英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2017柔道世界選手権 頻繁なルール改正と審判の未熟さ

2017-09-02 17:55:38 | スポーツ
 ルール改正の頻度は、競技によって大きな差がある。

 野球、サッカー、テニス、バスケットボール、陸上競技、競泳などは改正が少ない。
 私の思いつく範囲では(用具・道具の規定は除く)、野球だと(グローバルではないかもしれないが)ホームベース上での衝突行為の防止、延長戦の短縮など。サッカーは延長戦のゴールデンゴールの採否。テニスはタイブレークの導入。バスケットボールは3Pシュート導入、30秒ルール→24秒ルール。陸上競技や水泳はフライングの一発失格(水泳は泳法規定の変更もある)……(漏れているかもしれません、ご了解を)。

 ルール改正が多いのは、レスリング、柔道、バレーボール、スキーのノルディック複合が思い当たる。
 改正の理由は、純粋な競技内容の質の向上を図ったものもあるが、テレビ中継時間を意識したゲームのスピーディー化(ラリーポイント制への移行やタイブレークの採用)や、プレイのレベルが上がったことによるもの(体操の採点方法、ビデオ判定)、テレビ中継や五輪採用の為一般受けするような変更も多い。
 しかし、競技組織の力関係によって改変されることも多々ある。有名なのは「スキーのノルディック複合では、日本が得意なジャンプの得点の比率削減」であろう。遠い昔、日本が強かったころのバレーボールでの「マーカー幅の削減」も該当しそうだ。

 今回の柔道の改正はどうなのだろうか。
 基本方針の「一本取って、勝利する」は、“質の向上”を図るものと考えられる。
 しかし、各国の綱引きによるルール改変が行なわれてきた過去の例を考えると、単純に質の向上を図ったものとは思いにくい。

 まあ、連盟の本音はともかく、今回のルール改正によって、「指導」の比重が高くなったように感じる
 一見、「本戦の4分間では技のポイントのみで勝敗が決せられる」で技重視のように思えるが、「有効の廃止」「男子の試合時間短縮」でゴールデンスコア方式(以後“GS”と表記)に入るケースが増える。GSでは(基本的に)指導数に差が付けば勝敗が決するので、指導の重要度が高くなる。さらに、本戦においても反則負けになる指導数が4から3に少なくなったことも、指導の重要度アップの一因となっている(詳しくは、「2017柔道世界選手権 新ルールの功罪」をご覧ください)


 指導は審判の主観に負うことが多く、試合序盤に出される指導など「試合を動かすためのアクセント」のように、審判の気分で出されることも多い。
 とにかく、「何故?」と思われる判定が多いのである。「投げ」に関しても疑問に思うことは多いが、「指導」に関してはより主観が大きくなるので始末が悪い。
 「2017柔道世界選手権 新ルールの功罪」でも不平を述べたが、昨夜の中継でも非常に不満に感じたので、先の記事と重複が大きいとは思いながらも、今回の記事を書いてしまいました。


女子78㎏級 3位決定戦 佐藤瑠香-アントマルチ(キューバ)戦
 1分40秒に裏投げでアントマルチが技あり
 2分01秒アントマルチが「場外」指導を取られる(主審ではなく他の審判の指示……主審はインカムを装着している)
 残り1分30秒(開始2分30秒)辺りからは、アントマルチは腰を引き攻勢の意欲はなく、佐藤の技に対応することに専念し始める
 残り55秒、アントマルチが内股から関節技に持ち込もうとする(この技だけは攻勢の意欲あり)
 膠着状態によって中断。この時、アントマルチは10秒以上仰向けのままで、体力の回復を図る。
 残り40秒、アントマルチが掛け逃げっぽい払い腰で倒れ込む。この時、アントマルチは約10秒起き上がらない
 この後、腰を引き攻めの意思がないアントマルチ。残り20秒で掛け逃げっぽい技を出す。この時、帯を直すふりをして20秒ほど起き上がらない。 
 残り16秒、佐藤が技を掛けるが、焦りと相手の引き腰で形にならず、場外。さらに15秒ほど場内に戻らず休むアントマルチ。
 残り15秒から必死に攻める佐藤に対し、防御するだけのアントマルチ。
 残り3秒、両者場外による中断(故意ではないので指導にはならない)。
 ゆっくり起き上がり、帯をゆっくり直して休むアントマルチ。
 試合再開、攻勢に出る佐藤に対し逃げるアントマルチ。ここでようやく「指導」(他の審判の指示)が出される。
 試合再開、しかし残り2秒では技を掛けられず、試合終了。

 残り40秒で「掛け逃げ」で指導を出すのが妥当であろう。
 さらに、その後も専守と掛け逃げの時間が続き、少なくとも残り20秒で指導が出されるべき。
 2度目の指導が出ても3度目の指導が出るのは難しいが、指導2回となればアントマルチも攻勢を取るしかなく、逆転のチャンスも高かった。


 この試合に限らず、疑問に感じる「指導」が多い。
 男子90㎏級の決勝戦も、GSで指導で勝敗が決まった。
 “首抜き”の指導かと思われた(ズガンク選手と観客が勝手に思い込んだ?)が、指導を受けたのはズガンクで、マイドフ選手の勝ちとなり、金メダル。何の「指導」だったのかは、実況も解説もなかった。

 そもそも、納得のいかない種類の「指導」が多い
首抜き……奥襟を取られると窮屈な姿勢になり、この体勢を首を抜いて逃れるとこの「首抜き」の指導を取られる。
 攻勢に出るのは難しい非常に不利な体勢で、防御するのが精一杯。さらに、この体勢が続き守勢が続くと、「消極的」指導が出される。
 非常に理不尽である。

場外……故意に場外に出るとこの指導を受ける。
 しかし、場外際で技を掛ける際に足を引いて完全に場外になってしまうという場合も、指導を取られることが多い。
 そもそも“場外”と言っても、片方の選手が場内に居れば試合は継続するし、技の途中ならば両者が完全に場外に出ても継続されるという非常にあやふやな規定。はっきり、逃げた故意の時だけ指導を出すべきだ

足取り……少し前に、手を使って下半身を攻撃するのが禁止になり、以前は一発反則負けになったが、緩和された。
 しかし、技や防御の流れで手が足に振れてしまった場合でも、“鬼の首を取った”ように即座に「指導」を発動する。

 逆に「組み合わない」という指導が出されたのをほとんど見なかった。「指導」から除外されたのだろうか?

 私は、不利な組み手になると払いのける行動こそ、厳しく防止して欲しいと思っている。


 とにかく、柔道を見ていると、審判の未熟さが目立ち、ストレスを感じる。私のストレスは別にして、おかしな判定で勝つべき選手が敗北するのはあってはならない。
 この審判の未熟さは、頻繁なルール改正によるものが大きい。熟練するまでにさらに改正されてしまうのである。


 五輪が終わるたびに改正するのは、競技としてのプライドを感じない。
コメント (3)
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