アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

クリスタルキング ベスト

2005-06-28 08:10:54 | 音楽
『クリスタルキング ベスト』 クリスタルキング   ☆☆

 先日マンハッタンの旭屋書店に立ち寄った時、懐かしくなってつい買ってしまったクリキンのベストである。『大都会』と『蜃気楼』を聴きたくなって買った。他の曲はほとんど知らない。かなり懐かしかった。完全に懐メロを聴くおやじと化している。

 しかし、言っちゃ悪いが何とも言えないB級感漂うバンドである。当然だがアレンジが当時の歌謡曲だ。全体通して聴くと、『大都会』で一躍ブレークし、何とか売れ線をキープしようとあれこれ方向性を模索し、結局忘れ去られたという哀愁漂う一発屋の物語が見えてくる。ただ、もともとクラブで演歌からロックまで演奏していたという職人的なバンド屋さんだったらしいので、当人達にしてみれば『大都会』で売れただけでもラッキー、と割り切っているかも知れない。

 ところで最初にクリスタルキングというバンド名を聞いた時、ロックファンなら誰でもそうだと思うが私も即座にキング・クリムゾンを連想した。もうこのクリスタルキングというバンド名からしてナイスなB級感炸裂なのだが、この人達はクリムゾンが好きだったりするのだろうか、というのがまだ子供だった私の巨大な疑問だった。とてもそうは思えなかったのだが、どうもクラブ時代にクリムゾンの曲もやっていたらしい。演歌や歌謡曲のレパートリーに混じって、あのサングラスかけたおじさんがクリムゾンの曲を歌っていたのだろうか。『エピタフ』とか歌っていたりしたのだろうか。あのドスのきいた声でこぶしを回しながら、こんふゅーじょん~、うぃるびーまいえぴた~ふ、とか。恐ろしいことである。やっぱり、サビだけ交代してハイトーンになるのだろうか。ロバート・フリップもびっくりだ。しかし、どこかにその演奏を聴いてみたい自分がいる。

 さて、CDをプレイするといきなり『大都会』だ。懐かしいイントロ。途端に炸裂するハイトーンヴォイス。あーあー果ってーしーない~♪ 久々に聴いたが、やはりすごい声だ。素直に感心できる。まあこの声がなかったらクリキンのブレークはなかった。次に『蜃気楼』。この曲も結構好きだった。やはりサビの、田中氏のハイトーンが気持ちいい。これだけ声が出たら歌うの快感だろう。高い声だがか細くならず、迫力があり、しかも中性的で聴きやすいというなかなか得がたいヴォーカリストだ。で、もう一人の低音ヴォーカルは演歌歌手だ。

 さて、田中氏のヴォーカルをもう一度聴いてみたかっただけの私はとりあえず満足したが、やはりすぐ売れなくなったのも分かる。歌が暑苦しいのである。サングラスの演歌歌手はもちろん、ハイトーンの田中氏も非常に魅力的な声でありながら、めいっぱいビブラートをかける朗々とした歌い方がどうも大仰で垢抜けない。

 ところで演歌歌手でも田中氏でもない誰かが歌っている『セシル』という曲があって、これがなかなか良かった。言われなければクリキンだとは誰も思わないだろう。二人のヴォーカリストとは全然違う脱力したさわやかヴォイスで、なかなかチャーミングなメロディの、耳に残る曲である。なんかCMのタイアップ曲だったような気がする。


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