英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『相棒season12』 第18話「待ちぼうけ」

2014-03-14 22:29:55 | ドラマ・映画
反転する構図、逆転する情景
「昨夜、ここに来客があったかどうか、わかりませんか?」
「だから“わからない”って言ったじゃないですかぁ。一度で済ませてほしいなあ」
「“言った”って…誰に?」
「今朝来た二人の刑事さんですよぉ」
「「「えぇっ!」」」(伊丹、芹沢、米沢が声を揃えて)


この管理人の言葉で、これまでの構図が逆転した。

これまでの構図 
ひなびたローカル線の駅で列車待ちに時間を持て余し、同じく列車を待っている男性に話しかける右京
カフェで待ちぼうけを食らっている女性をナンパする(声を掛ける)
非番の特命係をよそに、捜査に励む伊丹


「特命が邪魔しないと…早く進むぜ」と、悦に入る伊丹だったが……
※猪突型の伊丹が、珍しく熟慮を重ねる
「大事なのは観察だ。一見何気ない景色でも、細部までよ~く観察すれば、必ず、事件解決への糸口がある」
「よく見ろ、靴が半分脱げ掛けている。なぜだと思う」
「ポケットに突っこんであるのは、手袋か?なぜ、はめていない?
 細かい点が気になっちまうのが、俺の悪い癖だ」
「命令に縛られるな。自分で考えて動け」
「手袋がポケットの中に突っこんだままだったのは、直前まで室内にいたからだ。
 靴は脱げかかったんじゃあない。ちゃんと履く余裕がなかった。
 つまり被害者は誰かの家に上がっていて、逃げ出した。
 ホシは近くに住んでいる。方角は…こっちだ」

しかし、右京たちはとうの昔に、しかも、伊丹が熟慮を重ねた推理をチャッチャとこなし、犯人追跡を始めていたとは……
視聴者は、≪伊丹が手掛けている事件の関係者に、休暇中の特命係が事件関係者に偶然遭遇した≫と見ていたが、実は必然の捜査(追求)だったのだ。

  ………まさに、景色の反転!


そして、右京の必死の説得
「あなたは、ゲームを見切るのが早すぎます」
奇跡とも思える大逆転の一着を放ち、盤面を解説しながら黒の駒を白にひっくり返していく。
「大事なのは、どんなに絶望的な状況に思われても投げ出さないことです。
 無様でも、惨めでも、あきらめずに、もがき続けることです。
 そうすれば………(盤面が、ほぼ白一色になる)
 …………奇跡が起きることもあります」


友部が、携帯の電源を入れると、メールの着信が来ていた。
「あなたが、たとえどんな絶望におちいったのだとしても、
 私はあなたを待ち続けます。

 今度こそ」


場面転換し、
「家には帰らない。私は、彼と待ち合わせしているの。
 ………何時間でも、何日でも待つの」

と夫に告げる雪美。

「彼女が本当に望んでいるのは、あなたと共に苦労をすることなのではありまえんか。
 たとえ棘の道であっても、愛する人と共に歩むことを幸せと感じる人もいるのではないでしょうか」
完成間近の白いハイヒールを取り出し、完成させなくていいのかと問う。
列車が発車し、友部は膝を折る。

友部は雪美の元に行き、ヒールを渡す。
雪美はうれしそうにそれを履く。

交番へ出頭する友部に駆け寄り、雪美は友部の腕を取り寄り添う。
右京、享、熱く握手をする。


伊丹、ローカル線の駅に到着。
「あんた、何やってんの?
 次は、明日の6時半だ。干し芋、食うか?」

  ……“待ちぼうけ”を食らう伊丹であった。

 いやあ、色字に、太字に、大字ばかりになってしまった。
 これだけ必死に熱く犯人を励ます右京は初めて見た気がする。
 オセロでの奇跡の一着を打ちながら、“あきらめずにもがき続ければ、奇跡が起きることもある”と訴える。
 心を揺さぶられた。

 友部を信じ寄り添う雪美も良かった。不釣り合いな白いヒール姿も乙女チックで良かった。


さて、(右京が友部に近づいた時に友部が打っていたメールへの)雪美が友部に返信したタイミングがポイント
 右京が必死に説得している頃、「2時間前に返信した」と言っていた。
 つまり享との会話や、享が説得してほしいと頼んだこととは、まったく関与しなかったことになる。
 彼女は友部を強く信頼し、深く愛していたのだ。

