払いにあっただけ。「暇か課長」に下調べをさせただけで、香港にとんぼ返り状態。まるで、防犯カメラに右京と享を映らせるためだけの一時帰国だった。
 あとは香港領事館についたとたん、タイミングよく銃声が響き、事件解決へダラダラと……。

 新相棒の享については、悪くない印象。正義感に燃えるところは亀山と同じタイプだが機転は利きそう。若いので暴走してしまうシーンも予想される。ただ、また絶対音感の持ち主というのは閉口してしまう。あちこちのドラマで絶対音感の持ち主が出てくる。いったい、どれだけいるのか?
 父親が警察のお偉いさんなので、警視庁内で右京が動きやすくなるのではないだろうか。

 真犯人・根津(山田純大)の暴発の細工の動機があまりにも幼稚。変な表現だが不倫の本気度が感じられず、総領事・小日向(団時朗)への恨みもそれほど感じられない。
 皆にかばってもらえるほど総領事夫人・詠美(賀来千香子)の人間的深みも感じられない。
 また、副領事官の復讐行動もあまりにも直情的。妻を殺された悲しみや恨み、それを隠ぺいされた怒りは分かるが、皆殺しというのはあまりにも直情的すぎる。


 捜一トリオの伊丹(川原和久)、三浦(大谷亮介)、芹沢(山中崇史)プラス鑑識課の米沢(六角精児)が登場して、≪ああ、いつもの雰囲気だ≫と感じたが、考えてみると、捜査一課の刑事は非日常(殺人)の代名詞みたいな存在である。そういう感覚になるのは、「相棒ワールド」に染まっている表れなのだろう。

芹沢「杉下警部のおかげで解決した事件は多い」
三浦「ほとんどだな。」
伊丹「それを聞くと心が折れる。」

 右京(特命係)にこれだけはっきり、降参しているような気持ちを表明したのは初めてのような気がする。
 また電話口で、右京を激励しているし。やや軟化してきている?


【ストーリー】番組サイトより
 香港のホテルの一室。警視庁中根署で念願の刑事になったばかりの甲斐享(成宮寛貴)は、一発の銃声でベッドから跳ね起きる。悪夢のような現実を思い出していた。享は窓から雄大な景色を眺めながら、ベッドでまどろんでいる恋人の悦子(真飛聖)に何かを振り払うように明るく声をかける。
 しかし、悦子が再び眠りに落ちてしまうと、享に再び昨夜の苦い記憶が甦ってきた…。

 昨夜、享は香港の日本総領事・小日向(団時朗)の妻、詠美(賀来千香子)の招きで総領事公邸での晩餐会に出席した。そもそもそんな華やかな席には縁のないはずの享だったが、先輩で現在は在外公館警備対策官の根津(山田純大)が詠美に享が警察庁次長・甲斐峯秋(石坂浩二)の息子であることをバラしてしまったことで食事に招かれてしまったのだった。不仲の父の威光をかさに着ることを嫌悪する享にとって、一番に避けたい状況だったが、根津の顔をつぶすわけにもいかない。仕方なく小日向総領事夫妻、三井副領事(小林正寛)夫妻らと針のむしろのような時間を過ごしていた。

 その晩餐会も終わり、男たちが葉巻などを楽しんでいると、小日向のコレクションルームから一発の銃声が鳴り響いた。なんとその部屋では、三井の妻・絵里花(山崎未花)が胸を鮮血に染めて倒れ、そばには詠美が小日向のコレクションである拳銃を手に立ちすくんでいる。どうやら銃が暴発、絵里花の命を奪ってしまったらしい。

 そんなころ杉下右京(水谷豊)はロンドンからの帰りに香港に立ち寄っていた。観光を兼ねてのようだ。
 その香港で右京は享とひょんなことから出会ってしまう。

 果たしてどんな出会いをするのか?
 はたまた右京は領事公邸での暴発事件にどう絡んでいくのか?

