第2図より△1四香(最善手と考えられる)とせず、森内九段は△5三銀。この手は後手飛車の横利きを通しつつ、先手飛車の捌きを押さえる手厚い手であるが、前記事で書いたように先手飛車の捌きは現時点では怖くないので、1四の歩を払う方が急務であったようだ。
先手としては、足掛かりの1四の歩を残したまま▲2七桂と攻めの継続を図れたのは大きかった。
第2図より△5三銀▲2七桂に森内九段は△2六銀とかわしたが、控え室では角道を遮りながら中央へ駒を進める△4六銀が本命とされていた。△4六銀に▲4六同角△同成桂△同飛の2枚換えが気になるが、直後に△3七馬の飛車桂両取があるので大丈夫。 △2六銀は2枚換えの筋を残しておくより、△2六銀とかわして1八の香を押さえておく手で、無理のない手であると言える。
問題は次の▲1五桂に△1七歩(第3図)と打った手だった。
この手では△3五歩とすべきだった。△1七歩も△3五歩も香の利きを止めるか角の利きを止めるかの差はあるが、端攻めの緩和を図る趣旨では同じ。ただ、△3五歩は角の利きを止めただけなのに対して、△1七歩は香取りや桂取りになっていて効率は良さそうだ。
しかし、△1七歩以下▲1三銀△3一玉▲2三桂成△同金▲2四銀成と進み、森内九段は愕然とすることになる。
まず△1七歩の場合、直接1三に利いている数が2枚なので(△3五歩と止めれば1八の香の利きは先手の1五の桂が遮っている1枚)、▲1三銀と打ち込む手が生じている。ただ、本来ならこういった類の駒を打ち込む手は取らずにかわせば打った駒が空振りになることが多い。
ところが、本局の場合、▲1三銀△3一玉に▲2三桂成と捨てて△同金に▲2四銀成とする手が成立してしまった。金取りの先手になっており、角道が強力で2筋1筋は先手が制している。さらに、玉が下段に落とされたので、後手の主張であった玉上部の厚みが生きてこない展開となってしまったのだ。
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