 
 若干、意味が薄かった享の説得であったが、彼女の思いを語らせるのに、充分働いた。
 しかし、“不倫”“30歳かな”“初恋の人”“白馬の王子”など、カマを掛けたりナンパしたりと自分のキャラを利用し頑張ったが、「駆け出しのホストみたい」と雪美に言われてしまう。
 やはり、こういう場面は、神部尊(及川光博)の方が良いなあ……

「大変有意義な休日でした」とまとめる右京
・腕の良い時計技師に続いて、腕はもう一歩だけど誠実な靴職人を得られた右京であった。
・享は、右京の相棒としての実力を見せ(私にすると、“出来る助手というだけの相棒”は面白くないが)、右京と熱い握手ができた。
・伊丹は、一応“出来る刑事”だと示せた。


★その他、洒落た会話や右京のメッセージが目立った

「“甘さ控えめ”と“微糖”では、どちらが甘さ控えめなんでしょうねえ?」
(“おしるこ、もっと甘いですよぉ”の言葉を受けて)
「おしるこですからねえ」(中途半端な“微糖”よりは、“甘い”ことに価値を持つ「おしるこ」の方がよい)
「人生に、遅すぎるということはないのでしょうねえ」
「(リバーシは)僕は不得手でしてねえ…チェスなら得意なんですが」

オセロで待ったを願う友部に対し
「ダメです」(人生は容易にやり直しができない)

連戦連敗し、全黒(右京の駒)の完敗を喫した友部が
「不得意なんですよね(オセロが)?」
「チェスは得意なんですがねえぇ」
「チェス、どんだけ強いんですか?」

「ヒマか?……あら………ヒマ、通り越して休みかよ」

★被害者について
 ≪殺してくれ≫とも取れるような被害者の非道ぶりだったが、友部の善人ぶり、情状酌量の余地を出すためには仕方がないのかなあ……
 友部と雪美のことを思うと、≪被害者に出会わなければ≫≪一言ぐらい謝ってくれれば≫と思ってしまう。


【ストーリー】番組サイトより
 山奥の田舎駅。鄙びた駅舎で電車を待つ右京(水谷豊)。同じように一人電車を待つ男(太川陽介)に出会う。一方の享(成宮寛貴)は、何時間もカフェで粘る女性(芳本美代子)をナンパ…。どうやら二人はそろって非番のようだ。
 そのころ、捜査一課の伊丹(川原和久)と芹沢(山中崇史)は、前夜遺体で発見された津久井(伏見哲夫)という初老の男性の殺害事件の応援捜査にきていた。芹沢から特命係の二人がそろって休みと聞き、伊丹は邪魔されずに仕事がはかどる、とほくそ笑む。現場を鋭い目でじっくり観察しながら、珍しく冴えた推理を展開していく伊丹だが…。
 右京を相手に身の上話を始めた男・友部は、大昔に靴職人の修業をしていたが、母親が元従業員に金をだまされ、多額の借金を背負い、その返済のため最近までトラック運転手をしていたという。その借金もようやく完済。
 享を相手に立て続けにワインをあおる女性・雪美はメール一通で男性から別れを告げられたばかりの傷心の身だった。雪美はすでに結婚していたが、夫は女遊びに終始。さきほど別れを告げられた男との不倫も夫への復讐かと思いきや、雪美は人生でたった一人の本気で愛した人だったという。
 捜査は、伊丹の名推理と米沢(六角精児)が発見した血痕などから、津久井が殺害される前にいたと思われるアパートを突き止めた。そこには…。