 相棒、いよいよ新シーズンの幕開け!


ゲスト: 賀来千香子 山田純大 団時朗 小林正寛

脚本:輿水泰弘
監督:和泉聖治
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一年経ちました

2012-10-11 18:29:23 | いちご
 いちごに出会ったのが、ちょうど一年前でした。
 市場のガレージ店舗の裏(真裏ではなく隣の店舗の裏)で小さな声で鳴いていました。これは、今日の写真ですが

 コンクリートの壁が崩れていて、雨露をしのげる小さな穴があります。分かりにくいので拡大します。

 詳しくはリンクの記事に書いてありますが、やせていて、前足が不自由で左足はほとんど動かない状態でした。生後1カ月ぐらいです(推定)。


 ついでに、その1週間後



 で、現在(1歳1か月)はというと………立派に育って………
 

「なにか?」
「い、いえ、別に…」




 体(4600g)と態度はでかくなりましたが、まだまだ子供です。紐やおもちゃが好きです。
 ただ、夏前に散歩を覚えてしまって、太ももに飛びついてきたり、すね辺りにガリガリと爪を立てたりして「外に連れて行け」とせがみます。ストーカー廊下で待ち伏せはしょっちゅうです。(パソコンの部屋の外や風呂の脱衣所などでも)
 

「はよ、連れてけ!」

 1日4、5回の散歩が日課です。
 普段は探索モードなのですが、5回に1回ほど急に逃走モードに切り替わるので油断ができません。
 だいたい3日に1回ぐらいは逃げられます。先日も車の下に逃げられ、その日は忙しかったので、「短期決戦」とほうきで追い出し、競争です。
 家の周りを2周ほどして御用。トップスピードは互角。小回り・俊敏度は完敗、持久力(トップスピードの維持)は何とか互角と感じました。ただ、回復力は雲泥の差があり、その日はずっと胸が悪かったです(ゼエゼエでした)。


 ついこの間のことだと思っていましたが、1年ですか……楽しい気持ちをありがとう。
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宮部みゆきミステリー『パーフェクトブルー』 第1話

2012-10-11 17:13:47 | ドラマ・映画
残念感が大き過ぎる初回。
 事件と共謀者の兄弟と恋人の人情話を、ヒロインが後を追っていくだけのグダグダな話だった。

 そもそも、キャストを見て、個人的に嫌なイメージが。
 ヒロインが、あの瀧本美織。そう『てっぱん』の独りよがりで中途半端で周囲を振りまわしているのに気がつかないご都合主義のヒロインを見事に演じていた瀧本美織です。(こう感じたのは脚本に原因があると思うが、もしかしたら演技力のせいかもしれない)
 探偵事務所の同僚に平山あや。サイトの紹介文には「蓮見探偵事務所調査員。通称・ナナさん。冷静で物静かな女性。語学に長け状況分析力に優れている」そうだが、クイズ番組でのあのおバカキャラ(演じていただけなのかもしれないが)のイメージが強過ぎる。ただ、初回はほとんど顔見せだけだったからかもしれないが、違和感は感じなかった。
 犯人の恋人・藤実咲子役の星野真里は、『トッカン』の豹変女を演じていて、私はこの豹変女はドラマの本筋とはまったく関係なく、邪魔なだけの存在だったので、よい印象を持っていない。
 そういった先入観は持ってはいけないと思い、ドラマを観たのだが、非常に残念な出来だった。
 冒頭にも書いたが、ストーリーを追っていくだけの主人公。事件の妙な点に気づいていくのだが、それが遅過ぎ。ジョギングコースになるような都内で圏外というのは不自然過ぎる。それに、ジョギング中にだけストーカーの気配を感じるって、ジョギングをストーキング?するのって大変じゃないのかな?えらく健康的なストーカーだなあ。


 主人公は事件に疑問を感じただけで、実際に調査したのは探偵事務所の調査員たちとバーのマスターだった。しかも、事件の核心に迫る部分はマスターがあっという間に調べてきてしまった。肝心の部分をマスターが究明してしまうのは変。

