曇り。
人間誰しも生まれ変わったらなあ、と夢想するものである。
たとえば女に生まれ変わったらとか、男に生まれ変わったら、億万長者に生まれ変わったら、有名俳優に生まれ変わったら・・・・。
或いはもう一度人生をやり直せれば、今度はちゃんとまじめに勉強もして親孝行もちゃんとして・・・などと思ったりもする。
それだけ人は人生そのものに絡め取られていて、生き直すことが容易ではないということなのかもしれない。
世の中には選ばれなかった人生がたくさん転がっているものなのだ。
この物語はそんな他愛のない夢想がわが身に降りかかってしまうという物語である。
ジェフは40代のある日心臓発作で死んでしまう。
そして次に目がさめたときにはティーネイジャーとして再び自らの人生を生き直すのである。
前世での記憶を頼りに競馬や株で大もうけをして億万長者になったある日彼は再び死んでしまう。
前回死んだのと同じ日に。そしてまた産まれ直すのである。
そうして同じ数奇な運命をたどってきた女性パメラと出会い、やがて彼らは深い愛情とともにリプレイを続けていく。
人間誰しも現状から抜け出したいという、一種の脱出願望とともに人生のやり直しを夢想する。
けれども仮に人生を何度も繰り返すことができたとしても、「次」を思うばかりでは真に生きていくことはできないのである。
結局人はその刹那をも無駄にしないで生きていくこと、「今」を生きることでしか真の人生を創造することはできないのではないか。
この長い輪廻の物語はそんなことを語ってくれているような気がした。