Manaboo 電子政府・電子申請コラム 

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電子申請の仲介サービス、ビジネスとしての可能性は?

2007年04月16日 | 電子政府
役所への申請・届出等(行政手続)がインターネット経由でできるようになる。それが、「(オンライン)電子申請サービス」と言われるものです。原則としては、「申請者本人が電子申請サービスを利用して、手続を完了させる」わけですが、本人に代わって申請してくれる仲介サービスも存在します。

「電子政府コンサルタント」の作者は、行政書士の経歴がある関係で、「電子申請の仲介サービス」についてご質問をいただくことがあります。今回は、「電子申請の仲介サービス」をビジネスとして見た場合の可能性について考えてみたいと思います。


結論から言いますと、既存の仲介サービス業である「士業」と言われる人たちを除けば、

「電子申請の仲介サービス」だけでは、ビジネス市場として成立しにくい

と考えています。その一方で、

「電子商取引」等の既存のサービスと連携することで、「電子申請」を活用した新たな仲介サービスが生まれる可能性がある。

と言えるでしょう。


●縮小傾向にある行政手続の仲介サービス市場

行政手続の仲介サービスを取り巻く環境として、次の三点が挙げられます。

1 行政手続の簡素化・合理化・廃止

 仲介サービスを提供する機会が減り、市場規模は小さくなります。

2 国家資格者(士業)による業務独占

 法令により、他業種が参入しにくい環境にあります。

3 士業の登録者数の増加

 業務独占者(士業)間の競争は、厳しくなっていきます。


関連>>申請・届出等手続の簡素化・合理化に係る各府省の取組について(PDF)法律サービス(士業)の比較


こうした環境下においては、「電子申請」を活用した仲介サービスを行い、利用者から「仲介手数料」を徴収するようなビジネスモデルは、実現可能性も低く、収益の確保も期待できないでしょう。

なぜなら、ニーズがあると思って仲介サービスを始めても、行政手続の簡素化・合理化等により、数年で手続やニーズが無くなってしまうかもしれないからです。

例えば、本ブログでも取り上げている「電子定款の作成・認証」では、多くの代行サービスが存在します。しかし、手続の簡素化・合理化によって、「会社の設立登記に定款の添付は必要ですが、公証人による認証は必要ありません。」となったら、電子定款の代行サービスだけでやっていくことは困難になります。

そのような不安定な状況では、早期のサービス開始に加えて、1、2年で投資金額を回収できる収益性が望めない限り、ビジネスをスタートするべきではありません。

また、法令で定められた「業務独占」があるため、「電子申請」を活用した仲介サービスを開始するにあたっては、士業の存在を無視することができません。しかし、一般的に士業の労働単価は高く、仲介サービスに士業を組み込んでしまうと、ますます収益性は低くなってしまいます。

このようなわけで、作者は、

「電子申請の仲介サービス」だけでは、ビジネス市場として成立しにくい

と考えているのです。


●「電子申請の仲介サービス」によるビジネスモデル


サービスの内容にもよりますが、作者が提案するのは、基本的に次の2つです。

1 公共的な価値に注目して、純粋なビジネスとしてではなく、公益事業としてサービスを実施するモデル

この場合、原則として、構築・運営の費用は国や自治体が負担します。

以前、会社設立ポータルサイト「創業ナビ」の実証実験が行われましたが、予算の関係で廃止となりました。

関連>>会社設立ポータルサイト「創業ナビ」の実証実験の開始について

インターネット上で簡単に会社設立できるポータルサイトであれば、公共的な価値は高いので、政府が費用を負担して維持することができたと思います。

予算についても、他の類似する電子政府サービス(ドリームゲートJ-Net21法務省オンライン申請システムなど)と統合すれば、問題ないでしょう。

つまり、会社設立ポータルサイトの運営は、「ビジネスモデル」の問題と言うよりは、「行政間の縦割り」の問題だったのですね。


2 既存のビジネスと連携して、電子申請仲介サービスは付加価値と位置づける

「電子申請の仲介サービス」だけでは、ビジネス市場として成立しにくいのですが、既存のサービスの中に無料サービスとして組み込むことができれば、政府が力を入れている「電子申請の普及」にも繋がり、ビジネスとして成立する可能性が高くなります。

つまり、本業や売りたい商品・サービスは別にあり、「電子申請」は付加サービスとして位置づけるわけです。

自動車を買った時に、登録手続をディーラーさんがやってくれる。ここでは、商品は「自動車」であり、「登録手続」は付加サービスに過ぎません。

「電子申請」を付加サービスとする例としては、次のようなものが考えられるでしょう。

・オンライントレードのサイトから、電子申告できる
・旅行予約サイトから、パスポート申請できる
・従業員ポータルから、社会保険、年金、税控除などの手続ができる
・会計ソフトから、直接に電子申告できる
・士業の業務ソフトから、直接に電子申請できる

こうしたサービスが出てくれば、国民にとって「電子政府・電子申請」は非常に身近な存在となります。


●民間サービスと電子政府サービスを繋げる仲介サービス

政府が電子申請の普及を推進する中で、行政だけでできることは尽きてきました。

今後の展開としては、次に挙げるような、電子申請サービスと民間サービスを繋ぐために有効な施策を実行していく必要があります。

・現在稼動している電子申請サービスに関する技術情報の公開
・実装規約、テスト環境・ツールの整備
・民間業者や政府関係者が情報・意見交換できる場(コンソーシアム等)の創設
・政府におけるアウトカム指標の設定

仕様など技術情報の公開は、「公開しました」だけでなく、実際にどのような効果があったのかを測定する必要があります。


また、民間サービスと電子政府サービスを繋げる仲介者として、「電子政府・電子申請コーディネーター」のようなサービスも、求められるでしょう。

民間:差別化を図れる新しい付加サービスが欲しい、行政手続の負担を軽減したい
政府:電子申請の利用者を増やしたい、サービスを改善したい

両者のニーズを読み取り、上手く調整して、新たな仲介サービスを実現(システム構築など)できる。

かなり高度なサービスですが、電子政府・電子申請に関する新しいビジネスとして可能性はあると思います。

関連ブログ>>電子政府における仲介者の役割:士業は選択肢の一つに過ぎない

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