 そして、ストーリー展開自体が疑問だらけで、まったく同調できなかった。
 まず、死体を装ってアリバイ工作をし、強盗をするくらいなら、もっと、他の手があったのではないか?留学するほどのピアノの演奏者にはリスクが大き過ぎる。
 そして、決定的に受け入れられなかったのは、クライマックスシーンでふたり(犯人)を追い詰め、自暴自棄になった咲子が犯人を刺すのを阻止できず、救急車も呼ばない。さらに、咲子の自傷行為も止められず傍観しているだけ(咲子が殺されるのは阻止できたが)。元警察犬のマサを使っての追跡中に探偵社の報告するべきだし。
 犯人が留学することを知らなかった様子に気づかず、クライマックスで犠牲者を増やしただけ
の役立たずと思ったら、二人は助かったとは!
 主人公は倒れている咲子を抱きかかえて泣いているだけだった。早く通報しろ!


 最終シーンの父の墓前で

杏子「今回のような事は、いつだって起こりうるわ。私たちの仕事はそういう仕事なの。真実は人を悲しませることが多いから。
 いつだってやめていいのよ、この仕事」
主人公「ううん、まさか。真実に隠された思いが、人を幸せに出来るかもしれないから」

というカッコつけの台詞の応酬で綺麗にまとめているが、しらけてしまった。

 マサ(声・船越英一郎)の語り(ナレーション)も要らないと思う。
 

【ストーリー】番組サイトより
湾岸地区の倉庫に響く絶叫。瞳に写る炎、転がっている靴、風、そして響き渡る炎の音。その炎を見つめるのは、蓮見加代子(瀧本美織)と、ジャーマンシェパードのマサ(声・船越英一郎)。この1人と1匹に後に降りかかる、心切り裂くような事件のプロローグ―――。


加代子の母・杏子(財前直見)が経営する“蓮見探偵事務所”に、藤実咲子がストーカーの調査と警護の依頼で訪れた。対応した加代子は、咲子が視線を感じるという毎朝のジョギングにマサを伴って同行することに。同行中、大通りから裏通りに差し掛かったとき、視線の先に血まみれの“死体”を発見した。
加代子がその男性の脈を確認すると“無い”。警察に通報しようと携帯を取り出すと何故か圏外だ。現場にマサを残し、警察に通報するため、怖がる咲子と公衆電話を探しに行った加代子。二人が戻ってみると死体は忽然と消え、マサが倒れていた。
死体は何処へ消えたのか? 死体を運び出したにしても、元警察犬のマサを気絶させることは容易なことではない。 .

のちに加代子と咲子は警察から呼び出しを受ける。事情聴取を受ける“死体”の男・井波孝の“面通し”を依頼されたのだ。摩訶不思議な状況に、訳が分からなくなる加代子だが、孝は「暴力団から追われ行方不明となっている兄・洋を救うため、兄が死んだように偽装した」と言う。
腑に落ちない加代子だが、蓮見探偵事務所の面々が通う「BARラ・シーナ」のマスター・椎名悠介(寺脇康文)から、資金運用を託された洋が、ある組織の幹部の金を焦げ付かせたことが発端では? との情報を聞きつける。加代子はマサを気絶させた男の本当の姿を暴くため、本格的な捜査へと乗り出し、嘘の裏にある大きな嘘の謎に迫る。
そして、この事件を皮切りに加代子は自殺とされた亡き父・浩一郎の死の真相に関わっていくこととなる。事件の陰に渦巻く人間の業と欲が、加代子の瞳に炎となって映し出される…。 .



