アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

ナイトヴィジョン - スニーカー

2008-12-19 23:03:00 | 
『ナイトヴィジョン - スニーカー』 スティーヴン・キング他   ☆☆

 本棚の奥に眠っていたのを発掘して読了。どういう経緯で入手したのか思い出せないが、自分で買った記憶はないので人からもらったのだろう。モダン・ホラーのアンソロジーである。

 しかし、はっきり言って面白くない。このシリーズ米国では好評で7冊も出ているそうだが、信じがたい。収録されているのはスティーヴン・キング三篇、ダン・シモンズ三篇、ジョージ・R・R・マーティンが長めの一篇。人に薦めたくなるような作品は一つもないが、キング作品のレベルが一番低い。『リブロイド』は昔のアイデアSFみたいな他愛のない小品、表題作の『スニーカー』はオフィスビルのトイレに出る幽霊(個室がいつもふさがっていてスニーカーを履いた足だけ見えている)の話で、やはり他愛ない。『献辞』はお得意の作家話で、序文でゲスト解説者が「スティーヴン・キングの作品の中でおそらくもっとも後味の悪いものであり、疑いもなくもっとも論議を呼ぶものになるだろう」なんて書いていたのでどんな話かと思ったら、単に汚らしいだけだった。こんなもので論議する奴がいるのか。

 ダン・シモンズも似たような感じで、やっぱりクリーチャーとかが出てくるこけおどしのような話だが、モダンホラーという代物がこんなのばっかりだったらまったく興味を持てないなと思いながら斜め読みしていると、『ヴァンニ・フッチは今日も元気で地獄にいる』はまあまあだった。悪魔がクリスチャンの番組に出てきて演説をぶち、最後にはみんなを動物とか虫に変えてしまう。ブラックなコメディだ。

 ジョージ・R・R・マーティンの『皮剥ぎ人』は一番長くて、この中では一番読める小説かも知れない。狼男の話だが、主人公のウィリーのキャラクターがいい。なかなかスリリングで、ダークなハードボイルド小説のような趣き。読んでいるとうどうしても平井和正のウルフガイ・シリーズを思い出してしまうが、それにしてもやはり凶悪なバケモノとか血なまぐさい描写で怖がらせようという薄っぺらさを感じる。

 怪奇小説の傑作短篇は多いので、決してホラーに短篇が向かないわけではないはずだ。しかし『日本怪奇小説傑作集』などと比べると本書はあまりに物足りない。まるで子供騙しだ。グロいクリーチャーとかスプラッタばかりに頼ってたんじゃ、先が思いやられるぞモダン・ホラー。


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