ゲスト:太川陽介、芳本美代子

脚本:古沢良太
監督:近藤俊明

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4 コメント

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コメント遅くなりましたが。。 (koumama)
2014-03-16 21:48:20
今回の相棒は最近の相棒の中で秀逸だったと思います。ドラマの進行も工夫があり面白かったしね。
舞台劇のように
駅の待合室と
喫茶店で 犯人を自首させる 努力をする右京さんと
待ちぼうけしている恋人に必然で近づ享
あとでその行動の意味が分かって (伊丹さんが残念すぎて気の毒だったけど(笑))納得できたし面白かったです。
最近の中では
台本がとてもよくできていたと思いました。
一点だけ (かみしろ)
2014-03-17 00:30:06
>≪殺してくれ≫とも取れるような被害者の非道ぶりだったが、友部の善人ぶり、情状酌量の余地を出すためには仕方がないのかなあ……

あの人物だけが悪目立ちしてしまいましたね。金を返してくれと言われている訳でもないのに、罪悪感の裏返しと判断するにはやりすぎな、AV男優みたいな台詞。騙す積もりで借金したならあの場面でも騙せばいいだろうし、普通に悪かったと思っていれば謝るだろうし。
保証人、わけても連帯保証制度はかなりの悪法だと思います。
古沢氏の脚本 ()
2014-03-17 15:38:59
koumamaさん、こんにちは。

>今回の相棒は最近の相棒の中で秀逸だったと思います。ドラマの進行も工夫があり面白かったしね。

 ええ、今シリーズの中では一番の出来だったと思います。
 白状すると、あの管理人の一言まで、≪場面設定に凝り過ぎ、偶然が起こり過ぎ、あ~あ……≫と思っていました。

>あとでその行動の意味が分かって (伊丹さんが残念すぎて気の毒だったけど(笑))納得できたし面白かったです。

 ええ、情景が反転しました。
 そのうえ、伊丹刑事の道化ぶりも最高でした。

>台本がとてもよくできていたと思いました。

 古沢氏は「リーガルハイ」も書いていますが、相棒でも数多くの秀作を書いています。

.Season12 第18話 「待ちぼうけ」 ゲスト:太川陽介 芳本美代子
Season11 第18話 「BIRTHDAY」 ゲスト:加藤清史郎 左時枝 榊英雄
Season10 第12話 「つきすぎている女」 ゲスト:鈴木杏樹
Season9 第10話 「聖戦」 ゲスト:南果歩 白石美帆
Season8 第18話 「右京、風邪をひく」ゲスト:東風万智子 滝直希
Season7 第15話 「密愛」 ゲスト:岸惠子 国広富之
Season6 第12話 「狙われた女」 ゲスト:鈴木杏樹、MEGUMI、潮哲也、池田政典、久世星佳
Season6 第11話 「ついている女」 ゲスト:鈴木杏樹、MEGUMI、潮哲也、池田政典、久世星佳
Season5 第16話 「イエスタデイ」 ゲスト:林泰文、遊井亮子
Season5 第11話 「バベルの塔〜史上最悪のカウントダウン!」 ゲスト:大塚寧々、遠藤章造、寺島進、杉本哲太、中村綾
Season5 第7話 「剣聖」 ゲスト:原千晶、誠直也、亀石征一郎
Season5 第2話 「スウィートホーム」 ゲスト:国分佐智子、夏生ゆうな
Season4 第19話 「ついてない女」 ゲスト:鈴木杏樹
Season4 第16話 「天才の系譜」 ゲスト:原沙知絵、不破万作
Season4 第10話 「殺人生中継」 ゲスト:宮地真緒、竹井みどり
Season4 第8話 「監禁」 ゲスト:酒井敏也、佐藤江梨子
Season4 第2話 「殺人講義」 ゲスト:石橋蓮司

ただ、「聖戦」は駄作だと思います。
無理やり、極悪人 ()
2014-03-17 15:45:04
かみしろさん、こんにちは。

>金を返してくれと言われている訳でもないのに、罪悪感の裏返しと判断するにはやりすぎな、AV男優みたいな台詞。騙す積もりで借金したならあの場面でも騙せばいいだろうし、普通に悪かったと思っていれば謝るだろうし。

 「一言謝れば許す」と言っているのだから、普通の人なら心から詫びるでしょうし、悪人なら表面だけでも謝るでしょう。もう無理やり極悪人に仕立てあげてしまいました。
 情状酌量のためなのでしょうが、強引でしたね。

>保証人、わけても連帯保証制度はかなりの悪法だと思います。

 ええ。金を貸す側の為の法律ですね。

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