ゲスト 藤実咲子(星野真里)井波孝(窪田正孝)井波洋(大沢健)
脚本 山崎淳也
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詐欺師同然……「計画中の原発は認めない 違う内閣なら政策変更も」

2012-10-10 21:40:31 | 時事
枝野経済産業大臣が「計画中の原発建設を認めない」という考えを改めて示した。
さらに「違う内閣が違う閣議決定をすれば、方針が変わる可能性がある」という認識を示した。


会見での言葉を再現すると、
「野田内閣においては、2030年代、原発ゼロを可能とするよう、あらゆる政策手段を投入し、壱日も早い原発に依存しない社会を目指してまいりますが、これは違う内閣が違う閣議設定をすれば方針は変わる。これはこのテーマに限らず、あらゆる閣議決定について当然の事です」

 耳を疑った。
 2030年代に向けての長期的な方針のはずなのに、内閣が変わって閣議決定が変われば、方針が変わる可能性があるって、いつ変わることがあっても不思議でない現状では、方針がないに等しい。せめて、「民主党が政権を維持している間は」ならば、選挙によって民主党が否定された結果方針変更となり民意が反映される要素があるが、民主党内の都合で内閣が変わる現状では、まったく国民の声が反映されない。
 これでは方針はないに等しく、それを信用しろというのは詐欺師同然。(いや詐欺師の方がもっとうまく言う)
 しかも、長期方針だけでなく、すべての閣議決定について当然の事と言い切るとは、その神経を疑ってしまう。
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横並び教育って

2012-10-09 19:44:31 | 時事
今日のNHK『スタジオパークからこんにちは』に乙武洋匡さんが出演されていました。

 説明するまでもないと思いますが、番組サイトでの紹介文を引用させて頂きます。

1976年、東京都生まれ。
大学在学中、自身の経験を綴った「五体不満足」が多くの人々の共感を呼び、500万部を超える大ベストセラーとなる。大学卒業後は、スポーツライターとして活躍したのち、教員免許を取得し東京都杉並区に任期付き教員として採用され、2007年4月から3年間、公立小学校で教師として働く。
2010年、教師経験をもとにした小説「だいじょうぶ3組」を発表。現在は執筆・講演活動を中心に活動している。


 私も一応、仕事中だったので番組すべてを観ることはできませんでしたが、やはり、感じるところが大きいです。
 まず、乙武さんのこの言葉、
「私が自分の存在をありがたいと思っていますが、両親が愛情をいっぱい注いでそんな自分に育ててくれたからで、両親に非常に感謝しています」
というような主旨でした。(表現や言葉は違っているかもしれません)

 それから、乙武さんの教師としてのエピソードの話題になったのですが、

 サクラがあまりに綺麗だったので、じゃあ桜を観ながら学級会をしようと思い、ブルーシートやホワイトボードを持ち出して学級会を行ったのですが、学年主任から「勝手なことをするな」と叱られたそうです。
 理由を聞くと、「他のクラスの保護者から、あるクラスはそういうことをやって、うちのクラスではしないのは何故か」という質問(クレーム)があると困るからだ」と言われたそうです。この時、乙武さんは、自分が思っていた以上に横並び教育が根付いていると感じたそうです。
 「横並び」という言葉は、軽蔑や揶揄の異が込められた表現ですが、善意に言い換えると「平等」になるかもしれません。「平等な教育」というと筋が通っているように思えますが、何かおかしいと思いませんか?

