アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

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The River

2006-05-17 19:45:54 | 映画
『The River』 Jean Renoir監督   ☆☆☆★

 名画と名高いルノワール監督の『河』である。英語版のDVDを買って来て鑑賞。名画であることは分かったが、個人的にはそれほど趣味じゃなかった。

 家族と一緒にインドに住む三人の娘の物語。ハリエットはイギリス人家族の長女、ヴァレリーはアメリカ人、メラニーはアメリカ人とインド人の混血。三人は無邪気に仲良く暮らしていたが、アメリカ人のジョン大尉がメラニー家を訪ねてきて、三人とも彼に初恋をすることで変化が起きる。ジョン大尉は年長のヴァレリーと恋仲になり、ハリエットは嫉妬する。メラニーは自分がインド人なのか西洋人なのかで悩んでいるが、戦争で片足を失ったジョン大尉の悩みと共感する。

 基本的には少女達が恋の痛みを覚え、大人になっていく物語だが、少年ボギーがコブラに噛まれて死ぬ、というような事件も起きる。ハリエットはそれを自分のせいだと考え自殺しようとする。またジョン大尉はジョン大尉で片足であることに悩み、他人の憐憫に耐えられず、自分の居場所を見つけられず悶々としている。このように、生きて行く上で人間が通り抜けなければならないさまざまな普遍的な苦しみにこの映画はフォーカスしていく。

 最終的にジョン大尉はアメリカに帰り、三人の娘は少しだけ大人になってガンジス河のほとりで生きていく。全篇にハリエッタの回想風ナレーションが入ったこの映画は、格調高い人間ドラマという趣きである。昔のアメリカの名画でよく見られる、人間賛歌、人生賛歌的なトーンで貫かれている。子供達は悩み、大人達(=親達)は賢明で頼もしい。タイトルにもなっているように、ガンジス河の映像が映画の最初と最後はもちろん、途中にも何度となく挿入され、人生のメタファーとして物語を普遍化する。

 とりたててトリッキーなプロットでもなく、インドの風物や祭儀の映像などをはさみながらゆったり展開するので、映画にスリルを求める人は退屈するかも知れない。しかし要所要所で、普遍的な人間の感情を強く印象付けるシーンが現れる。例えば恋の辛さに耐えかね、ハリエッタが母親に涙ながらに訴えるシーン。「大人になるのがこんなに痛みを伴うものだとは知らなかったわ」それから去っていくジョン大尉にヴァレリーが言う言葉。「あなたを失うから悲しいというより、これを失うのが悲しいの」「これって?」「あなたと一緒にいること、あなたと一緒に満ちたりた思いでここにこうしている、このことよ。まるで夢みたいだわ」

 途中にインドの踊りの映像なんかがあり、程よいエキゾチズムも心地よい。特典映像でマーチン・スコセッシがこの映画を絶賛していた。映像が素晴らしいそうだが、そうだろうか。私に見る目がないのか、あんまり映像美みたいなものは感じなかった。格調高い人間ドラマとかしみじみした情緒とかにそれほど惹かれない私にとっては、正直なところ退屈な部分もあり、結果的にまあまあクラスの映画だった。

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