アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

女性上位時代

2006-05-13 19:44:03 | 音楽
『女性上位時代』 pizzicato five   ☆☆☆☆☆

 なんだか色んなジャケットで出ているらしいピチカート・ファイヴの『女性上位時代』だが、私が持っているのはこのオレンジ色の文字が入っているやつである。CDのプレイボタンを押すといきなり野宮真貴の話し声が聞こえてくるのでびっくりする。それぞれの曲の合間に野宮真貴と小西康陽のインタヴューというか喋りが入っていて、全体に企画物っぽい匂いを漂わせている。私はこの喋りがジャマなので、喋り部分を全部削除したplaylistを作ってiPodで聴いている。

 ピチカート・ファイヴは全アルバムとは言わないが結構あれこれ聴いた結果、私はこの『女性上位時代』が最高傑作であると結論づけている。曲のクオリティもそうだが、特にサウンド・プロダクションが素晴らしい。

 後のアルバムではどんどんゴージャスに、装飾過剰になっていくピチカートのサウンドだが、このアルバムではキリッと締まったストイックさが感じられ、シンプルな音で最大限の効果を上げている。また本格的に導入されたハウスの手法が、シンプルでキャッチーな曲の数々を更に引き立てている。

 ジャズっぽく愛らしい『私のすべて』、クールなダンス・チューン『お早よう』、ひたすらカッコ良くお洒落な『トゥイギー・トゥイギー』と『トゥイギー対ジェイムズ・ボンド』、けだるく優美な『きみになりたい』あたりがキー曲だが、他の曲もそれぞれが趣向が凝らされ、アイデアが盛り込まれている。そしてどの曲もハウス的なミニマリスムの美学を感じさせる。だから『singles』あたりの元気いっぱいのゴージャスかつバブリーなポップスを予想してこのアルバムを聴くと、結構戸惑うことになるかも知れない。お洒落感とセンスの良さはいつもと同じだが、ここにはストイックな抑制と音に対するキビシイ視線が感じられる。贅肉がそぎ落とされ、ひんやりとクールな感触がある。

 ゴージャスでポップ全開のピチカートを聴きたければ他のアルバムかも知れないが、クールでハウスなピチカートなら本作で決まりである。


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