 まず、「桜を観ながらの学級会ですが、この行為が悪いこと、責められることなのか?」ということです。通常の授業なら、効率が悪いというマイナスが考えられますが、学級会なら支障はなさそうです。ブルーシートは汚れるかもしれませんが。
 学年主任さんも、そのこと自体を責めているわけではありませんね。クラスによって授業(教育)が違うとまずいという考えなのです。
 先ほども述べましたが、確かに「平等な教育」は理想だと思います。この場合を考えると、確かに乙武先生の授業と他のクラスの授業、どちらが良いのかは一概には言えませんが、乙武先生の授業の方が人気があると考えられます。となると、確かに平等ではありません。
 で、乙武先生に「勝手なことはするな」となるわけですが、その授業自体に非がないとして、乙武先生の授業の方が支持されるとしたら、他のクラスもすればいいんじゃないかとならないんでしょうか?
 これが、野外での学級会という型破りな授業だったので抵抗があるかもしれませんが、例えば数学の教師のA先生とB先生がいて、A先生の授業はは面白くて分かりやすく、B先生の授業は退屈で分かりにくかったとしたら、A先生の授業が支持されるのは間違いなく、B先生のクラスからは不平が起こると考えられます。
 この場合、学年主任は「他のクラスから質問(クレーム)が来るので、そんな良い授業はしないでください」と注意するのでしょうか?
 通常の企業論理、経済論理だと質の落ちる商品や企業は淘汰されるので、何とかそうならないように自社の製品の質を上げようとするでしょう。
 個人のレベルなので、皆が質の高い授業を均一に行うのは難しいですが、質の高い授業を目指すべきで、「教師」という立場ならそういう姿勢であるべきです。(現状は授業の質を高めることに専念できない環境であるということは理解できます。しかし、長年と言うと偉そうですが、16年PTA活動を一生懸命やっていて、少し甘えがあると時々感じます)

 もう一点、学年主任の言葉におかしなことを感じます。
 なぜ「保護者から」クレームがあると困るのでしょう。生徒や児童からではないんでしょうか?


 もうひとつのエピソードもご紹介します。
 体育大会で、クラスの士気を感じられなかった乙武先生は、一生懸命やって欲しいという思いから、全種目で1位を取ったら坊主頭になると宣言したそうです。その言葉に、生徒たちは燃え頑張り、11種目中8種目で1位を取りました。
 おそらく、生徒たちも乙武先生を坊主頭にしようと頑張ったのではなく、その言葉に乙武先生の心意気を感じ、それに報いようとしたのだと思います。
 全種目制覇ではないので、坊主頭になる義務はないのですが、乙武先生も一生懸命頑張った生徒たちに感激して坊主頭になりました。
 ところが、今度は職員会議で絞られたそうです。「生徒のやる気を出させるのに、もっと他にやり方があったのではないか」という「もっともな理由」
(←私の感想です)でした。
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『平清盛』 第39話「兎丸無念」

2012-10-07 21:01:16 | ドラマ・映画
生き急ぐ清盛、修羅の道を行くのか?
……………………………有耶無耶にしてしまった清盛の信念


清盛と兎丸の決別
・禿による恐怖政治について意見が対立
・大輪田泊の工事を急かす清盛と、民や工夫の身を思う兎丸、二人の間に決定的な亀裂が入る
・盛国の忠告も耳を貸さない清盛
・桃李の説得に揺れる心の兎丸

有耶無耶(うやむや)になった清盛の信念
清盛「わしの目指す国の形は、既に若き日の兎丸が思い描いておったもの。その国の形が出来た時、すべては報われよう」
清盛「天下に示すのじゃ。この国の頂に立つのは、この平清盛であることを」
清盛「長年我らを見下してきた王家や朝廷を見返す絶好の機会。瑣末なことでこの機会を逃すわけにはゆかん」
兎丸「悪をひっくり返そうと思ってお前についてきた。お前のやってることは悪や。悪と悪がひっくり返っても、また悪がてっぺんに登るだけや」
兎丸「お前の国造りは、盗賊がモノ盗むんとおんなじや」
清盛「分かるまい、お前にも兎丸にも誰にも…」


 これら、特に清盛の言葉から察すると、清盛の目指す国造りが「生き生きとした豊かな国を作る」から「平家がのし上がること」に変質してしまったようだ。
 よく分からないのは、「分かるまい、お前にも兎丸にも誰にも…」という清盛の言葉。
 何が分からないのか?清盛の目指す国造りが何なのか?それとも、それを目指すために非常に徹している清盛の覚悟なのか?

