英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その5

2013-07-05 00:23:26 | 将棋
『電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その1』
『電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その2』
『電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その3』
『電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その4』の続きです。


 ▲7七玉!
提供されていたボンクラーズ(プエラαの前身)を研究(対局)して、塚田九段は「玉を追わなければ、入玉はしない」という感触を得ていたが、▲7七玉は塚田九段の思惑を打ち砕いた。


 『その4』と同じ局面、同じような文章………ごめんなさい、同じです。使い回しました。今回は、プエラαの指し手中心になりそうです。ただ、▲7七玉を考える前に、やや気になるプエラαの指し手がありましたので、局面を少しさかのぼります。


 第11図は塚田九段が△6九金と飛車を取りに行った手だが、その直前の▲1四銀が今考えると気になる手だ。『その3』で私は「着実に駒を確保しに来た手で、しかも、▲2三銀成と歩を取った手も2四の銀取りになっており、可能性は低いが後手玉に迫る手にもなっており、当然の一手のように思える」と記している。
 しかし、▲1四銀では飛車を助ける▲7七桂もありそうだ。この手で、飛車が助かるかどうか、また、先手玉が大丈夫なのか、はっきり分からないが、大丈夫のように思える。
 もし、▲7七桂が成立したと仮定すると、プエラαは、『飛車(遊び駒)1枚<金(後手が飛車を取る時に手に入る)+歩+「先手を取りながら後手玉に迫れる」』と判断したのではないだろうか。これは、通常の中盤の形勢判断に基づいているように考えられる。
 実際、飛車取りを放置して、▲2三銀成△2五銀▲2四成銀△1六銀を指してから、▲7七玉を指している。


 ▲7七玉は入玉志向の手だ。後手の塚田九段の飛車取りに打った△6九金が先手玉に迫る手になっているので、それに対応したと考えられるが、上記で述べたように、▲6九金にすぐ反応したわけではない。
 ▲7七玉以外有効な手がなく、▲7七玉が最も価値のある手と判断した「一手のみの判断」なのか、この局面において入玉が一番有効と「方針の決定」なのかは、この一手の段階ではわからない。
 木村八段も述べていた、「▲7七玉と上がったが、次に▲8八玉と指す可能性もある」と。コンピュータは過去の判断や思考に囚われず、断片的に局面を捉える(直前の▲7七玉を尊重しない)ので、「玉の位置は8八の方が安定している」や「後手の成桂や成香から遠ざかったほうが良い」などと判断して、▲8八玉と指すかもしれない。

 しかし、そういった期待を粉砕するかのごとく、プエラαは▲9五銀と玉の脱出口を開いた後は、駒を取り返すなど後手の手に最低限の対応をするだけで、ほぼ一目散に8六~7五~……~9一まで入玉させてしまった。

 開発者の伊藤氏の「簡単ではあるが入玉対策も組み込んでいた」と述べていたが、どういう仕組みなのだろうか?
 「入玉スイッチ」があって、その条件、①敵の駒に迫られた、②ある手数(たとえば120手)を超えた、③敵陣の駒を取るなどして一掃した、などの条件をクリアしたら、そのスイッチが入り、入玉を目指すのかと思ったが、勝又六段の推測によると、「玉を一段上部に進出する手の評価点を+300点(数値は推測)に設定しておいたのではないか」ということだ。
 確かに▲7七玉(第12図)の局面ではさしたる有効な手はない。そこで、玉を一段上部進出させるプラス点が大きく評価値がそれより大きな手が存在せず、入玉一直線の指し手になったと考えると、辻褄が合う。

 第13図では、双方入玉が確定しており、後手の塚田九段の駒数は17点。取られそうな駒はないので駒数が減ることはないだろうが、持将棋を持ち込むには7点必要で、小駒7枚か大駒1枚と小駒2枚獲得しなければならない。
 しかし、大駒は移動力があるので捕まえるのは難しいうえ、プエラαの大駒3枚の動きを制限する駒も存在しないので、塚田九段がプエラαの大駒を取るのは至難の業である。となると、5段~7段に存在するプエラαの小駒を、それこそブルドーザーのようにすくい取るしかないが、これも不可能に近いように思われる。
 プエラαとしては、2、3枚取られてもいいので、機械的に小駒を敵陣に進めていけば良い。プエラαの勝利は確定的に思えた…………
コメント (4)
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