 さらによく分からないのは、兎丸が亡くなった後の
「それでも進みますか、この修羅の道を。殿のお心に中にだけある国に向かって進み続ける覚悟が、お有りにございまするか?……………………………ならば、盛国も共に、命を賭して殿に食らいつき、この修羅の道を共に参ります」という盛国の言葉だ。
 修羅の道とは、清盛の描く国造りのために、非道なことに手に染めることなのだろうか。それとも、目指す国造りが「豊かな国」ではなく「この国の頂点に立つこと」になってしまったことなのか?


 結局、二人が決別し、二人が再び対決することなく、禿の暴走によって兎丸が命を落としてしまうことで、清盛の信念がどういうものだったかを有耶無耶にしてしまった。
 清盛が、工事を焦ったために、事故が起こり、兎丸が工夫を庇って命を落としてしまったとかいうのなら、兎丸の死の原因を清盛が背負うことになるが、禿の暴走で兎丸が命を落としたのでは、あまりにも間接的である。せめて、禿に指示を出していたのが清盛自身であったならと思うが、「禿の暴走」で済ませてしまうのは、あまりにもきれいごと過ぎる。

 挙句の果てに、
「兎丸の志こそが、新しき泊の礎じゃ」と言って、人柱の代わりに経文を書いた石を沈めると詭弁を使い、さらに、清盛と兎丸との回想シーンを流し、
若き日の兎丸の「生き生きと豊かなよい国を作る、その手伝いならしたっても良い(しても良い)」の言葉を思い出し、綺麗にまとめてしまった。
 最低の捌き方であった。


 あまりの出来だったので、他の事に言及する気にならないが、あとで振り返る場合もあると思うので、少しだけ。

弁慶と義経(遮那王)の出会い
・運命の出会い(再会)であったが、刀狩り(千人斬り)より義経(牛若)を探すのが第一であろう
・急いでいるのなら、逃げればよいのでは?
・弁慶と義経の間に、何のために禿が乱入?……暗殺集団と化した禿の暴走振りを表現したのだろうか
・二人の会話は、漫才ぽかった……賛否両論はあると思うが、私は好きである

西行、久々の登場
 驕れる平家に、行く末に陰を感じる

★トラックバックする際、他の方のブログの記事を読んで、なるほどと思ったこと
①時忠の禿を容認したことがしっぺ返しとなって、兎丸を失ってしまったこと
②よいことをしたという思いの表情で庭陰に禿の顔が哀れ
③禿を収束させるために兎丸を利用した脚本

 どれも納得でき、うまいなあと思える脚本だ。
 しかし、そういった上手さでその場限りの面白さに走り、本筋を蔑ろにしているのが、残念でもあり、腹立たしささえ感じてしまう今回の大河である。



【ストーリー】番組サイトより
 京では、平家の密偵・禿(かむろ)の振る舞いに、人々は恐れをなしていた。
 五条大橋で禿退治をしていた弁慶(青木崇高)は、遮那王(のちの義経:神木隆之介)と運命的な出会いを果たす。
 そのころ、福原では大輪田泊の工事が大詰めを迎えていた。清盛(松山ケンイチ)は宋と正式な国交を結ぼうとするが、朝廷は猛反対。後白河法皇(松田翔太)だけが理解を示す。宋からの手紙で外交使節が三か月後に来日することを知り、清盛は工事を急ぐように命じる。だが事故で多くのけが人が出ると、兎丸(加藤浩次)は志を忘れ、自らの利を追求しているだけだと清盛を責める。清盛と決裂をし、一人で酒を飲む兎丸の前に、時忠(森田剛)が放った禿が現れる。
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A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その5

2012-10-07 12:52:22 | 将棋
 簡単に振り返るつもりでしたが、幸か不幸か、第17期竜王戦第7局、森内×渡辺戦と同一進行だったので、予定外に細かくなってしまいました。そういう理由はあるのですが、もともと、「簡潔」という能力がないので、森内×渡辺戦がなくてもこういう状況になっているような気がします。

【参考記事】
「A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その4」
「A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その3 ~第17期竜王戦第7局と同一~」(10月1日記事)
「A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その2」(9月30日記事)
「A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その1【追記あり】」(9月26日記事)


 第4図は、後手の羽生二冠が駒の損得より角取り(△4六同馬)と手番を優先させた手に対し、▲4八飛と角取りを受けつつ馬当たりと逆先を取ったところ。
 自陣に飛車を手放した手だが、間接的に玉頭を睨んでおり、うっかり△7三馬と引きようものなら、▲2三角成△同金▲4三飛成で大変なことになる。当然羽生二冠も△2四馬と引く。
 この辺りは前例はあり、ここで▲2三歩が2局、▲4四歩が1局あるとのこと。▲2三歩を初めて指したのが後手番の羽生二冠であるが、羽生二冠は▲郷田棋王×△羽生二冠戦(2012年7月・大和証券杯最強戦)では郷田棋王に▲4四歩とされ敗れている。
 本局の谷川九段は▲2三歩を選択。これに△同金は▲同角成~▲4三飛成なので△3二金とよろけるが、▲3三歩と追撃され、こんな所に拠点を作られては持ちこたえられないので△3三同金とし▲2二歩成(第5図)のと金作りを甘受する。


 第5図の局面については、中継サイトの解説を引用させていただくと
「駒割りは先手の銀得。さらにと金もできている。普通に考えれば先手が大優勢といってもおかしくない。しかし、先手は8八銀が壁形で4八飛やその周辺の金銀の働きが悪い。後手が、先手の悪形が解消される前に手を作れるかどうかの勝負」とある。
 先手陣の右側の金銀は飛車の打ち込みを防いでいるが玉の直接の守備には働いていない。左翼の銀は壁になっているだけに等しい。その結果、5七の地点が玉1枚で支えることになっており、しかも飛車のコビンにもなっており、先手の最弱点となっている。6筋の玉頭の隙間も大きな弱みだ。
 後手としては、その弱点を突きつつ先手の飛車を働かせたくない。そこで、△4四桂。この手は先手の飛車の利きを遮りつつ、次に△5六桂打の王手飛車を狙っている。この手で前例は1局となったとのこと。
 「▲羽生善治四冠(当時)-△三浦弘行八段戦(2005年5月・棋聖戦)だ。その将棋は先手の羽生が勝っているが、後手の三浦が途中詰みを逃がしたもので、内容的には後手が勝っていたと言われている。
 (局後の感想戦では)△4四桂が結果的に働かなかったようだ。「本譜で悪いとすれば単に△5二玉としてどうか、というところですか」と羽生。」
…中継サイトより)
 △4四桂は5六の地点だけ利いているのに対して、▲6七金は5七と5六の2地点をカバーしている。また、△4四桂は先手の飛車の働きを抑制しており、▲6七金は先手玉の懐を広げている。これらを総じて考えると、この2手の交換は若干先手が得しているように思う。
 ▲6七金以下、△5二玉▲6四歩△5四歩▲7八玉△6四歩▲7七銀(第6図)と進む。

 ここまで進むと、先手の左翼の壁になっていた金銀が働き玉も5七の薄みから逃れ安定したのに対し、後手玉は6、7筋の薄みが気になる。駒損の後手の主張点がなくなりつつあるように思える。△4四桂の狙いの半分の△5六桂打の狙いも消えている。

 続く。
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A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その4

2012-10-06 18:59:21 | 将棋

 62手目まで「その3」で紹介した第17期竜王戦第7局▲森内竜王×△渡辺六段(タイトル・段位は当時のもの)戦と同じ手順を踏襲している。
 前回記事を復習すると、この竜王戦の2005年の段階でも、この定跡はかなり確立されていて、第7局も55手目までそれに従って進行していた。56手目の△8八歩が後の先手玉の脱出ルートをあらかじめふさいでおくという手で、渡辺六段の新手であった。この新手が現在のこの戦型での定跡となっている。
 森内×渡辺戦で問題となったのが第2-4図。飛車を取れれば後手良しと考えていたが、実際にはそうではなく、この△4四同飛に107分の長考をしている。渡辺六段はここで▲6五歩と桂を取られる手を心配していた。
 自戦記より引用すると
「▲6五歩以下△4六飛▲4五角△2二金に▲5八桂(第3図)が妙手。


この桂は△4五飛▲同桂△1八馬の時に△6六香を消していて、▲4七歩より勝る。
 その後、新手△8八歩は定跡となり第3図から△3七馬▲4六桂△同馬で銀損ながらも後手も指せる、という結論になっている。
 ただし、対局中はこの△3七馬で指せるという発想はなかったので、どうなっていたか。
 自信はなかったが、仕方なく△4四同飛(第2-4図)と指したら森内竜王は▲6五歩ではなく▲4五銀と来た。この▲4五銀がどういう手なのかと言う前に、恐れていた▲6五歩ではなかったので、えらくほっとしたという記憶がある」

 実戦は▲4五銀以下△8四飛▲3五桂△2四金(好手)▲4三桂成△4二歩▲3三成桂△5二玉と進み後手優勢となった。

 谷川×羽生戦は、渡辺六段が危惧していた▲6五歩△4六飛▲4五角△2二金に▲5八桂と進み、その後も定跡手順となっている△3七馬▲4六桂△同馬を踏襲した。
 この辺り、逆先を取る応酬で、第3図では後手は△4九飛成▲同銀△3七馬の金・桂との2枚換えより桂2枚との2枚換えを選択する。
 これに対し先手も▲4八飛(第4図)と角取りを受けつつ馬に当て返す。


 やはり、続く……

【参考記事】
「A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その3 ~第17期竜王戦第7局と同一~」(10月1日記事)
「A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その2」(9月30日記事)
「A級順位戦 谷川九段×羽生二冠 その1【追記あり】」(9月26日記事)
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『将棋世界』8月号 実戦に役立つ5手7手詰 【解答】

2012-10-06 00:18:46 | 詰将棋
『将棋世界』8月号 実戦に役立つ5手7手詰(9月27日記事)の解答です。



 初図で第一感で▲3四馬△同玉▲3五馬の筋が浮かびます。こう進めば詰みですが、▲3四馬(第一感図)に


△1五玉(失敗図)とかわされると


詰みません。

 そこで、一工夫が必要になります。
 ▲3三馬と寄り道をして、△2五玉(途中図)と2五の桂馬を取らせるのがテクニックです。

2五の桂馬が消えたので、馬の利きが1六まで通り△1五玉と逃げられても▲1六玉で詰みます。で、▲3四馬に△同玉となり目論見通り▲3五金で詰み上がります。


 この作品の素晴らしいのは、2五の桂馬が単なる邪魔駒ではないことです。

 仮定図は初図から2五の桂馬を取り除いたものですが、ここから▲3三馬だと△1三玉と逃げられて不詰。また、▲3四馬でもやはり△1三玉で詰みません。


【詰手順】
▲3三馬△2五玉▲3四馬△同玉▲3五金まで、5手詰





 初図より、平凡に▲2五銀は△1五玉で不詰。また▲2五龍だと今度は△同銀▲同銀△1五玉で詰みません。
 1六の駒が銀なので下手に動くと脇を抜かれてしまうのです。そこで、相手の守備駒も銀なので、その弱点を突いて▲1五歩△同銀▲2五玉が手筋です。
 ところが、3四に龍がいるので▲1五歩が打ち歩詰となってしまうのです。
 そこで、攻め駒を捨てる攻撃力減少化の手筋を駆使します。

 ▲2三龍です。
 これには△同歩の一手でこれで龍の利きがなくなったので、

▲1五歩が打ち歩詰とならず、先ほどの手筋が使えます。
 △1五同銀に▲2五銀で詰みです。



【詰手順】
▲2三龍△同歩▲1五歩△同銀▲2五銀まで、5手詰
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